リアルに暴く大統領選の内幕ー小川聡、東秀敏『トランプ ロシアゲートの虚実』を読む

たまたま訪れた姫路市図書館で、お勧めコーナーに置いてあった数多の本の背表紙に、友人の名を発見した。小川聡読売新聞前アメリカ総局長である。随分と会っていない。その著作『トランプ ロシアゲートの虚実』を、久しぶりに貰った手紙を読むように貪り捲った。もう15年余りも前のことだが、公明党担当記者だった彼と付き合った。外交、安全保障分野に強い関心持つ学究肌の青年記者との懐かしい日々が蘇る。ドナルド・トランプ米大統領の〝弾劾に至る病〟とでも云うような実態が克明に記されたこの新書は、「分断」に喘ぐ現代アメリカを理解する上で格好の手引き書である▼米大統領といえば、我々の世代では若き日にジョン・F・ケネディに憧れの後の悲しみを抱いたり、リチャード・ニクソンに驚嘆の後の失望を抱いたものである。長じては、ビル・クリントンの下半身のふしだらさに呆れたり、バラク・オバマの毀誉褒貶の激しさに舌打ちもしてきた。それでも建国二百五十年の気鋭の国の最高権力者にはそれなりの風格と権威が備わっているものだと信じてきた。ところが、ドナルド・トランプときた日には、不動産業で巨万の富得た、自分本位の金の亡者と云う他ないようなとんでもない人物なのである。加えて、大統領就任と同時に大きく浮上して日本でも連日伝えられてきたロシアゲートの不可解さ。一体何がどうなってるのかとの懸念を持ってきた人は多かろう。この本では複雑怪奇なその現実を小川氏が、米国安全保障企画研究員で米露関係に詳しい東秀敏氏とともに徹底的にほぐし、わかりやすく解説してくれている▼この本を読んで改めて分かったのは、トランプ氏は、実業家の頃からロシアに関心を持ってきており、「ロシアマネーとの特別な関係」は今に始まったことではないということだ。ロシアからすれば、かねて篭絡しやすい対象としての存在だった。大統領選出馬と同時にプーチン以下のロシアの関係者がほくそ笑みながら、勝たせようとしたことは想像に難くない。第1章のFBIとの対立から第5章の「米露冷戦2・0」に至るまで、登場人物の名前の煩雑さに苦労はするものの、固唾を飲む思いで一気に読ませる。ここでは、民主党ヒラリー・クリントン陣営の大統領選時に話題となったメール問題についても詳しく迫る。要するに〝どっちもどっち的〟側面が浮き彫りにされている。そんな「米国内戦」とでも云う他ない状況の中で、ロシアのサイバー情報戦の実態が描かれる。それは「デジタル時代の積極工作」であるとの指摘は実に興味深い▼新たな時代の戦争とも云える米露のせめぎ合いには、ため息をつくばかりだ。大騒ぎの末に結局は「弾劾が成立してトランプが辞任する可能性はかなり低い」との見立てには、冷静さの必要性を呼び覚まされよう。また、最終章の「『トランプ時代』の米国の読み方」でも、トランプの再選は容易ではないが、さりとて民主党がトランプに勝てる候補を出せるかどうかも容易ではないとの結論も、なるほどと思わせる説得力がある。この「事実は小説より奇なり」をあたかも地でいく面白さというと不謹慎かもしれないが、読み終えて確かな手応えを感ずる。アメリカ政治のこれからを占う上で貴重な分析を提供してくれたこの二人のコンビの第2弾に期待したい。(2019-5-27)

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