早すぎた引退をした女子マラソンランナーとの語らい

数ある私の「夢」の一つに、ホノルルマラソンに参加するということがあります。どうしてかって?あのイベントには時間制限がないと聞いているからです。ダイアモンドヘッドを横目に、突き抜けるような青い空のもとゆっくりと走ってみたい。いや、歩いてみたいという他愛もない望みです。その願いに呼応したのが私のホームドクター・飯村六十四。高校時代からの旧友である彼はアンチエイジングドクターとスポーツドクターの資格を持つ糖尿病専門の内科医です。あれこれと健康談義を展開するうちに、一緒にぜひホノルルへ走りに行こうということになったのです。行くなら70歳を記念して、2015年かな、と。彼は娘が同地で結婚式を昨年末あげた際にコースを下見してきました。帰ってきてからは、アップダウンがきついぞといささか怖気づいているようです▼そんな彼とともに、さる一日に神戸学院大学スポーツフェスタに行きました。同大学の女子駅伝競走部のコンディショニングコーチで監督代行の森田陽子さんから誘われたものです。あいにくの雨模様で、よほどパスしてしまおうかと迷ったのですが、浮世の義理には抗しがたく、明石から彼の運転する車で向かいました。さすがに雨中決行とはいかず、室内での座学になりました。森田さんの『姿勢バランス講座』から始まって、ストレッチ体操の基本やらスポーツシューズの選び方など、普段はあまり聴けないランニングに関するあれこれを約3時間かけて学びました。もともと元北京オリンピックの女子マラソンに出場した中村友梨香さんと一緒に走ろうというのが呼び物でしたが、雨のため、彼女のミニ講演と質疑になりました。彼女は2008年の名古屋国際女子マラソンに初めて出場して、並み居る先輩を押しのけて優勝したことで一躍有名になりました。ただ、オリンピック出場を勝ち取った(13位)もののその後は振るわず、昨年3月に現役を引退してしまったのです▼淡々としたしゃべりでマラソン人生を語った後、この日参加していた中学・高校生のマラソンランナーの卵たちの質問に答えていました。私も年甲斐もなく、➀長時間のランニングに耐えられる走りをするにはどういう練習をしたらいいか➁現役引退をした中村さんは今後の人生にいかなる夢と希望を持っているのかーとの問いかけをしてみました。彼女からはこれからどうするかはまだ決めていない、学校を出た後の学生の心境だとの返事が返ってきました。67歳で衆議院議員を引退した私などとはまったく違って、春秋に富みすぎる彼女のこれからが妙に気になります。控室での語らいで、「あまりこれまでの栄光にこだわらないで、まったく違う人生を歩む勇気を持った方がいいのでは」などと勝手なことを言ってしまいました。彼女は素直に「ええ、そうですね」と目を輝かせたかのように思えました▼オリンピックでのマラソン選手といえば、故円谷幸吉さんが忘れられません。東京オリンピックで銅メタルを獲得しながらメキシコオリンピックを前に自殺した彼には壮大なプレッシャーがかかっていたようです。中村さんにも大きな精神的負担があったはず。重荷を降ろした気軽さと目標が消えた儚さとがないまぜになっているのではないか、と私には思われる雰囲気がありました。もう一つの質問には、早めとゆっくりめの走りを交互にすることで持続力を高められると思います、と丁寧にアドバイスしてくれました▼さて、政治家を引退した70歳のおじいさんはこれからどうするか。死ぬまで医者を続けるしかない飯村ドクターと、帰りの車中で話し合いました。有り余るエネルギーを使うべく未来を見据えているところは中村さんと同じですが、42キロのフルマラソンにどう挑むかは、我々爺(じじい)には大変な課題です。若者たちに混じってのランニング講座が裏目に出たのか、今年のホノルルは断念ではなく先延ばしにするかっていうことになってしまいました。結局は”見果てぬ夢”が続きそうというのが結論。おそまつな一席です。(2015・3・4)

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