【84】鳩山から菅へ、団塊世代の危うい首相続くー平成22年(2010年)❸

●連立10年の安保政策を顧みる作業

前年の衆議院選挙の大敗北いらい、一体どこに原因があったのかをしっかりと検証しようとの動きが党内に満ち溢れてきました。自民党との連立を決断した2000年からちょうど10年の節目を迎えることもあり、党内に二つのプロジェクトチームが出来て、侃侃諤諤の議論を始めることになりました。一つは、社会保障政策を担当するグループで座長は坂口力さん。もう一つは安全保障政策を振り返るグループで私が中心者になりました。負けた原因を探る作業は決して楽なものではなく、秋から年末にかけ随分と苦労を重ねることになります。

私が担当した作業では①テロとの闘い②イラク戦争③沖縄問題④核廃絶問題ーこの4つについてあらゆる角度から、公明党のとってきた態度に問題はなかったかどうかを検証しました。連立政権に入る前の公明党は、米国に追随する自民党政権の外交・安保政策を厳しく批判する野党の立場を貫いたものでした。それが与党になって政権の一翼を担うようになり、矛先が鈍ってしまい、「平和の党」の看板に偽りがなかったのかが問われてきたのです。大議論の末に、非は否として素直に認めようということでチーム内のの意見は一致しました。

ただし、最大の問題は、どこまで自己開示をするかということでした。あらゆる組織にとって自らのマイナスになる情報はなるべくなら伏せておきたいとの心理が働きます。政党も例外ではありません。私が座長を務めた分野では、最大の失敗はイラク戦争において、イラクに大量破壊兵器があると見たのに、結局はなかったことでした。このことを巡ってどう表現するかが揉めました。

私は自分の犯したミスもあり、包み隠さず公表すべきだとの立場に固執しましたが、何も洗いざらいだすことはない、文書としてまとめるのは問題ありとの声が根強く、一時は全て沙汰止みになりかけました。しかし、山口代表、井上幹事長の英断で、理論誌『公明』6月号でのインタビューに私が答えるという形に落ち着きました。苦肉の策でした。社会保障分野が坂口さんの名前でまとめたものを公表されたのとでは微妙な違いがあります。

●菅首相の誕生と参議院選挙の劇的結果

鳩山政権は発足当初こそ好スタートだったものの、瞬く間に低下を続けていきます。その原因には三つあると思われます。一つは鳩山、小沢のツートップの献金疑惑に対する不誠実な態度。二つは、マニフェスト違反への開き直り。三つは普天間基地移転問題などで、野党時代の主張と正反対の態度を取り続けたことなどです。自民党の麻生前首相は「難しい漢字が読めずに恥をかいたが、信念はあった」。一方、鳩山首相は、「政治的信念のかけらも感じられない」というのが平成22年の5月ごろの世の中の空気です。わずか半年ほどで、民主党への期待はあえなく急転直下していくのです。

鳩山氏に代わって、登場するのが菅直人氏。副総理兼財務相だったナンバー2が、トップの不始末を横目に何食わぬ顔で取って変わるのはおかしいというほかありません。井上義久幹事長が菅首相就任直後の所信表明演説への代表質問で、①ガソリン税などの暫定税率の廃止②高校生の特定扶養控除の縮減③高速道路の無料化ならぬ実質値上げーなどと、前年の総選挙でばらまいた約束を次々と破り、数限りない公約違反をしているとして、民主党政権(国民新党との連立)を「国民だまし政権」だと厳しく断定しました。

追及されると、鳩山氏の献金疑惑などに意見を述べて諫めたが、財務相という立場に専念していたのだといいます。政治と金や普天間問題は自分の担当外だといわんばかりの逃げの姿勢に終始しました。では、財務分野ではどうかといえば、結局何もしてこなかったことを暴露するだけでした。

こんな状況で1ヶ月後に迎えた参議院選挙。民主党は改選54議席を大幅に下回る44議席に落ち込む大敗を喫します。国民新党に至っては議席ゼロで、与党系は非改選も含めて110議席に後退し、過半数の122を大きく割り込みます。衆院では民民連立与党が過半数を占めるも、参院では野党が過半数を占める「衆参ねじれ」状態になりました。直前の自公政権の時と同じ状態ですが、その時と違って衆院で3分の2を民民政権は持っていず、法案が参院で否決されても再議決できない状態になりました。

一方、自民党は改選議席38を大幅に上回る51議席となり、公明党は埼玉、東京、大阪の3選挙区で完勝。比例区でも763万9432票を獲得し、6議席を確保(改選議席8からは2減)、非改選の10議席と合わせて19議席となって、参院第三党の位置を維持しました。なお、この選挙ではみんなの党が一挙に10議席を獲得し、非改選と併せて11議席になったことが注目されました。

●サンデー毎日『このミステリーがすごい!』に登場

私の少年時代は、冒険推理小説と共にあり、それは長じても変わらぬ性癖へと身についてしまったように思われます。しかも、新聞記者から議員秘書を経て政治家になるまで、一貫してお仕えした大先輩の市川雄一さん(元公明党書記長)が無類の読書好き、とくに冒険推理小説に目がなかったとくれば、推して知るべしでしょう。二人でいつも面白く読んだ本を教え合って、読み競ったものです。私は『忙中本あり』を、ブログで公表してからというもの、〝永田町の読書人〟として、時に応じて様々な媒体に登場しました。

サンデー毎日の2010-8-22・29号で特集された「この夏 このミステリーがすごい!」に、私が出てきます。「お盆休みを控えた読者のために、人気作家やミステリー好きの著名人がイチオシの小説やDVDを紹介しよう」との触れ込みで。私の他には、佐々木譲、今野敏、黒川博行、綾辻行人、桜庭一樹の5人の作家、タレントの山本モナ、漫画家の蛭子能収さんら10人。私が選ばれること自体がミステリーと言えました。

【息もつかせず読ませて、暑さを忘れるー。ケンフォレットの『針の眼』がマイ・ベストです。第二次大戦中、連合国軍の上陸作戦予定地がノルマンディーであることを探り当てたドイツのスパイ「針」と、その情報をドイツに知られまいとする英国情報部との手に汗握る追いかけっこが展開されます。

乗っていた小舟が難破して漂着した孤島で、「針」は島に住む英国軍の元戦闘機乗りの妻と恋に落ちてしまう。第二次世界大戦史上、最大の作戦を背景に、男女の劇的なラブロマンスが盛り上がっていくスケールの大きさが見事。国内では横山秀夫の作品。『震度0』は、妻たちを含めた警察内部の人間関係のひだが興味深い。『第三の時効』も名作です。

無名時代のスティーブン・スピルバーグが撮った『激突!』は鮮烈!主人公は運転者の見えないトラックにひたすら追いかけられる。自分が追われてるような心境になり、ゾッとするので夏にぴったりです。ただ、何度も見る気にはなれません。

最近では米TVドラマ『24』シリーズにハマりました。原発、感染症、小型核など現代が直面する安全保障のトピックが豊富。危機管理のヒントになり、安全保障に関心を持つ人は必見でしょう。】

いささか古いものばかり。「この夏 このミステリー」というよりも、「あの夏 あのミステリー」といった趣になってしまいました。(2020-8-16公開 つづく)

 

 

【84】鳩山から菅へ、団塊世代の危うい首相続くー平成22年(2010年)❸ はコメントを受け付けていません

Filed under 未分類

Comments are closed.