政治家の資産公開より資質公開をー大山礼子『政治を再建するいくつかの方法』を読む

先日、故大沼保昭元東大教授を偲ぶ会があった。ご生前に奥様や娘さんらご家族も含め親しくしていただいたことや、『忙中本あり』で、ご著作を紹介するたびに喜んでいただいたりしたこともあって、一泊二日で上京した。予想通り、会場の如水会館は一杯だった。6人の代表の方々の弔辞はいずれも本当に心打つ聞かせる内容だった。死の病の床にあって遺著『国際法』の執筆に全魂を注ぐ一方で、ご自分の葬儀における全てをプロデュースされ、弔辞者を指名し、それぞれの中身にまで注文をつけられたというから驚くほかない▼献花の後、隣のホールで参加者の懇親会があった。読売新聞の特別編集委員の橋本五郎氏と故人を偲ぶ会話を交わした際に、談偶々、大山礼子『政治を再建する、いくつかの方法』に及んだ。「政治制度から考える」との副題がついているものだ。その角度に大いなる興味を持ち、読み終えたばかりだったので、「あれ、いいね」って水を向けた。彼は同調せず。寧ろ否定的な雰囲気だった。その理由を問ういとまもなく会話は中断。この人、『二回半読む』との著作を持つ、名うての書評家だけに色々不満があるのだろうと理解した。だが、そうなると、「一回だけ読む」の私としてはムラムラと天邪鬼心が鎌首をもたげた▼大山さんは今は駒沢大教授だが、以前は国会図書館に勤務。かつて勉強会にお招きし、お話を伺ったことがある。国会の仕組み、政治家のありよう、選挙制度の問題点に、一家言も二家言も持っておられる様子がありありだった。案の定というべきか、今回の本は壊れた政治の再建に向けて、真正面から斬り込んでいる。お粗末な議員立法の現状。法案修正がほぼ皆無の実態。予算を論じない予算委員会の惨状。使われていない国政調査権の不思議。いずれも本質を突いた議論の展開で、読み応え十分だ。更に、議員の無能さを暴いた章も面白い。危険水域に達した政治不信の背景にある政治家不信について、実例を挙げている。とりわけ政務活動費や職務手当の使われ方など、傾聴に値するものばかりである。議員経験者として、我が身の不明を棚上げにして、この手の議論に参画することは面映ゆい限りだが、この際お許しを願いたい▼私の政治再建に向けての持論は、国会議員の仕事ぶりを詳らかにすることに尽きる。衆参両院の全ての議員の国会での質疑の中味、日常活動の現実などを赤裸々にする事で、一気に国会の雰囲気は変わると確信する。それを恐れている議員が多いのは間違いない。政治家の資産公開を公表するのもいいが、政治家の資質公開の方がよほど意味がある。どこに基準を置くのかなど、もちろん問題なしとはしないが、世の英知を結集することで幾らでも可能だ。こういった議論のきっかけをもたらす本として本書は価値がある。ただ、惜しむらくは課題への挑み方がソフトに過ぎる。この辺りが五郎さんも恐らく気になってるのかも。国会審議は無意味?無能な議員が多過ぎる?などと、各章立ての語尾に全て 「 ?」 がついているのがその証拠だ。? はつけず断定をして欲しい。(2019-2-26)

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