【44】時空を超えた〝共戦〟ー小説『新・人間革命』第11巻「暁光」から考える/12-13

●ブラジル広布の最前線での偏見を払拭する闘い

 1966年(昭和41年)3月10日。伸一はニューヨークからブラジル・リオデジャネイロに向かいます。6年前に続き二度目の訪伯でした。同国は2年前に政変があり、民政から軍政に変わったばかりで、独裁的傾向を強め、政情も不安定でした。創価学会の進出についても、無理解のもたらす悪意に満ちた情報が流され、警察の監視も異常を極めていたのです。

 時あたかも公明党の結成直後でもあり、創価学会がブラジルでも政党を作るのではないかとの疑問が渦巻いていました。そうした空気を背景に、伸一はジャーナリズムのインタビューを受けて、誤認識を正すために積極的に対話を続けます。(16-26頁)

   「宗教団体がなぜ政界に進出したのか」「政教一致を目指すのか」「ブラジルでも政党をつくる計画はあるか」ーなどの質問に、「(各国での政治への対応は)その国のメンバーが話し合って決めるべき問題」で、個人的考えとして「政党結成の必要は全くない」と明確に答えました。更に、日本に政党を作ったのは、「日本の再軍備という問題」が理由ですと述べています。「かつて日本は、アジアを侵略したにもかかわらず、本当の意味での、反省もない。それで軍備に力を入れればどうなるのか。軍事大国化し、間違った方向に進みはしないか」との懸念があったことを表明しました。

 こうしたやりとりを通じて、ジャーナリストがそれまでの自身の勘違いを改めて、客観的な報道をしたことが明らかにされていきます。これについて「真実は、語らなければわからない。沈黙していれば誤解や偏見のままで、終わってしまい、結果的に誤りを容認し、肯定することになる」と、結論づけられています。

 私はこのくだりに強い共感を覚えます。創価学会、公明党の動きについて、本当のことをどんどん発信しなければ、誤解を呼びかねないと思います。公明党については、与党化してから20年を超えた現在、権力への批判が弱まってる懸念があります。私はそうであってはならぬと、積極的に発言することを心がけています。

●リオの一粒種の闘いとパウロ・フレイレとの〝共戦〟

   ブラジルは、日本からの移民が最も多い国であり、日系人も沢山在住し、2世、3世と後継者も数多くいます。しかし、日系人が多いサンパウロの広布拡大ぶりに比べて、リオデジャネイロは立ち遅れていました。その地での〝一粒種〟として、造船会社の技術移住者夫婦が闘いゆく姿は感動的です。(27-33頁)

   リオの広宣流布を本格的に進めるためには、日系人だけでなく、現地の人々に布教をせねばと、ポルトガル語を必至に覚えて、懸命に仏法を語っていった夫妻の日常が胸を打ちます。「来る日も、来る日も、懸命に題目を唱えては、仏法対話を日課のように続け抜いていった」「やがてそのなかから、一緒に勤行をする人が誕生し、病を克服した体験や、経済苦を打開した体験が生まれ始めた。この生き生きと蘇っていく事実の姿を目の当たりにして、さらに信心をする人が増えていった」ー5年後には166世帯にまで拡大していったのです。

 同地を訪れた伸一に、夫妻は何千世帯のサンパウロに比べて遅れている現状に、もどかしさと申し訳なさを感じて「恥ずかしい限りです」と、責任感溢れる言葉を示すのでした。伸一は、たった一世帯から「百六十六倍に発展したことになる」と、その労をねぎらい、焦る必要はない、と次のように激励します。

「大事なことは、最初の決意を忘れることなく、一日一日が前進であった、勝利であったという、悔いなき力強い歴史を、我が身につづっていくことです。つまり、〝今日、何をするのか〟〝今、何をするのか〟を、常に問い続け、必死になって、挑戦し、行動し抜いていくことです。(中略) すなわち、広宣流布のための連続闘争こそ、仏の所作を実践している尊い姿であり絶対的幸福への軌道なんです」と。

 同じ頃、日本の東京で、まさにこの指導通りの日々を暮らしていた自分を思い出します。あれから55年余。「連続闘争」がいつのまにか、「非連続」や「だらだら」になっていないかと、深く反省します。生きてる限りは「連続闘争」の日々であらねば、と。

 ブラジルでの広布に思いを寄せている矢先に、同国北東部の名門学府ペルナンブコ連邦大学から、池田先生に名誉博士号が贈られたとの聖教新聞の記事(12月7日付)が目に飛び込んできました。この記事の中で、パウロ・フレイレという〝ブラジル教育の父〟と呼ばれる同大学の卒業生のことが宣揚されていました。「貧しい民衆の教育に生涯をささげ、1964年の軍事クーデターで祖国を追われた後も識字教育を推進した」と。このくだりを読み、その直後の池田先生の訪伯を思い、時間と空間を超えたパウロ・フレイレとの〝共戦〟を実感せざるを得ないのです。(2021-12-13)

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