【135】70歳になっても変わらず本を漁り続ける

この読書録も70歳になったばかりの今回あたりで少し趣を変えたい。一冊づつの読後録ではなく、数冊のまとめ書きにしたい。一冊づつだとかなり突っ込んだ論評を余儀なくされるのでいささか疲れる。かつて20世紀最後の年にこの営みを開始したときは、三冊ほどを取り上げて三大噺風に取り上げたものだが、その方向に戻ってみたい。これだと少々楽が出来そう(笑)だ。中身の解説というよりも本のなかの片言隻語や著者との付き合い方に力点がおかれそうだが、しばらくこの手法をとってみたい▼先日、私の住む町・姫路市の石見利勝市長から一冊の本が送られてきた。随筆集『夢ある姫路』だ。この市長はもとは立命館大学の政策科学部長という肩書を持った教授だった。それだけに単なる政治家の随筆ではなく、深い学識に裏付けられた含蓄ある言葉が散りばめられた素晴らしい本である。特に、色んな方々との出会いに触れた第一章「日々想」が面白く読めた。私も生前にお付き合いのあった河合隼雄先生の看護師と患者の話には笑ってしまった。また。同氏の「世に二ついいこと、さてないものよ」との口癖を引かれて、二律背反(トレードオフ)の難しさを説かれている。市長はこの12年で学者から見事な政治家へと変身された。恐らくは河合先生の言葉を最も深いところで理解されたからに違いない▼と、ここまで書いたところで私の誕生日の贈り物が届けられた。リモージュボックスだ。これはフランスの小型の磁器に真鍮製の金具がついたボックスで、かの国の文化のエッセンスとエスプリが一杯詰まったものとして良く知られているそうな(私は知らなかった=苦笑)。送り主は、相島としみさん。鈴木淑美のペンネームで活躍する凄腕の翻訳家である。この人の仕事は数多いが、今は彼女が訳した『交渉に使えるCIA流 真実を引き出すテクニック』なる本を読んでいる。これはその道のなかなかの「専門書」(笑)だが、訳者あとがきが興味深い。話し相手から本当のことを引き出すには「『相手への理解、共感』であり、その深さは事前準備によって左右される」と述べている。元日経の記者だった頃のインタビュアーとしての経験に基づいての指摘だが、元ぶんや稼業だった私もまったく同感だ▼石見市長は前掲書で『人間性の心理学』の著者・マズローの「欲求5段階」説に触れている。私も親友・志村勝之との対談電子本『この世は全て心理戦』で取り上げていらい、この人の理論に強い関心を持っているが、相島さんの指摘するところとの共通点は少なくない。ともあれ70歳に突入した今もなお、新しいこと、面白いことを求めて今日も本を漁り続けている私だ。(2015・11・26)

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