【5】「安保法制前夜」でTBSニュース23に登場ー平成25年(2013年)❺/2-16

●「安保法制」大議論の先駆け

私が国会で仕事をした20年間のうち、多くの時間を割いてきたのが、「日本の安全保障」をどう安定的なものにするかというテーマでした。公明党でこの分野の先達は、市川雄一元書記長です。機関紙局長(公明新聞編集主幹)当時には記者として、数々の薫陶を受けました。その後には同議員の秘書を経て、代議士に当選してからも同様です。野党時代の公明党は市川さんを先頭に、日米安保条約体制のもとに日米同盟を堅持しつつ、憲法9条の国際平和主義を貫いてきました。21世紀に入って自公連立政権が常態となり、民主党に政権を明け渡すまでは、私が中軸になって「行動する平和主義」の側面を強めていきました。

「行動する」という言葉が冠せられているのは、座して平和を待つ「一国平和主義」の姿勢ではなく、積極的に平和を構築する担い手であるとの意味を持ちます。共産党は勿論、民主党当時の旧社会党勢力や、今の立憲民主党の中には公明党のこうした姿勢を誤解して、自民党の亜流と見る向きがあります。しかし、それは間違いです。私たちはどこまでも憲法9条を硬直化した姿勢で「縮小解釈」するのではなく、また自民党内改憲派のように「拡大解釈」するのでもありません。あくまで「適正解釈」に徹してきました。この方向性は私が辞めた後も、佐藤茂樹衆議院議員らを中心とする仲間達に受け継がれていったのです。

そんな時に、安倍首相は、新安全保障法制を作る方針を固めました。民主党を完膚なきまで打ち破り、与党勢力が圧倒的な議席を持った今こそ、永年の懸案である「集団的自衛権」の行使容認に踏み込むタイミングと決断したのです。ここから2015年5月に具体的な「安保法制」が閣議決定を経て国会提出されるまで、波乱含みの〝防衛論議の季節〟がやってきます。主舞台から離れた私ですが、まるで舞台袖で演技者たちの動きに気を揉む関係者のように、以前にも勝るとも劣らない動きをすることに。まずその先駆けは、TBSテレビからの取材依頼でした。

●TBSテレビ「ニュース23」の取材を自宅で受ける

担当記者が私の自宅まで来て取材するというので驚きました。こちらから出向くよと言ったのですが、いや行きます、と。9月4日に姫路までTVカメラを担いだ記者と二人でやってきて、狭い我が家の2階の書斎で撮影することになりました。小一時間ほどあれこれ喋ったのですが、後で放映されたのは3分にも満たずほんのちょっとだけ。雨が降っていたので、玄関先で記者に傘をさしかける場面まで収録されて、アットホームな感じが醸し出されてはいました。番組のトーンは、政府が、憲法が禁じる「集団的自衛権」を可能にしようとしゃにむに「安保法制」を準備している、これにブレーキを公明党や自民党はかけられるのかという内容でした。自民党は〝ハト派〟で宏池会のベテラン政治家・古賀誠氏でした。

この番組には重要な伏線が張られていました。あの「イラク戦争」で、無かった「大量破壊兵器」をあるとした米国、それに追従した日本政府。その誤認の主張に結果的に加担してしまった公明党の中で、積極的に論陣を張った私の深い反省です。番組の前半では、その後味の悪さが機縁となって、党の安保政策の総括文書に率直な事実を書き込んだ経緯を述べる私の姿が描かれていたのです。

●様々な反響呼んだ放映

後半部分では、私は「集団的自衛権の容認は憲法改正を必要とします」「もっともっと自民党にもの申さねばなりません。でなければ、なんのための自公政権かと言われかねない」と発言。精一杯の歯止め役ぶりを披露したものです。番組が放映されたのは、収録から二週間後の18日。偶々私は石川県へ家族旅行中。旅館の一室でテレビを見ることになったのですが、放映時間の短さに物足りぬ思いを持ちました。しかし、反響は大きく、友人、仲間から電話やメールをいただきました。

今なお覚えているのは、元フジテレビの報道局長から公明党参議院議員に転身した大学後輩の澤雄二君が、「赤松さんってこんなに〝左の立場〟だったっけ?」と電話をしてきたこと。前述の「総括文書」取りまとめの作業の仲間として、彼とはよく議論したものです。その際に、周りが右の論調だと、私は左バネを利かす発言をし、逆の場合はそのまた逆の発言をするという風に、天邪鬼的対応をほしいままにしていました。

これは、ひとえに党内議論を活発にし、真ん中の議論を生み出す狙いを持たせたつもりでした。ただし、それを周りはわかってくれていたかどうかは疑問です。澤君は一貫して「左」を貫く発言をしていましたから、時に私とぶつかったとの記憶が強く残っていたものと思われます。(2021-2-17  一部修正)

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