親から子へ世襲される弁護士のたたかい

暦の上でも大寒とあるだけに、寒い日が続いています。このころは鶏始乳ーにわとりはじめてとやにつく、といって七十二侯でいう最後の時候。新暦では一月の終わりになりましたが、旧暦ではそろそろ元旦。私は毎年この時期は改めて新年を迎える気分になって、思いを新たにするようにしています。そんな折、久方ぶりに地元姫路の名士たちと集い会う機会が二つありました。一つは、市長主催の新年会。もう一つはある弁護士事務所の開設10周年と所長の新旧交代式です。代議士を引退して二年。あまりこうした集いに出ることはなかったのですが、今回は気分転換もあって出席してみました▼親から息子への代替わりの場とあって、後者には心和む雰囲気がそこはかとなく満ちた楽しいものでした。実は父親の弁護士とは長い付き合いで、ほぼ毎朝姫路城周辺を走る仲間でもあります。尤も、私はせいぜい10キロ走れば十分のジョガー。彼の方は近く行われる姫路城マラソンにも出ようという本格的なランナーです。しかもスキューバダイビングも大好きな水陸両用のスポーツマンという強者です。一方、息子氏は、彼が司法試験に合格して修習生仲間たちと一緒に国会見学に来た時に会って激励したことがあります。直接会うのは、それ以来なので実に10年ぶり。見事に成長した姿を見て新鮮な驚きがありました▼姫路を中心にする播州地域には120人の弁護士がいるとのことですが、この事務所は弁護士が4人、スタッフが9人という総計13人にも及ぶ大所帯です。30歳台半ばの新所長の手腕が期待されるところでしょう。弁護士の数が多すぎるという声があります。21世紀初頭に行われた司法制度改革で増やしてみたものの、現実は想定外の展開だといいます。要するに弁護士になってはみたものの食えないという事態が起きているというのです。議会の場で法曹人口を増やすことに先鞭をつける側にいた私としては、「過渡期なのだ、一人ひとりが競争に打ち勝つ強さをもつべし」と言うしかありません▼法律に通暁して、その知識をもとに縦横に活躍するひとたちも少なくないようです。ある新聞に「豊かな地方とは」とのテーマで、『降りてゆく生き方』という映画のプロデュースをして成功を収めている弁護士のインタビュー記事がありました。上昇志向ばかりが強い中にあって発想の逆転を衝く面白い試みだと感心したものです。とりわけ団塊世代を取り扱った堺屋太一氏の小説に反発しているところが私には好ましく思えました。もう彼の考えは古いと思うからです▼政治家の中には弁護士出身者がかなりいます。わが公明党がひときわ際立っていることは周知のとおりです。現役時代の私は、弁護士は今前に横たわる法律を解釈する存在だが、代議士は今前にある現実を変えるために法律を作る存在だといって、自らを鼓舞したものです。両方兼ね備えているに越したことはないのですが、非力なわが身としては、敢えて政治家の本分は崇高なものであって、弁護士などには負けていられないという姿勢を示さざるを得なかったのです。世襲政治家の弊害が語られて久しいものがありますが、さて弁護士の世襲はどうなんだろうと思いを巡らしゆくうちにめでたい披露宴は、お開きとなっていました。(2015・1・31)

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