【39】公明党誕生とその時代ー小説『新・人間革命』第9巻「衆望」の章から考える/11-10

●1964東京オリンピックとその時代

 1964年(昭和39年)10月には、東京で初めてオリンピックが開かれました。ここでは様々な各国選手の活躍を追っています。当時、大学受験生だった私には懐かしい場面が蘇ってきます。それと共に、この時代背景が鮮やかに分析されているのです。(316-334頁)

  ここでは、フランス人ジャーナリストのロベール・ギランが、西欧で当時の日本の復興が「日本の奇蹟」と呼ばれたことについて、「民衆の不屈の勇気」が成功を築き上げたと、評価したことが紹介されています。著者はその点を踏まえて、「民衆の自主的な勤勉さ、向上への努力こそ、日本の復興の原動力であった」と捉え、「日本の経済成長は、創価学会が大発展しゆく時期と、符合している」と分析されています。(333頁)

   戦後日本の経済復興の目覚ましさについて、政権の経済運営の巧みさやら、単に日本人の勤勉さがもたらしたものと捉えられがちです。しかし、現実には、伝統的な日本人の美徳である「勤勉や努力」は戦後の荒廃の中で、次第に薄れていった時期であり、「資本家対労働者」という対立意識が色濃く、「労働者の勤労意欲も低下しがち」でした。

 ところが、当時500万世帯に達していた創価学会員は全国各地で「自分の仕事を通して、社会に貢献しよう、人格を磨こう、職場の勝利者になろう、と自ら懸命に働いた」のです。「仏法者としての誇りと信念と哲学が勤労の原動力」だとして、社会状況を大きく変えていったと見ることができます。このあたりの捉え方は、社会学の研究分析もまだまだ及んでいないようで、一般的には定着しているように見られないのは残念なことです。

 今年、57年ぶりに2回目の東京五輪が開かれました。コロナ禍中の開催ということで、二つの大会の背後の社会情勢を単純には比較できませんが、戦後の経済復興に貢献した草創期の先輩たちのエネルギーに負けない我々なのかどうか。自省する必要がありそうです。

●公明党誕生への深い思い

 この年11月17日。公明政治連盟(公政連)が発展的に解消し、公明党が誕生します。それまでの参議院議員主体から衆議院への進出が明確になります。生みの親としての著者は、その背景を詳しく書き起こしています。その必要性として、①日本の政治家における指導理念の欠落②腐敗と敢然と戦う清潔な党の出現③真実の大衆政党がないーの三つが挙げられています。「多様な大衆に深く根を下ろし、大衆の味方となり、仏法の慈悲の精神を政治に反映させゆく政党が今こそ躍り出るべきであろう。それが衆望」であると。(361頁)

   出発に際して「日本の柱 公明党」と、「大衆福祉の公明党」がスローガンとして掲げられました。「社会保障の不備、重い税負担、低い賃金‥‥。6、7人の家族が、一間のアパートで折り重なるようにして寝ている一家もあった。病気になっても、病院に行けない人もいた」ーこうした状況を前に、大衆福祉の確立こそ、大衆と共に語り、戦ってきた議員たちの「信念の叫び」だったと、語られている場面には胸揺さぶられます。(364頁)

    この数ヶ月後に、大学に入学すると共に、創価学会員、公明党員になった私は、まさに、学問を学ぶ中で、政治のあるべき姿と現実との乖離を実感していくのです。結党の日に上梓された『政治と宗教』が出版されるやいなや、読みふけったことを思い出します。「政治は大地に育つ千草万木のごとく変化の世界であり、相対的な世界である。宗教は大地のごとく政治・経済・教育等のあらゆる文化の本源であり、永久不変の哲理である。偉大なる宗教、偉大なる哲学のない政治は根無し草であり、権力の争奪、民衆の不幸を繰り返すのみである」(378頁)  大きな感動の中で日蓮仏法を実践することを誓ったものです。

 今、公明党結党57年を直前にして、我が胸を去来するものは多く、身が縮む思いです。原点に立ち返り、もう一度、「大衆と共に」語り、戦わねば、と。

   ●沖縄での小説『人間革命』執筆

 翌12月の1日、伸一は4度目の沖縄訪問に旅立ちます。そこで小説『人間革命』の執筆に着手することを深く心に期していたのです。「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命転換をも可能にする」ーこのテーマを描きゆくのは、「最も戦争の辛酸を舐め、人びとが苦悩してきた天地」である沖縄をおいて他にない、と。(386頁)

  文章は書き出しによって決まる、とは幾たびも聞いてきたフレーズですが、伸一のこの時の呻吟する様子は心底、胸を撃ちます。3頁にわたりその有様が綴られています。そして「戦争ほど、残酷なものはない。戦争ほど、悲惨なものはない。だが、その戦争はまだ、つづいていた‥‥」と、壮大な幕開けに繋がっていくのです。(2021-11-10)

 

 

 

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