【47】「権力の魔性」との不断の戦いー小説『新・人間革命』第11巻「躍進」の章から考える/12-29

●公明党の衆議院進出と党の未来像の発表

 1967年(昭和42年)1月6日に東京・千代田区の日本武道館で開かれた新春幹部会は、極めて画期的なものになりました。山本伸一が公明党の創立者として、党のビジョンを明らかにしたのです。その背景には衆議院進出を図ろうとする公明党に対する強い警戒の空気が世に充満していたことがあります。それを粉砕するべく、党の未来像を明確にしたのです。(331-333頁)

 「中道政治で平和と繁栄の新社会」の建設をモットーに掲げ、内政、外交に渡る様々な方向性を打ち出しました。ここで、注目されるのは、中道政治の中身を明確に示したことです。「一言でいえば、仏法の中道主義を根底にし、その生命哲学にもとづく人間性尊重、慈悲の政治ということになります」と述べ、更に、人間性尊重の政治とは、「人間生命の限りない尊厳にもとづき、各人各人の個性を重んじ、あらゆる人が最大限の幸福生活を満喫していけるようにすること」であり、「社会の一切の機構も、文化も、そのためにあるものと考え、政治を行う」ものだと、定義づけました。

 この時から半世紀を超える時が流れました。中道政治を標榜する公明党は、今、保守政治の自民党を内側から改革するために、〝与党内野党〟たるべく戦っています。と同時に、革新・リベラルの野党勢力との戦いも進めています。そこには、まさに二刀流の使い手としての役割が求められているわけです。一部に、昨今の公明党は自民党に取り込まれており、中道主義が見えないとの評価があります。「安定」を重視するあまり、「改革」が軽視されていないかとの懸念でしょう。この懸念を吹き飛ばす戦いが望まれます。

●権力の魔性との戦い未だ終わらず

 初の衆議院選で公明党は見事に25人の当選を果たします。挨拶にきた党幹部たちに対して、伸一は極めて重要な指導をします。将来、保守、革新それぞれの勢力と妥協し、様々な政策選択をすることになるだろうが、「根本は国民の幸福のためであることを忘れてはならない」し、「政権に参画したとしても、徹して権力の魔性とは戦い抜くことです。そうでなければ、公明党の存在意義はなくなってしまう」と厳命を下しています。

 「公明党の掲げる中道政治、すなわち人間主義の政治が、日本の潮となり、世界の政治哲学の潮流となるかどうかに、二十一世紀はかかっていると、伸一は考えていた」との記述に触れて、私は身震いする思いになります。「権力の魔性」との戦い以前に、〝金銭の魔力〟や〝生活の乱れ〟による〝自損事故〟で、残念ながら脱落してしまう議員が少数とはいえ、散見されます。「政治革命」への戦い未だ止まずの思いで、「中道政治」の確立に向けて戦わねば、と思うことしきりです。

●「皆が燃えていた」55年前と今との対比

 会長就任7周年の5月3日の直前に、伸一は三年半ぶりに新潟県を訪れ、会館の起工式に臨み、記念撮影など同志の激励に力を注ぎます。その際に9年前の〝佐渡での指導〟が語られ、そして日蓮大聖人の獅子王のごとき戦いに触れられていくのです。(354-400頁)

  この中で、伸一は、「日々、自分を磨き鍛えていくこと、つまり持続の信心」の重要性を語っています。「信心とは間断なき魔との闘争であり、仏とは戦い続ける人のことです。その戦いのなかにこそ、自身の生命の輝きがあり、黄金の人生がある」ー佐渡の金山にこと寄せて、「黄金の人生論」が展開されていきます。

 このくだりを読んで、「躍進」の章の冒頭の記述を改めて思い起こさざるをえません。「皆が燃えていた。自分たちが一生懸命に動いた分だけ、未聞の広宣流布の扉が確実に開かれ、時代が、社会が、大きく変わっていく手ごたえを、誰もが感じていた」との記述です。昭和42年と令和3年。55年ほどの時間差があります。「皆が燃えていた」当時と今と。仮に対比するとしたら、「持続の信心」にいささかの狂いが生じているのではないか、と自省する次第です。

 このあと、広宣流布途上において大難が必至であることが強調されます。そして、公明党が衆議院に進出してから一段とその予感がする、と。「仏法の慈悲を根底にした人間主義の政治の実現に、本格的に着手した」創価学会の動きは、政治権力の悪を断とうとするものであり、「諫暁に通じるがゆえに、それを排除せんとする画策がなされ」ていくのは当然だ、と。その後、時代は、まさにここでの記述通りに進展し、創価学会への厳しい波濤が増していくのです。

 今、公明党の与党化の中で、権力やその周辺との軋轢はなりを潜め、奇妙なまでの静穏さが目立ちます。果たして、これは前進と見るべきなのでしょうか。少なくとも権力の魔性との戦いに終わりはないことだけは、はっきりしています。(2021-12-28)

 

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