ここがわからん集団的自衛権問題

さる二日、集団的自衛権行使容認の閣議決定を受けて、姫路商工会議所のホールで、地域の皆さんに説明する機会があった。その際には、これまでに既に公開したような私の考え方を駆使してお話した。終わって質問を受けた際のやり取りを以下に、加筆補充したうえで、掲載した。

A)米艦船と並んで日本の海上自衛隊艦船がいるところに第三国が攻撃を仕掛けてきたとする。その際には、日本が直接攻撃されていなくても、今回の閣議決定で限定的にせよ行使が容認されたということで、日本はその第三国に反撃するということになるのか?

赤松)これまでは、そばにいる同盟国の米艦船が攻撃されても、日本への直接攻撃でなければ何もできなかった。すれば、憲法が禁じる集団的自衛権の行使と見なされたからだ。それがこれからは反撃出来ることになる。ただし、これまでも、これは個別的自衛権の範疇ではないか、との解釈もあった。それを今回整理して、多国防衛のためではなく、自国防衛と全く同じだとした。つまり、憲法9条の枠内で出来る、日本自衛のためのこと、との判断である。解釈を変えて改憲したのではなく、憲法の枠内での解釈を適正に下した。

A)それでは、賛成できない。文字通り戦争に突入する。

赤松) それは第三国が攻撃をしかけた時点で戦争に入っていることであり、そのままの状態では、相手のなすがままになってしまう。尤も、今回の決定で、抑止力が働き、そのような無謀な攻撃を思いとどまらせることが可能になるとの判断があるので、戦争は抑止される。

B)憲法9条の規定は、一項で武力の保持を否定し、二項で国権の発動としての交戦権を否定している。これは明白な解釈であり、そもそも自衛隊の存在は憲法違反ではないのか。

赤松) 憲法学者の間でも、そういう解釈に立つ人もいれば、自衛のための武力行使は憲法9条でも認められているとの立場に依拠するひとも多い。歴代政府は自衛のための武力行使は認められるとの判断に立ってきたし、公明党もかつて違憲の疑いがあるとした自衛隊の存在を昭和56年の段階で、領土、領海、領空のいわゆる領域保全に限定した能力をもつことは合憲だとの認識を確立するに至った。どこかの政党のように、政権についたら、一朝にしてこれまでの主張を転換して合憲と認めたり、さらにある政党のように、自分たちが政権についたら、自前の軍隊を持つが、今の自衛隊は違憲の存在などと言ったご都合主義には立たない。

B)仮に日本それ自体を守る自衛隊は合憲の存在だとしても、PKOで世界各地に自衛隊員を派遣したり、イラクやアフガンに自衛隊を送り出したのは、拡大解釈ではないのか。今また、それを繰り返そうというのは許されない。憲法を改正していくのが筋で、解釈で改憲するのはおかしい。

赤松)PKOは紛争が終わった後に、再発防止のために行くもので、基本的に紛争処理でもなく、仮に紛争に巻き込まれたら、その場で中断し、撤退するという厳格な歯止めを日本は自らに課してきている。イラクやアフガンも後方地域での人道復興支援であって、紛争、戦闘地域ではないところに送ってきた。武力行使を目的にした戦闘行為に参加するものではない。今回も、いわゆる駆けつけ警護を可能にしたのは、国家やそれに準ずるものではなく、もっと小単位の集団により生命の危険にさらされている他国のPKO要員を助けるための武器の使用であって、憲法9条が禁じるような武力行使には当たらない。また、機雷除去の行為も戦闘がまさに行われているところには行かないし、すべて憲法の枠内ととらえられる行為のみが許されたとの判断と認識している。適正解釈の余地が未だある限りは、憲法改正をせずともいい。しかし、これ以上は憲法改正をするしかない、との理解である。具体的には今後の法制定にかかっているわけで、閣議決定は最初の一歩に過ぎないので、今後の審議が重要になってくるのは言うまでもない。

C)今まで聴いていると、ギリギリの憲法の枠内だとの解釈のようだが、自民党との連立を組んでいるがゆえの妥協に思われる。平和の党・公明党としてもっと、「連立離脱カード」を縦横無尽に駆使して、流れをぐっと変える方に舵取りできなかったのか?これでは、今までの支持者が離れて行ってしまう。

赤松)仮に政権離脱をしたら、今の政治の安定はたちまち崩れてしまう。しかも、政治は安全保障だけではない、経済も、社会保障も公明党が政権の内部にあって漸次、緩やかなる改革を内側から進めていくことが大切ではないだろうか。北東アジアの安全保障環境は一段と厳しさを増しているだけに、油断は禁物である。公明党の「行動する国際平和主義」は、旧態依然の左翼政党の「座して叫ぶだけの一国平和主義」ではないし、感情に流されるままの右翼勢力の「憲法の枠越えを狙う軍事拡大主義」でもない。支持者は、じっと見ている。今回の自公協議に果たした公明党の獅子奮迅のブレーキ役、歯止め役ぶりは必ず理解されるものと信じている。

 

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