【57】全てはその自覚からー小説『新・人間革命』第14巻「使命」の章から考える-2/23

●看護師の一念の転換から慈悲の看護は始まる

 この章では、看護師、鼓笛隊、文芸部の活躍が紹介されていきます。それぞれ、医療、文化、芸術の分野で地味ではあるものの、かけがえのない役割を果たしてきた人びとについて取り上げられています。このうち看護師については、コロナ禍の現在、世界中でその存在の重要性が改めて注目されています。創価学会において「白樺グループ」との名称で伸一によって結成された時(1969年6月6日)の様子から語られていきます。(98-120頁)

   結成式での模様を女子部長から聞いた伸一の言葉が強く印象に残ります。「この会合はささやかだが、やがて、歳月とともに、その意義の大きさが分かってくるよ」と冒頭で述べたあと、厳しい環境の中で日々広宣流布の使命の炎を燃やし、仏道修行をすることの重要性を強調。仲間同士で励まし支え合い、「使命に生きる心を触発し合っていくことが大事になる」と述べました。最後に「みんなが、自身の使命を自覚し、自身に挑み勝っていくならば『白樺グループ』は最も清らかで、最も強く、一番信頼と尊敬を集める、功徳と福運にあふれた女性の集まりになるよ。楽しみだ。楽しみだね‥‥」と深い思いを寄せたことが描かれています。(111-113頁)

 この時いらい、伸一の期待通りに、白樺グループは見事な発展をしてきましたが、コロナ禍にあって、全国各地での八面六臂の活躍がしのばれます。

 昨年夏に出版された『看護師が見たパンデミックー新型コロナウイルスとの闘いⅡ』の中で、兵庫県立尼崎総合医療センターのO看護師の手記が目に入りました。看護師の確保の苦労、ご遺体の納棺、家族への励ましなど、心打たれる中身でした。最後の経歴を見て驚きました。県立厚生専門学院の看護学科を卒業したあと、17年後に創価大学教育学部を卒業、さらに6年後に大阪大学の医学系研究科の博士前期過程終了とあるのです。慌てて取材すると、やはりこの人は白樺グループのメンバーでした。凄い勉強家の逸材です。

 私はかつて、医師、看護師、放射線技師、薬剤師といった医療関係者が患者を中心に円型を形作る「チーム医療」の大事さを国会の予算委員会で強調したことがあります。患者を脇に置き、医師がピラミッドの頂点にいて皆を従える形ではいけない、と。これからも注目したいと思っています。

●鼓笛隊員の活躍とその背景

 舞台は、アメリカロサンゼルスでの全米総会に移ります。7月26日。会場のシュライン公会堂に参加した1万人に圧倒的な感動をもたらしたのが日本から参加した富士鼓笛隊の演奏でした。この時の鼓笛隊メンバーの胸打つ体験が紹介されたあと、鼓笛隊が結成された1956年(昭和31年)からの経緯が語られていきます。(124-162頁)

   立川良美、佐田典代らの体験には涙しました。父や母を相次いで病気で亡くし祖母に育てられた立川の少女時代にとり鼓笛隊は生きる希望でした。訪米の前の練習に明け暮れていた時の77歳の祖母の死の場面には泣けます。訪米直前に、それまで重い楽器を持ち歩いたせいで背骨が捻れ、湾曲していることが分かり、裏方に回らざるを得なくなった佐田の苦悩と、復活の姿にも深い感動を覚えました。

【自分を不幸にするものは、他者ではない。時流でも、運命でもない。自身の弱さである。(中略) ゆえに幸福の人生を歩みゆくためには、青春時代に徹して自身の魂を鍛え上げることが、何にも増して重要になる】

 私は小学校の女性教師に折伏を受けました。その人は夫と別れ2人の子どもを育てていました。上の女の子が鼓笛隊員として見事な頑張りを展開。その後母親の跡を継ぎ、夫と共に立派な教育者として活躍、その子たちも堂々たる後継の人になっています。その根っこには彼女の胸中に鼓笛隊魂があったに違いないと思っています。

●仏法を基調にした新しい文学の興隆を担う人々

 続いて8月17日は総本山での夏期講習会で、作家、文筆家50人による文芸部の結成式が行われます。そこにはすでに大をなしていた人を始め多くの著名な作家も集っていました。彼等に対して伸一は気迫を込めて期待の言葉を述べます。そして秋には結成を記念しての会食会が持たれますが、その場での激励の様子が描かれていきます。(172-187頁)

  「大事なことは、何人の人が自分の作品に共感するかです。皆さんの文学を多くの人が支持し、称讃してくれることがそのまま仏法の素晴らしさになる。そのためには自分と戦うことです」ー伸一はこう、仏法を基調にした新しい文学の興隆に強い期待を寄せていきました。

 兵庫県在住の芥川賞作家M氏もこの中から輩出され、日本を代表する大作家へと飛翔されています。私は幾度か会い、激励を受けました。その都度、心底から伸一とその作家との厚い絆を感じ、深い感激に浸ったものです。(2022-2-23)

 

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