ナチュラリスト荻巣樹徳を君は知っているか

あなたは荻巣樹徳(おぎすみきのり)っていう人物を知っているだろうか?まさに知る人ぞ知る、幻の植物を求めて世界を駆けるナチュラリストである。彼の手によって数多くの新種の植物が発見されており、それらにはオギスの名が冠せられている。彼のことをわかりやすくプラントハンターと呼ぶ向きもあるが、正真正銘、地上にあって世に知られていない植物を探し出すプロ中のプロだ。今は中国大陸にしばしば足を運び、あれこれの新たな植物を発見している。私はこの分野に詳しいわけではなく、さしたる関心があったわけでもない。かれこれ10年余り前に、わが選挙区のなかの宍粟市山崎町に彼の主宰する東方植物文化研究所があったことから(今はない)知り合うことになり、今では大変懇意にしていただいている▼その彼が住む豊中市の東泉が丘に、わが友でカリスマ臨床心理士の志村勝之もいることから、二人を引き合わせることにした。私には人とひととを繋ぐことに妙に興味があり、著名なひと同士やら無名の人々を結び付けてきた。この二人、共に野に咲く知られざる名花といえ、”ご対面”させることには密やかな喜びがあった。志村勝之とは電子書籍で、とことん対談『この世は全て心理戦』をこの夏に出版したが、心理学の分野での造詣は圧倒的に深く、単なるカウンセラーの領域に留まらない豊富な知識と経験を持つ。彼の場合、きわめて有能でありながら、そのことで有名になるとか、世に出ることを徹底して嫌う。まっとうな意味での自己実現を果たせばそれで充分という、私からすればもったいない男だ▼談たまたま、荻巣さんが英国王立園芸協会のヴェイチー記念ゴールドメダルを受賞(平成8年)したことに触れた。かの国では園芸に関する関心と評価がきわめて高い。しかし、日本ではNHKテレビが放映する番組にも「趣味の園芸」といった風に趣味という二文字が形容されるごとく位置づけが低いことを嘆いていた。建築の分野では例えば安藤忠雄氏が日本を代表する建築家の地位をほしいままにしているが、園芸の分野である意味それ以上の実績を持つ荻巣さんは殆ど知られることがない。私もNHKに荻巣樹徳さんの活動を「プロフェショナル」番組に取り上げよと、推薦したが受け入れられなかった。こうしたことから、彼我の差を実感し悔しい思いを共有している▼おそらく志村はこうした荻巣さんの発言を聴いていて、別にひとが評価をせずともいいではないですか、ご自分で満足出来る結果を生み出すことができていれば、と感じたに違いない。彼は私との対話で、いつも人の評価を気にしないところから、平穏さと幸福感が発生することを強調するので、そのあたりの心理展開はよくわかる。もちろん、荻巣さんとて単なる功名心などとは無縁のお人だが、それにしてもあまりにも「園芸」の地位が低すぎることに我慢ならない思いがあるのだろう▼初めてお邪魔した彼のマンションの部屋のなかには、所狭しとその分野の本やら資料が置いてあったが、書庫に平然と並べられていた数千冊の専門書はすべて外国のものばかりであった。しかもこの世にせいぜい数冊しかないという代物が多く、その値打ちたるや一冊が一台の車や一軒の家にも値するものと聴いて、ひたすら驚くしかなかった。(2014・10・31)

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