天の声が聴こえるー佐竹隆幸『「地」的経営のすすめ』を読む

大阪ミナミの老舗料亭に生まれ、今は大学の教授。というと、なに不自由ない生活をガキの頃から過ごし、粋な遊びを身につけた、いわゆる大阪のボンボンを連想する。ところがどっこい、そうは人生甘くない。15の歳に家業が倒産。山のような借金がかぶさって来た。そこへ大病を患い悪戦苦闘は果てしなく続く。とはいうものの生来のガッツが幸いして、マイナスをプラスに、苦境をバネに、次々と難題をはねのける。そして「博覧会おたく」から「世界遺産を巡る旅」と興味の向かうところ果てしなく、見果てぬ夢はなんと「NHK紅白歌合戦の司会役」ー実はこれ現在関西学院大の佐竹隆幸教授の『「地」的経営のすすめ』の「あとがき」から再構成したものである■奥さんとの出会いも書き込まれ、本体よりもこっちの方がめっぽう面白いかも。というと、ご本人や周辺から怒られそうだが、正直ものは嘘をつけないのでお許しを。佐竹さんとの初めての出会いは15年ほど昔に遡る。地元のサンテレビに顔を出され始めた頃のこと。各地で講演をバンバンこなされ、その話術の巧みさと歯切れの良い口調が大向こうを唸らせて、政治家たちの話題にいつもあがっていたと記憶する。当時の経済情勢を料理し、どう経営をしていけば儲かるか、との話は聴衆を魅了し尽くしていたものだ。で今、引退をした私の前に颯爽と登場された。その肩書きは「兵庫県参与」。井戸県政へのアドバイザーとして縦横無尽の活躍をされるなかでの再会となった■頂いた著作は、もう一冊。『「人」財経営のすすめ」。2冊を一気に読んだ。地元神戸の経営者を中心に、震災後の厳しい環境を乗り切った知恵と根性の物語が紡がれ、あぶり出される。兵庫を地盤とする政治家として恥ずかしいことに、私が知ってる企業とひとは、ジュンク堂の社長だけ。それだけに貪るようにページをくった。若き日に通った日東館や海文堂など懐かしい書店の姿は今はない。丸善と業務提携するに至ったこの書店は、今や全国区の書店としてそびえ立つ。背後というか、横合いからかのアマゾンの影が忍び寄るこの業界。明日はどうなるのか、興味は尽きないが、言えることはただ一つ。本屋の財産は「なによりも人です」との工藤社長の文末の言葉だろう。私はジュンク堂の社員にこそ、この本を読ませたいと思った■四日市の蔵元ファンを全国に拡大した「宮﨑本店」も興味深い。お酒どころの灘を擁する地域からは敢えて選んでいないところが憎い。清酒「宮の雪」ファンの一人・大前研一氏の著書のなかの言葉が目を惹く。「友人に出すときに、一言『物語』が語れるからだ」と。また、焼酎「キンミヤ」 も北村薫の『飲めば都』に登場していることも初めて知った。全篇余すところなく中小企業経営の真髄に充ちている。兵庫県立大学から関西学院大へと仕事の場を移された佐竹教授。私の後輩で古希に近い同大学のMBAがいるが、佐竹先生の講義の人気が鰻のぼりだと教えてくれた。兵庫から関西一円に知れ渡る名声が、全国に響き渡る日もそう遠くないものと思われる。(2018-6-3)

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