この道って、どの道なの?との思い強まる

衆議院の議場を去ること2年余り。在任中何回となく聴いた首相の施政方針演説ですが、今回は久方ぶりに腰を据えてというか、耳をそばだてて聴いてみようと思いました。というのも安倍首相が昨年末に手に入れた衆院での圧倒的多数の議席をもとに、永年の懸案に決着をつけるこれからの4年の戦いのスタートとなるに違いないと思ったからです。露骨にその狙いをあらわにはしないにせよ、そこはかとなくその方向性は感じられよう、その匂いを嗅ぎたいと思いました▼誰であれ首相の演説は、いつ聴いても「あれをやります、これをやります」という”やりますのオンパレード”。これには毎度失望してきましたが、今回もおんなじ。一方でやりたいものの一覧リストを公表したうえで、国民に呼びかけたいテーマや野党と論争したいテーマに絞って演説すればいいのに、と思うことしきりです。それが出来ないというなら、”やります”編を9割に抑えて、あとの1割を論争編にすればいいのです。それがならなかったのは残念ですが、中途半端なものにせよ彼が目指そうとする政治の片りんはうかがえました▼安倍首相の今回の演説での特徴は、7度に及ぶ呼びかけです。最初は、「国民と共にこの道を、前に向かって、再び歩みだす時です。皆さん、『戦後以来の大改革』に、力強く踏み出そうではありませんか」です。最後は、「さあ皆さん、今ここから、新たなスタートを切って、芽生えた『自信』を『確信』へと変えていこうではありませんか」で結びました。首相は「日本を取り戻す」ためには「この道しかない」とのフレーズを先の総選挙でも繰り返しました。選挙時には首相のいう「この道」とは、「3つの矢」を忠実に放ち、景気を着実に上向きにすることを始めとしての、自民党の目指す政策選択であろうと思いました。今回の演説では、改めて「戦後以来の大改革」として①経済再生②復興③社会保障改革④教育再生⑤地方創生⑥女性活躍⑦外交・安全保障の立て直しの七つを挙げました▼これらを挙げたのはいいのですが、現状をどう認識していて、どう変えたいのかは必ずしも明確ではありません。これでは、「これでは、この道って、どの道なの?」との思いが強まるばかりです。明治維新の元勲・岩倉具視の「国民みんなが心を一つにして」という言葉を皮切りに、岡倉天心の「変化こそ唯一の永遠」、吉田松陰の「知と行は二つにして一つ」、吉田茂の「日本国民よ、自信を持て」に至るまで4つの言葉を強調しました。今の日本の在りようを変えたいとの意思は伝わってくるものの、どのように変えたいのかは殆ど伝わってきませんでした。例えば、殆ど最後のところで、「全ては国民のため、党派の違いを超えて」との枕詞をつけたうえで、「選挙制度改革、定数削減を実現させようではありませんか」と「憲法改正に向けた国民的な議論を深めようではありませんか」と呼びかけたのは、前後二つの不均衡もあって、いささか違和感がありました。もっと掘り下げた具体的な捉え方を示したうえで、自分の考えを示して欲しかったと思うのです▼ともあれ、来週から与野党の党首級の代表による論戦が始まります。公明党こそ真の意味での自民党政治への対立軸を示しうる政党だとの自論をもとに、しっかりと聴いていきたいと思います。そして政権交代可能な民主政治の実現のためには、「早く生い立て民主党」というフレーズが一番適切だとの思いをもって野党の皆さんの論戦をも見ていきたいと思います。(2015・2・14)

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