新時代の淡路島ぐるり一周クルーズ

淡路島を船でぐるり一周するクルーズに参加した。株式会社ジェノバ観光事業部が主催したもので、瀬戸内海の本格的な観光振興への第一弾としての試みだ。瀬戸内海は、かねて世界の中でも有数の美しい内海でありながら、その価値が今一歩知られてこなかった。ということには理由が幾つかある。その最大のものは、この海域が沿岸に立ち並ぶ重工業地帯における巨大な廃水場になっていたことである。さらに二つ目には、南北にこの海を跨ぐ三つの巨大な陸橋の登場である。島を結ぶ上での効力は大きなものがあったが、同時に島々は単なる通過点になり、海は陸から眺めるだけのものと化した▼これらはいずれも高度経済成長がもたらした副産物であった。得たものは大きいが、同時に失ったものも同様に大きい。このように瀬戸内海は環境汚染の対象であり、観光振興の対象ではなかった時代が続いていた。ようやく、海の汚染にピリオドが打たれ、橋の効果が見直される今頃になってようやく、瀬戸内海の本格的な夜明けが始まったと見るべきだろう。これは、バブル崩壊による、経済成長一辺倒の時代から文化立国への転換の機会に重なっており、いわば歴史の必然と見るべきものなのだ▼「これまでも瀬戸内海の観光は充分に展開されてきた。なにを今更」との声もあろう。しかし、私に言わせれば、それは瀬戸内海中央部に限っての話で、東瀬戸内海や西瀬戸内海にあっては観光は程遠い状況であった。つまり、広島、愛媛、香川、岡山の4県では、工業地帯における産業優先の中で、それなりの事業展開はなされてきたのだ。が、兵庫を始めとする東西の瀬戸内海域は今一歩だった。その流れを変えるためのカギを握るのが淡路島なのである▼瀬戸内海を東から見ると、その入り口に横たわる巨大な島である淡路島を無視してはならない。これを無視してかかると瀬戸内海の意味合いが変質してしまう。ということが今回のジェノバによるクルーズ構想の発端だった。明石港から津名港を経て洲本港へと、穏やかな海面を滑りながら、海から島を眺める船旅は素晴らしい風景の連続であった。そして福良港での淡路人形座での人形浄瑠璃の演目は大いに惹きつけられた。とりわけ未来を担う若い中高生による演技は注目された。後継者がいてこその伝統芸能である。この島に眠る限りない宝を発掘する思いで、このクルーズを一層支援していきたい。それこそが、新時代の瀬戸内海観光振興の突破口になると確信するからだ(2014・7・27)

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