「核廃絶」への遠すぎる道➃-今こそ「持たせず、作らせず、使わせず」の”新非核3原則”を

北朝鮮の核実験や弾道弾ミサイルの発射をめぐって日本周辺に危機感が高りかけたちょうどその頃の5月2日に、NPT(核不拡散条約)再検討会議に向けた準備会議がオーストリアのウイーンで開かれた。核不拡散体制の基盤をなすNPTは、5年ごとに運用を検討する会議が開かれており、次回は2020年に予定されている。この日の会合は、それに向けての第一回目の準備のためのものであった。今、核兵器を弄ぶ北朝鮮のような怪しげな国家の存在が、地球を蝕む癌のように危惧されている。そんな中で、世界の良心ともいうべき動きが遅々としたものではあるが展開されてきていることは注目されねばならない。”一歩前進、二歩後退”といった従来の歩みを一変させ、数段跳びに換えたと思わせたのはオバマ米大統領の2009年のプラハでの演説であった。「核兵器のない世界」を真面目に模索しようとするこの演説は、近年にない核兵器禁止への議論の進展をもたらしたかに見えた。翌2010年には、NPT再検討会議における最終文書において、核兵器の使用がもたらす壊滅的影響を認識すると共に、核兵器禁止に向かっての枠組みを創設するための努力の必要性が盛り込まれたのである。今更という感がするのだが、多国間の核軍縮交渉の長きにわたる停滞や、その一方での核兵器の近代化の進展という事態を鑑みるとき、無視しえない希望の兆しとも言えた■それから5年。次のNPT再検討会議が開かれた2015年には、核兵器の廃絶こそが人類の生存にとって欠かせないとする共同声明を支持する国が159か国にまで及ぶことになった。この間に、2012年にスイスなど16か国が音頭を取っての核兵器廃絶へのアピールや、2013年以降、ノルウエー・オスロ、メキシコ・ナヤリット、オーストリア・ウイーンの三回にわたる会議で核兵器の非人道的影響を科学的に検証する試みなども行われた。こうした動きがあったうえで、いま2年を経て次の2020年の再検討会議に臨む段階にある。「人道優先」の観点から今の事態をどう乗り越えて進むかについては、おおむね3つのアプローチがあるとされている。一つは、文字通り真正面から核兵器を廃絶せよと主張する立場である。これに賛同する国家は、非同盟諸国を中心とした159か国が挙げられる。二つ目は、核兵器国と同盟関係にある国家群で、人道性は勿論だが、安全保障面も考慮すべきだというもので、日本をはじめオーストラリア、ドイツ、オランダ、カナダなどの中堅国家群が位置する。そして三番目が、アメリカ、イギリス、フランス、中国やロシアといった核兵器の廃絶は安全保障が確保されなければ意味がないとする核兵器保有国家である。こうして改めて三つのアプローチの主張と分布をみると、まさに50年一日の如く変わらぬ人類の性(さが)とでもいうべきものを感じざるを得ない■そのなかで、日本は唯一の被爆国だけに常に注目を浴びるはずの立場である。しかし、アメリカの核の傘に入っているがゆえのジレンマから抜け出せない。戦後70年余の歴史を追う時に、時に核廃絶への希求が高まった時はあったが、結局は現実的安全保障論の前に潰えてきたことは否めない。「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という佐藤栄作首相の頃に掲げられた「非核3原則」にしても、三原則目は公然たる事実としての「核持ち込み」が話題となってきた。そんな中、私は公明党の安全保障分野の責任者として、この原則の生ぬるさに問題の根源があると主張した。つまり、日本が核を持たない、作らないというのは、自分を律する縛りを公表しているだけであって、他国に対する働きかけをする必要があるとしたのである。すなわち、「核兵器を持たせず、作らせず、使わせず」との新しい原則を作るべきだというものであった。「新非核3原則」の名のもとにその時の党大会での政策に採用された。しかし、世の中へのインパクトは弱く、僅かに朝日新聞一社だけが反応を示し、三段記事で扱ってくれたことを鮮明に覚えている。実は、後になって秋葉忠利氏が市長の時代に広島市がほぼ同じ趣旨のものをかかげたが、これは明らかに私の提案のパクリである。あれから10数年が経ち一歩も状況に変化がないことを憂えるとともに、自らの非力を恥じる■たとえ、いかに非現実的に見えようとも、あくなき挑戦をしていくことが大切であることを今にして強く感じる。現実政治は確かに核兵器の抑止力なるものを肯定せざるを得ない。核兵器大国が持つ理由をそのまま認めて、非核兵器国に持つなと、押し付けることにはご都合主義を否定できない。しかし、これを言いだすと堂々巡りになるのが関の山だ。一方で、現実論を戦わし、もう一方で理想に向けての不断の努力を続けることが大事であるとつくづく思う。日本こそ被ばく国として、核兵器保有国のアメリカ以下の国々に強く訴えていく必要がある。そのことと、アメリカと軍事同盟を結んでいることとは決して矛盾しない。心ならずもの核の傘入りであることを堂々と言っていくというのはどうか。まずは核兵器は廃絶するしかないという強い主張に日本が立たねば、こっかとして恥ずかしい。自民党と連立政権を組んでやがて20年を迎えようとする今だからこそ、公明党は「新非核3原則」に立ち返るべきだと訴えたい。(2017・5・27)

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