【81】平和の種を蒔いて一生を終わることー小説『新・人間革命』第21巻「SGI」の章から考える/8-15

●まだまだ遠い、地球的規模の人類の統合の道

 「SGI」(創価学会インターナショナル)が誕生したのは1975年(昭和50年)1月26日のこと。西太平洋の米国の準州・グアムで開かれた「第一回世界平和会議」の席上、結成されました。この章では、そこに至るまでの経緯が詳しく述べられていきます。当初は51カ国・地域、158人の代表が集い(参加希望は74ヶ国・地域)、国際仏教者連盟(IBL)が結成されました。この組織は、各法人、団体の互助会的傾向が色濃いものでした。このため、信心の指導が受けられ、学会精神の学べる国際機構を待望する声が巻き起こり、直ちにその場で発展的解消がなされてSGI結成へと、進んだのです。(7頁~44頁)

    この会議で挨拶に立った伸一は、【「異体同心なれば万事を成じ」(御書1463頁)の御文を拝し、生命尊厳の哲理を根本に、各国の民衆が団結して進んでいった時に、必ず永遠の平和が達成されると強調。さらにトインビー博士との対談の折、戦争の歴史であったこの世界を、どのようにして世界国家、世界連邦へと統合するかについて語り合ったと述べた。(中略)  博士がこの対話を通して、〝将来地球的規模で人類の統合がなされる時には、世界宗教が広まることが重要な役割を果たすであろう〟との考えに立つようになったことを紹介した】と、あります。

 さらに、伸一は、50年前の対談の別れ際に同博士から、「世界の人びとのために、仏法の中道哲学の道を、どうか勇気を持って進んでください」と言われた、とも語っています。そして最後に、「自分自身が花を咲かせようという気持ちでなくして、全世界に平和の種を蒔いて、その尊い一生を終わってください。私もそうします」と結んでいます。(42-43頁)

 それ以後、今日まで、SGIは大きな前進を示していますが、地球的規模の人類の統合への道はまだまだ遠い現状です。だから諦めるとか、ただ嘆くのではなく、その実現に向けて、これからも長く続くであろう道を、幾多の困難をも乗り越えていくしかないといえます。私たちにとって、仏法の中道主義を知った喜び、そして日々平和の種を自分は蒔き続けているのだとの確信こそが、何ものにも代え難い手応えだといえましょう。

 ●ガーナ広布にかけた日本人

    世界平和会議でのスピーチを終えると、各国代表のテーブルを周り、激励の言葉をかけていく伸一の様子が紹介されていきます。シンガポールとマレーシア。そしてガーナのリーダーが登場します。このうち、ガーナ指導長・南忠雄についての記述が私には印象深く迫ってきます。というのも、この人物のモデル薬袋(みない)聖教新聞海外常駐特派員は神奈川県横須賀市の人で、それなりに私も面識があったからです。

 「同じ一生ならば、アフリカの人びとの幸福のために人生を捧げ、広宣流布のパイオニアとして名を残すことだ。それが君の使命だ。崇高な使命に生きられるということが、どんなに素晴らしいか、やがてしみじみとわかる時がくるよ」──伸一はこう激励をし、南は元気いっぱい昭和49年に現地赴任していきました。いらい、マラリアに罹り大変な目にあいながらも見事に使命を果たし、9年後の昭和58年にはアフリカ初の会館を完成させます。遠いアフリカの地での獅子奮迅の戦いが察せられ、深い感動を覚えました。

 実はこの春に薬袋さんは亡くなられたと聞きました。既に聖教新聞を定年退職されて、日本に帰ってきておられました。崇高な使命を果たされたアフリカでの生活の一端や現地の様子を聞きたいものでしたが、果たせずにお別れしてしまったことは残念でした。

●複雑な韓国の内部事情

 一方、この章の最後に、世界平和会議に参加出来なかった韓国の状況について、伸一が心を砕いていく様子が述べられています。当時、韓国は三つのグループに分かれて、複雑な内部事情がありました。(96-100頁)

 「もしも、こんな状態が続けば、当事者だけでなく、全メンバーが、いや一国が不幸になってしまうからだ。それは何も韓国に限ったことではない。世界のいずこの組織であっても、清らかな信心が流れないようになれば、幹部の腐敗と堕落が始まり、利害に絡んだ派閥争いや、分派活動が起こることになるだろう。絶対に、そんなことをさせてはならない」──こう、伸一は会議終了後の打ち合わせで語り、韓国の団結をSGIとしての最初のテーマに掲げて、皆で総力をあげて対応することにしたのです。その結果、最終的には2000年(平成12年)4月に、韓国SGIの法人設立が許可されるようになりました。

 韓国こそ最も日本との関係が難しい国です。この間の関係者の皆さんの大変な努力を思うとき、つくづく能天気な自分を反省します。何事も一朝一夕には成就しないことを改めて痛切に感じるのです。(2022-8-15)

 

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