必要なのは、森にすむ動物にもやさしい視点 (22)

NHK広島総局に電話をしたのは、中国山地のあちこちで始まってるという挑戦は、大いに結構だが、木を伐採したあとをどうしているのかという問題である。つまり、スギやヒノキの針葉樹林を伐採した後に、少しでもブナやナラといった広葉樹林を植えていくことがないと、日本の森は蘇らないのではないか、との視点が私には気になっている。その点について、地元はどのような認識をもっているかと訊いてみた。井上恭介チーフ・プロデューサーは、あまりその認識がなかったことを認めたうえで、真庭町の町長はその点についての主張をしていたことを教えてくれた。

この『里山資本主義』では、これからの日本の進む道は二つあるという。一つは、「都会の活気と喧騒の中で、都会らしい二十一世紀型のしなやかな文明を開拓し、ビジネスにもつなげて、世界と戦おうという道」。もう一つは、「鳥がさえずる地方の穏やかな環境で、お年寄りや子どもにやさしいもう一つの文明の形をつくりあげて、都会を下支えする後背地を保っていく道」である。しかし、私は、この二つ目の道を作る際に、あえていえば、森にすむ動物にも優しい視点を盛り込む必要があるということだ。

森にすむ動物たち、すなわちクマやシカ、イノシシなどが荒廃する森から里山や人里に降りて来る現象が近年とみに目立つ。それは、膨大な針葉樹林のために動物たちの生息する環境が厳しいものになってきていることと無縁ではない。適度な広葉樹林の必要性が指摘されて久しい。中国山地はもはやクマが絶滅的状況にあると言われているが、それは広葉樹林の欠如と大いに関係するのだ。

今、中国山地で展開されている試みにそうした視点がなければ、結局は、元の木阿弥になってしまう。つまりスギやヒノキの針葉樹林の大量植林とその伐採の繰り返しでは、森の保水力は保てず、従来通りの川の氾濫をもたらしてしまうことになる。せっかく、伐採をするなら、そのあとに、広葉樹林を計画的に植えるという観点を入れる必要があろう。そこまでフォローしてこその「里山資本主義」だと考える。

この本はエネルギー供給という観点では鋭いものがあるが、もっと大きなこの国の安全や安心といった面では足らないところがあると言わざるをえない。NHK広島総局の井上氏には、藻谷さんにも、また現場の皆さんにも私の主張を伝えておいて欲しいと言っておいたが、さてどのように考えられるか。

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