【101】 「真剣勝負」の積み重ねと「精進行」──小説『新・人間革命』第26巻「厚田」の章から考える/1-4

●一人燃え立つところからすべては始まる

 山本伸一と妻の峯子は、1977年(昭和52年)9月30日、札幌市豊平区の札幌創価幼稚園を車で発ち、恩師・戸田城聖の故郷である厚田村(後の石狩市厚田区)を目指していました。そこには、師の名を冠した戸田記念墓地公園があり、この日は完成を祝う記念式典が予定されていたのです。冒頭、いわゆる「墓地問題」の経緯などと共に、創価学会初の墓地公園の所長に就いた伊藤順次の「厚田広布」の戦いが語られていきます。その中で、強く印象に残るのは、次のくだりです。

 【伊藤の心にあったのは〝厚田村は戸田先生の故郷であり、山本室長が、世界の広宣流布を誓った地である。その厚田村に、断じて仏法の光を注ぐのだ!〟との一点であった。〝師のために〟──そう思うと、挑戦の勇気が、無限の力が湧いた。一人立つ広宣流布の勇者がいれば、魂の炎は、一人、また一人と燃え広がり、明々と暗夜を照らし出す。一人立て!すべては一人から、自分自身から始まるのだ】(32頁)

    あらゆる戦いの勝利の源泉は、まず自分が一人立つことから始まると教えられてきました。その原理がここからは、読み取れます。ここは厚田という戸田先生有縁の地ですが、日本、世界いやこの地上すべて場所において、この原理が当て嵌まることが説かれているのが、この小説『新・人間革命』なのだと思います。

●絶望と思える戦いにも、粘り抜くことの大事さ

 さらに10月2日の午後、戸田講堂の食堂で行われた「北海道未来会」第4期の結成式で、伸一は、中学生、高校生の代表26人を前に、人生における極めて大切なことを次の様に、語っています。

 「人間にとって大事なことの一つは、〝粘り〟ということなんです。ある意味で、人生は、絶望との戦いであるといえるかもしれません。(中略)  人生の勝利の栄冠は、信心を根本に、執念に執念を尽くし、粘って粘って粘り抜き、自分の決めた道を歩んでいった人の頭上に輝くことを宣言しておきます」(59頁)

   決めた目標に向かって、諦めずに粘り抜くことの大事さを、ここでは力説されています。新しい年の開幕にあたって、それぞれ大きな目標を掲げて出発しました。これまで、私も幾たびも様々な目標を掲げ挑戦してきましたが、その積み重ねこそが〝自己実現〟であると確信して、今年も頑張ろうと決意しています。

●「一節でもいいから身で拝そう」

 伸一は北海道に滞在しているこの時(10月4日)に、『御義口伝』を研鑽御書とするように提案します。石狩川の渡船場で、同行していた北海道総合長の田原薫に対して、「『御義口伝』は難解かもしれない。それでも挑戦し、一節でもいいから、身で拝そうとしていくんです。すごい力になるよ」と。田原は、かつて学生部の代表に行われた『御義口伝』講義受講生だけに、伸一の「君たちは、創価新時代の令法久住の先駆なんだよ」の言葉が強く胸に響くのです。(99-100頁)

 「私も戸田先生にお仕えして以来、深く心に刻んできた『御義口伝』の一節がある。『一念に億劫の辛労を尽くせば本来無作の三身念念に起るなり所謂南無妙法蓮華経は精進行なり(御書790頁)の御文です。──ここには、一生成仏の要諦が説き明かされている。「本来無作の三身」とは、一言すれば、自身に具わった仏の大生命である。その大生命を、瞬間、瞬間、涌き出していくための要件とは、わが一念に「億劫の辛労」を尽くすことだ」

 ここにある「一念に億劫の辛労を尽くす」の一節は、幾度となく目にし、耳にしてきました。その都度、その大事さは分かりながらも、その実、いい加減に捉えてきたのではないかとの反省が私にはあります。ただ、その一方で、自分にとって絶体絶命に思えるピンチの時には億劫とまでは行かずとも、千万ぐらいの辛労を尽くしたことを思い起こします。

 「無数の辛労を一瞬に凝縮したような、全身全霊を傾けた仏道修行のなかに、仏の智慧と生命力が湧き上がってくるのである」との一文が分かった瞬間は私にもありました。ともかく真剣に、真一文字に課題解決に向かって立ち向かうことなんだと、今では思っています。「精進行なり」なんだなあ、と。

 昨年11月号の『大白蓮華』から「世界を照らす太陽の仏法」のタイトルで、池田先生の『御義口伝』講義が始まっています。これが最後だとの思いで、私も声を出して口読に挑戦しています。新年号では、「秘とは、きびしきなり、三千羅列なり」の一節について、「因果の理法は厳然です。ゆえに仏法は勝負です。善は善として、悪は悪として、必ずその真実が明らかになる。いな、断固として明らかにしていくのです」とあります。従来、私は善悪を分けて考えてきました。しかし、今回、一人の存在に同居しているケースもあるのではないか、と。我見の罠に陥らずに考え続けたいと思います。(2023-1-4)

 

 

 

 

 

 

 

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