【7】どんな国にも必要な宗教の存在ー『新・人間革命』第2巻「錬磨」の章から考える/5-19

●前車の轍を踏んだことの苦い思い出

この章では、「水滸会」における山本伸一の男子部代表への訓練の厳しさと、質問会でのやりとりが強く印象に残ります。まず、前者から。

「広宣流布を双肩に担った若きリーダーの旅立ちと訓練の集いにしては、いかにも雑然とした雰囲気だった。そこには『水滸会』としての誇りを感じ取ることはできなかった」ー食事の準備に手間取る食事係の青年に対して、怒るばかりの最高幹部の姿に「なぜ、先輩は同志の苦境を考えようとしないのか。助けようとしないのか。広宣流布の途上には常に予期せぬ事態が待ち受けている。その時こそ、本当の団結が問われる。ささいな事のようだが、この姿は一つの縮図といえよう」「彼は食事が遅れたことに憤ったのではない。戸田の遺志を受け継ぎ、広布の中核として立たねばならぬ『水滸会』の自覚を忘れていることが無念でならなかった」(111頁〜121頁)

ここを読んで、遠い過去の出来事と二重になって、映画の一シーンのように思い出されます。舞台はこの時より20年ほど後のこと。九州の地に池田先生と共に、時の男子部の訓練グループメンバーが集う機会がありました。残念ながらこの「水滸会」の体たらくと同じような、弛緩した空気に引きずられるものを感じました。面白い仲間たちとの楽しい語らいだったとの記憶は残るものの、何かが欠けていたとの思いがあります。私の男子部時代の苦い思い出ですが、その都度、頭を左右に振り、背骨を正す仕草をして、体勢を立て直すことにしています。

●人間という原点に立ち戻る大事さ

この後、質問会へ。二つの質問がでます。一つは、世界における東西対立が深刻化しているが、これは日蓮大聖人の言われる『自界叛逆難』の姿ととらえることができるのかというもの。もう一つは、共産主義国家では宗教を否定的にとらえているが、これは広宣流布の障害にならないか、という疑問でした。

伸一は、前者の質問に同意したのち、「仏法を持った私たちが、世界の平和のために、民衆の幸福のために立ち上がらねばならない時が来ている」「イデオロギーによる対立の壁を超えて、人間という原点に返るヒューマニズムの哲学がこれからの平和の鍵になります。それが仏法です」と答え、「信仰者として、世界のために何をなすか。それが重要なテーマです」と強調しています。(126頁)

池田先生は、会長就任以来、世界のあらゆる分野の指導者と対話を重ね、仏法の偉大さを訴えてこられました。と同時に世界中の悩める民衆に激励の手を差し伸べてきています。前回の章で、私はあたかも最近になって「立正安国」から「立正安世界」「立正安球」の必要性が増してきたかのように書きましたが、それは正確さを欠きます。既に先生は60年前に、その見方を提示され、しかも具体的な手を次々と打ってこられたのです。

 かつてのイデオロギー対立は姿形を変貌させ、各国に分断の要因が猛威を奮っています。いやまして、後継の闘いが求められています。

●気になる中国、ロシアの動向

もう一つの質問には、「大丈夫。長い目で見ていけば、いつか必ず、宗教を認めることになります。どんな国でも、真の社会の発展を考えていくならば、人間の心という問題に突き当たる。国家の発展といっても、最後は人間一人ひとりの心の在り方、精神性にかかってくるからです」「いかなる国も真実の宗教の必要性を痛感せざるをえない」「そのためにも、大事なことは各国の指導者との対話だと私は思っている」(127頁)

先生はその後、中国の周恩来総理との深い対話と交流の中から、不滅の関係を築かれました。しかも数多い文化人との精神の繋がりを編んできておられます。また、ソ連、ロシアとも同様です。特にゴルバチョフ元大統領とは『二十世紀の精神の教訓』の対談集を読むとわかるように、深い信頼に基づく人間関係を培ってきておられます。かつて欧州でメディア関係者が、同大統領との懇談の中で、創価学会SGIへの無理解に基づく視点からの心ない発言をしたことがあります。それに対して、あなた方は全く実情をわかっていないと、厳しく嗜められたことは有名な逸話です。

現在の指導者である習近平主席やプーチン大統領の国際政治での振る舞いや対日姿勢から、両国の現指導部の対創価学会観に変化はないのかどうか気になるところです。歴史のうねりの変化の中で、不動の関係が続くと見ることは楽観的に過ぎるかもしれません。しかし、もはや無関係と見るのは表層的な捉え方です。中国、ロシアの大地に、多くの民衆の心の中に、植えられた種はすでに芽生えており、いつの時代にか、大輪の花を咲かせるに違いありません。私は自身の環境の中で、水を注ぐ役目を果たしたいと期しています。(2021-5-19)

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