イラク戦争をめぐる私的検証➃-公明党内総括の顛末

一方、山崎正和氏も、イラク戦争について米国の姿勢を肯定的に捉え、擁護する論陣を張られた。衆議院の外務委員会か、イラクに関する特別委員会だったかに、参考人として出席され、その信ずるところを述べられた。私は質問に立ち、その考えられるところを直接問うた。その時の山崎氏の発言は、イラクはそうした「成敗」を受けても仕方がない存在であり、米国の決断を支持した日本の選択はやむを得ないというものだったと記憶する▼山崎氏は後になって、当時のイラク戦争についての自身の発言の非を認められ、今後の戒めとする旨の論考を公表された。この人には『歴史の真実と政治の正義』や『柔らかい個人主義の誕生』など、歴史への深い洞察に根差す著作が数多く、熱烈な信奉者も多い。かくいう私もその一人だった。文明評論の名手をもってしても、現実の国際政治の動向は時に判断を誤らせるもののようである。だが、素直に謝られた姿勢はすがすがしいものとして私の目には写ったものだ▼こうしたなかで、政党としてもその選択の当否が問われた。公明党の場合は、衆議院総選挙の敗北(2009年8月)を総括する形で、自らに問うた。2009年10月に党内に社会保障と安全保障の両分野の検証チームを立ち上げて、これらの分野における政策展開の是非をめぐる議論を行ったのである。前者は坂口力元労働相が、後者は私が責任者となった。負けた原因を探る作業を行うことは元気が出るものではない。まして国際政治の動向への判断の過ちをどう考えるかは、政党として極めて難しい課題である▼日本の選択は間違っていたとの結論を党として出すのは早過ぎないか。よほど慎重にすべきだ。後世の歴史家に判断をゆだねるべきではないのかーなどの党内意見は根強かった。結局は最終的に総括する文章を残すことは見送られることになった。しかし、せっかく党内にチームを作り、検証する議論をしたのだから、その軌跡は残したいという意向を私は貫いた。最終的には、私へのインタビューという形ではあったが、党理論誌『公明』に掲載することで陽の目をみたのである。そこでは、「誤れる情報に踊らされたと言わざるをえない」し、「確たる裏付けがないにもかかわらず、一方的な情報に与したことは反省しなければなりません」との反省の弁を述べたうえで、「公明党が結果として(イラク戦争を)容認したのは不適切であった」と明確に誤りを認めたのである。(2016・9・18)

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