【102】「人類は共同体」との国際世論高めよう──『小説・新人間革命』第26巻「法旗」の章から考える/1-10

●指導部の闘いにあらためて奮起を誓う

 1978年(昭和53年)が明けました。伸一は、元旦の新年勤行会で、法華経寿量品の「毎自作是念」について、「奥底の一念に、常に何があるのか、何を思い、願い、祈っているのかが大事になるんです。そこに、自分の境涯が如実に現れます」と述べ、「日々、久遠の誓いに立ち返り、広布を願い、祈り、行動する一人ひとりであってください」と激励しました。このあと、静岡研修道場に向かい、翌日牧口園で50歳の誕生日を迎え、牧口先生や日蓮大聖人の壮絶な戦いを思い起こし、強い決意を固めて新年の出発をします。

 6日には「支部制」が発表され、それまでの総ブロック長が支部長へと変わることになります。ここでは学会伝統の支部の大事さが語られたあと、「指導部」のあり方について深い意義が触れられます。(123-127頁)

 「信心重厚にして経験豊富な、〝広布の宝〟ともいうべき指導部の皆さんが、会員一人ひとりに、こまやかな激励、指導の手を差し伸べていただきたいんです。指導部の皆さんとライン組織のリーダーが異体同心の団結を図ってこそ、広宣流布の組織は盤石なものとなるのであります」(124頁)

    今年の新年もはや明けて10日となりました。戦後77年の昨年、私は『77年の興亡』と題する本を出版しました。明治維新から敗戦、そしてコロナ禍と続く、77年目の大きな節目を実感したからですが、ウクライナ戦争が起こり、さらに大きな転換期を実感せざるを得ませんでした。その意味でも、歴史を画する新たな年2023年を懸命に生きようと、より一層強い祈りで新年をスタートしました。

 新年になり、同じ地域に住む壮年部の区幹部が新たに支部最前線の役職に就き、草創の決意で頑張るとのご挨拶を頂いたり、つい先日は東京・新宿区の壮年最高幹部から、夜遅く地域の同志の激励に歩いてきたとの電話をいただきもしました。「指導部」といえる皆の活躍を知って、私も決意を新たにしたしだいです。

●エドワード・ケネディ氏との会談

 1月12日にはアメリカの上院議員で、元大統領のJ・ケネディの弟であるエドワード・ケネディ氏が来訪し、伸一と会談しています。この時の会談で、同氏が政治には「道義の力」が必要だと述べたことに対して、伸一が次のように語り、応じていることが注目されます。(133-134頁)

 「大事なのは、人間の生命は等しく尊厳無比であるとの人間的価値観が、『道義』の根本をなすということです。ソ連の首脳も人民も人間です。中国の首脳も人民も人間です。その認識に立ち、『人類は、一つの共同体である』との国際世論を高めていくべきです。そこに、明確な目標を定めて挑戦していただきたいんです」

 この伸一の言葉を、今の時点で読むと、一段と深い意味合いを感じます。ロシアのウクライナ侵攻から始まった戦争で連日、悲惨な市民への戦禍が報じられています。ロシア兵の親たちも犠牲を蒙っています。第一義的にはプーチン氏の道義性が問われます。中国でも道義性が疑われる反人権的行為が取り沙汰され、台湾への武力攻撃も辞さぬ習近平氏の強権的姿勢が疑問視されています。一つ間違うと核戦争の悲劇が再来します。

 今ほど、「人類は、一つの共同体である」との国際世論が待望される時はありません。伸一はかつて、キューバ危機の時に、J・ケネディ大統領がソ連のフルシチョフ首相との間で、人類を絶望の淵から救う行動をしたことを高く評価しており、一度決まった直接会う機会を楽しみにしていました。しかし、日本の大物政治家の横槍で直前になってキャンセルにせざるを得なかったのは残念なことでした。

 世界から「道義性」の根幹をなす人間的価値観が吹き飛んでしまい、相互憎悪の連鎖が始まり、第三次世界大戦に繋がることが懸念されます。人類の叡智がいま試されているのです。

●退転者が出るのを恐れるな

 その後、伸一は1月16日から、愛媛県松山市に飛びます。そこでも、様々な出会いの中で、多種多様な激励、指導が繰り返されます。私が強く印象に残るのは、ある婦人が「私が弘教し、入会させたメンバーが退転してしまい、深く悔やんでいます」と語ったことに関連して、退転者の問題について語っているところです。

 竜の口の法難から佐渡流罪の時に、『千が九百九十九人は堕ちて候』(御書970頁)と、多くの門下が退転していきました。それを引用したのちに、こう激励されているのです。「仏の使いとしての使命を果たそうと、苦労して折伏をしたという事実は、永遠に生命に刻まれ、功徳の花を咲かせます。自身の幸せへの軌道は、間違いなく開かれているんです」(202頁)

 私が折伏し、一度は入会した友人たちも、その後退転していった者が少なくありません。三世の生命と捉えれば、また、この信仰に戻ってくると確信しています。(2023-1-10)

 

 

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