【91】東大で院生前に謎解きクイズー平成23年(2011年)❻

●漁業、農業、中小企業関係者たちとの交流

兵庫県は、阪神工業地帯や播磨工業地帯など瀬戸内沿岸部に位置する重化学工業に依拠する県だと見られますが、その実、南北二つの海域、中央部は山村部が大半を占める農漁業県です。この10月、漁業と農業にまつわる二つの重要な会合に出てあれこれ発言する中で、考えさせられることもありました。

一つは、10月12日に明石市民会館で開かれた県内漁業者の集まった決起大会です。漁業用船舶や農業用機械が燃料とする軽油に課せられる軽油引取税の免税措置が3年間の期限切れを迎えるが、これを恒久化せよとの声が満ち溢れました。「漁師はもう海に出るなということか」「なんで、道路特定財源に、海の上を走る我々の燃料税が充てられるのか、理解に苦しむ」ー次々と壇上に立つ関係者らの意見です。2008年までは、道路整備に充てる目的税だった、軽油購入時にかかる地方税としての軽油引取税。それが2009年度の税制改正で普通税となり、軽油1リットル当たり32円強もの値上がりが生じることになったのです。

当時の麻生政権は、臨時措置として3年間の免税措置を講じました。急場凌ぎをしたわけです。それがこの年で終わるため、その対応が問題となり、漁業者たちはこの際恒久化せよとの一致した要求となったのです。民主党の代表は挨拶の中で、一定期間の免税措置を解くことに対して、いちいち反対するために行動を起こしてきた従来の政治のあり様を批判しました。この後に立った私はその発言を評価したうえで、言ったからには実現せよと、釘を刺しました。同党は自民党政治を槍玉にあげながら、結局は改革できずに踏襲することが多かったからです。

もう一つの会は、10月17日に開かれた、党と日本商工会議所との懇談会です。ここで、中小企業の代表から、「民主党内部のTPPに関する煮え切らない論議には全く納得がいかない。農業への過保護ぶりには腹わたが煮え返る思いすらする」との声が上がりました。中小企業関係者にとっては、農業従事者がいかにも甘えていて、政治がそれを助長しているかに見えて仕方がないと思われるとの発言が相次ぎました。超円高、空洞化の現状に悲鳴にも近い声が上がったのです。

政治はいつの時代もあちらを立てて、こちらを立てないと、一方から怒りを買うことになるため、ややもすると、どちらも立てるか、双方ともいい加減にすることになりかねないことが多いのです。その意味で政権交代はある意味で、変わらぬパターンを揺さぶる効果が期待できる局面だったのですが‥‥。

●玄葉外相へ〝福島の叫び〟ぶつける

玄葉光一郎外相に外務委員会で質問をする機会が10月中旬にありました。岡田、前原、松本の各氏に続いて早くも4人めの外相です。彼は福島県の選出。今、震災で喘ぐ県民を尻目に外相の仕事をするゆとりなんかないはずだと思った私は、それをストレートにぶつけました。「外相になるべきじゃあなかったですよ」と。

玄葉大臣は所信表明でも「(原発事故は)着実に収束に向かって進んでいる」とのいささか能天気な認識を述べていましたが、この日の他の議員との応酬でも、被災県民の代表としての当事者意識に欠けるとの思いを抱かざるを得なかったのです。選挙区が、福島第一原発のある地域から約40キロほど離れた地域であることも影響しているのでしょうか、仁王立ちになって福島県民の立場を守ろうとの激しい気迫が伝わってこなかったのは残念なことでした。

TPPについても「しっかりと議論して出来るだけ早くに結論を出したい」と述べるので、「誰と議論をするのか」と聞くと、「国民」という漠たる答弁が返ってくるだけ。まず第一に、福島の農業者の声を聞かずして、国民の誰の声を聞くというのでしょうか。ここでも被災地・福島を軽視する姿勢が見えました。

●東大院生を前に考え抜いたジョーク

東京大学の大学院生を前に講義するー一度はやってみたいと思っていたことが遂に実現しました。同大学大学院法学部政治学科では、谷口将紀教授、根本清樹客員教授(現朝日新聞論説委員長)のもとでの「政治とマスメディア」の連続講義が行われていましたが、その講義のゲストとして11月14日に私が招かれたのです。1時間話したのち、30分ほど質問を受けましたが、冒頭部分で私が当時様々な講演の場で喋っていた〝謎解きクイズ〟を使いました。話はまず笑いをとるジョークから、との私のモットーに基づくものです。

ソ連からロシアへ、百年に及ぶこの大国のリーダーは、全部で10人(レーニン、スターリンからメドベージェフ、プーチンに至るまで)だが、この人たちには一定の法則がある。それは何かと問うもの。これは一般紙にも出ていて話題になったので、ご存知の方も多いと思います。答えはハゲとふさふさの髪の毛の人が交互に登場するというものです。

これは導入部。本題は、私が考えたオリジナル。日本は自民党一党支配が潰えた平成5年(1993年)から、民主党政権が誕生する平成21年(2009年)までのわずか約15年間に登場したリーダーが何と10人(細川、羽田から福田、麻生に至るまで)です。さて、この10人には一定の共通点があります。さて何でしょうというクイズ。これは中々わかる人がいません。やれ、全員二世ばかりとか、メガネをかけていないとか言いますが、皆間違い。この時も正解なし。種明かしはよしておきます。私は「東大卒や官僚出身」が幅を利かせていた時代が終わったのです、と結び、皆さんが頑張らないから、今日本の政治が揺らいでいると発破をかけておきました。

●ひとり一人の政治家を緊張させることこそ

さて、それなりの笑いをとったあと、本題に入りました。私の主張はただ一つ。だらしない政治家を鍛えるには、国会で活動する政治家の全ての情報が公開されるべきだというもの。とりわけ国会審議の実態をメディアはすべからく報道すべきで、それには一定の基準がある、と強調したのです。基準を考える上での参考例として、かつて朝日新聞が予算委員会の質疑について、二日間だけだが採点していたことをあげました。それは、質問の出来がいいとか悪かったとか、かなり辛辣な内容でした。ただし、この企画は一回こっきり。後が続かなかった。恐らく関係者から抗議がきたのでしょう。記者の主観で採点されてはたまらん、やめてくれ、と。

しかし、そこまでやらないと、政治家は緊張しないのです。彼らの質問の背後に、どこまで研鑽をした後が伺えるかを探る必要があります。新聞記事を参考にしただけなのか、現場に行って調査したのか、あるいは国会図書館などでの調査研究の後が伺えるのか、などと言ったことが考えられると私は述べました。尤も、これは現実にはとても大変な作業を伴います。しかし、それでもなお一人ひとりの政治家の日常を公平な形で情報公開する試みが必要であり、それこそが政治家を鍛えることになり、結果として日本の政治の質を高めることになる、と述べました。東大院生を前に少々こちらのテンションが高くなりすぎました。ちょっと無い物ねだりをしてしまったかもしれません。(2020-8-30公開 つづく)

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