村山自社さ政権という悪夢の根源ー平成7年(1995年)【16】

村山首相を追い詰めた市川雄一質問の真骨頂

村山富市という人物が日本の首相の座に就いていたのは、平成6年の6月30日から、平成8年の1月11日まで。ほぼ一年半に及びます。平成7年の一年間はまるまる首相をしていたわけです。その年の1月17日に大震災に襲われたのですから、就任半年後に未曾有の大震災に見舞われ、それから一年間、〝迷走〟を続けたことになります。この迷走の本質は、55年体制の表裏をなしていた自社両党が、ちょうどひっくり返ったことにあります。つまり、それまで表にいた自民党が裏方に回り、裏にいた社会党が表に回る。ひょっとこの面を顔の後ろにまわしていたものをくるりと裏返して表に回したように、私たちの前に現れました。

権力の使い方という面では自民党が少し助け、いわゆる弱者救済的政策展開では社会党らしさがチョッピリ顔を出したとは云えます。しかし、社会党は所詮は万年野党。あっという間にお里が知れてしまいます。その最たるものは、安全保障政策における一夜漬け的転換です。かつて「非武装中立」というスタンスを臆面もなく掲げて恥なかった政党が、政権に就くや否やあっさりとその態度を変えてしまうなどということが許されていいのでしょうか。ここを完膚なきまでに追及して、叩き壊したのが市川書記長の1月27日の衆議院予算委員会の総括質疑でした。

従来の社会党が自衛隊を違憲とした根拠は、憲法の何条のどの条文によるものなのか、また村山首相が衆議院本会議の答弁で自衛隊を合憲としたのは、憲法何条のどの条文なのかーこれだけのことを明らかにすべく約一時間をかけて市川書記長は追及したのです。村山首相はこれに対して、いったい何と答えたのか。答えは驚くべきことに、ひたすら「憲法ぜんぶんです」のみ。耳から聞こえてくるぜんぶんとは、果たして、前文なのか、それとも全文なのか。これををはっきりさせようとしても、村山氏は一切いわない。社会党が発行してきた文書によれば、憲法9条を根拠にして自衛隊を違憲としてきたことは明らかです。それを明確に云わせようとしたのですが、曖昧模糊とした「憲法ぜんぶん」を繰り返すばかり。前代未聞の珍答弁でした。一国の首相たるものが、自衛隊の違憲、合憲の判断基準を示し得ず、逃げまくったのです。ここに、この自社さ政権の悲劇の根源がありました。

朝日新聞の連載記事に登場

市川書記長から、常日頃「国会、とくに予算委員会の質問というのは、演説の場ではない。ショートクエッション、ショートアンサーで、相手の矛盾を浮き彫りにするんだ」と、聞いていました。まさにその通りのお手本のような質問の仕方に、こちらは感嘆するばかりでした。ただ、村山首相は蛙の面に何とやらだったのでしょうか。全く意にも介さず、今に至るまで弁明すら聞いたことがないのは、本当に不思議なことです。

目の覚めるような質問の一週間後、朝日新聞のコラム「主役 わき役」欄に上下二回にわたって私が登場することになります。一回目の見出しは「市川氏の強打浴びる『壁』」。「政務会長(市川氏のこと)は、構想の一端を私に話し、反応を見て考えを整理する。テニスの壁打ちなら、私は壁の役割。政務会長はボールをどこに飛ばすかわからない壁の方を好む」ーこう私は語っています。文末には「『まだ人を補佐する力はない。短期間で育てたいので、きつく当たることもある』と市川氏。強打を浴びて『壁』は時々へこまされる」と担当してくれた西前輝夫記者は書いています。二回目の見出しは「一本立ちしたい『元秘書』」と。それから25星霜。強打の主はもういません。今では、へこんだままの壁が残ってるだけです。

この頃、自民党の二階俊博衆議院議員(現同党幹事長)から電話があり、「山本集という画家が日刊スポーツ紙上で『ザ 政治家 日本を担ぐ50人』とのタイトルのもと、連載を書く。君のことも紹介しておいたから、宜しく」とのこと。この画家は知る人ぞ知る元ヤクザにして、智弁学園の初代野球部監督。「赤富士」を始め強烈な印象を与える絵を描くーそんなことは後で知りました。ともかく取材してくれるというなら拒まずとばかりに、当時は、片っ端からメディアに登場しようとしていた私です。二つ返事で引き受けました。「異色画家・山本集 永田町を往く」との上下二回にわたる連載(見出しは「復興への責任感じてます」「国会の古い仕組み変革を」)でした。文末に、山本集の「独白」として、「一年生議員とは思えぬ自信と雄々しさあふれる人や。持ち前の温かみで、兵庫選出の議員として、復興に向けて国会で頑張ってくれはると信じている。なかなか味のある政治家や」とありました。まるっきりお世辞だとは分かっていても、嬉しい思いがしました。(つづく)

 

 

 

 

 

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