小っちゃくておっきい「てにをは」の違い

新年明けましておめでとうございます。皆様お元気で新たな決意の年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます。本年もよろしくお願い申し上げます。さて、新年早々細かなことでいかがかと思わないでもありませんが、私は元旦の日経新聞のトップ記事「働きかたNext」の見出しを見ていてあれこれ考えました。この記事の狙いは、職場に女性や外国人、シニア世代が増えてきたり、長時間労働や年功を前提にした働き方が限界にきている。だから慣習にとらわれない、時代にあった働き方を創ろう、その主役はあなたです、というものでした。で、見出しは、「変えるのは あなた」でした。戦後七十年を迎える今日、一人ひとりが変化を恐れず、職場を見つめ直そうというのです▼「変化」を巡っては、色々と思い出があります。上はその究極としての社会革命から身近なところでは、自分自身の変革に至るまで、まさに「変化」することは人間にとって一大事です。勿論、変わらざることが大切で、不動の姿勢が最高だとの考え方もありましょう。しかし、おおむね今の環境を変えたいということは期待値が高いものです。その場合、客体としての環境を変えるのか、それとも主体としての自らを変えるのかは、なかなか難しい選択です。今の私が到達した結論は、環境を変えるには、まず自分自身を変える、つまりは「変えるのは あなた」ではなく、「変わるのは あなた」というのが最も適切な気がしています▼「え」と「わ」、一字の違いですが、意味するところは大きく違ってきます。つい先ごろまで町中に貼ってあった公明党のポスターの字句も気になりました。「これまでも これからも 大衆とともに50年」というキャッチコピーです。50年変わらず大衆とともに歩んできた公明党らしいフレーズといえましょう。ですが、私にはこういうキャッチは、内向きで真面目過ぎないかと思えました。むしろ「これまでは これからは 大衆と共に進む公明党」といった方が、大胆で外向きには面白いのではないか、と。これまではともかくとしてこれからは応援してね、というニュアンスが含まれてきます。また、大衆と共に進む公明党の看板に偽りあり、と思ってる人たちには、公明党は自らをよく見てる、って思うでしょう。見る人がギョッとしてニヤッとできる方がポスター効果は大きいのです。このあたり、初夢っぽくて現実感に乏しいですが……▼このように「も」と「は」、で大きく違います。このように「てにおは」って小さいようでいて、文章の持つ味を全くと言っていいくらいに変えてしまいます。かつて、政治家になったばかりの頃、皆で外向けに発表する文章を作成していて、ある弁護士出身の仲間が「『てにおは』はどうでもいいよ、文章全体の論理構成が大事だから」と言ったことがありました。それはそうだが、論理構成にばかり気を取られていると微妙にニュアンスが違ってくるのだがなあ、と私は思ったものです。彼はその後落選し、弁護士に戻っていきました。私も今では引退し、言葉を大事に扱う新聞記者もどきの市井の物書きに戻りました。時の推移の中で変わらざるものを、ことしも追いかけ続けていきたいと思います。(2015・1・5)

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