【77】一切の根源は人間生命➖小説『新・人間革命』第19巻「宝塔」の章から考える/7-20

●本尊とは何かについての考察

 日蓮大聖人はこの世に何を広めようとされたのかー1974年(昭和49年)4月28日の立宗宣言の日に、伸一は北陸広布20周年の記念の集い(金沢市)に出席し、このテーマに触れていきました。「(それは)『本尊』であります」と、単刀直入に述べられた後、その内容についてぐいぐいと本質に迫る考察がなされていくのです。

 「それは、『御本尊七箇相承』に『汝等が身を以って本尊と為す可し』(富士宗学要集』第一巻)とある通り、あえて誤解を恐れずに申し上げれば、総じては『人間の生命をもって本尊とせよ』ということであります」「つまり、大聖人の仏法は『一切の根源は〝生命〟それ自体である。根本として大切にして尊敬を払っていくべきものは、まさに〝人間生命〟そのものである』という哲理であり、思想なのであります」(298頁)

  「本尊」の大事さを一般大衆に分からせるためにこそ、大聖人は一幅の曼荼羅に文字で具現化されました。かつて私はある先輩から、曼荼羅だからこそ具体的に守ることが出来ると聞き、なるほどと腑に落ちました。仮に不埒な誰かが本尊に手をかけようとしたら、身で以ってその行為を防ぎ、守ることが出来る。もし、本尊が具体的な形をとっていなかったら、護ったかどうか、その本意が分からない、と。いらい、それまでに増して、本尊を大事にすることに意を配りました。と同時に、我が身即本尊の原理から、自身の生命を護ることが本尊を守ることに通じることも、理解できるようになりました。

 この時の講演の中で、【北陸は、浄土信仰が深く根を下ろしてきた地域である。その念仏の哀音と思想は、心の〝なぐさめ〟にはなったとしても、社会を変革・創造し、未来を切り開く理念とはなりえなかった】(302頁)との記述にであいます。日本の仏教史において、法華経哲理と念仏思想の争いは壮絶を極めますが、ここにその浄土思想の本質が見事に位置付けられています。一般的には今も、文学的志向の強い念仏者と、社会変革への熱情あつき法華経信者との相剋は密かに続いています。浄土真宗の家に生まれ、後に一家全員を法華信仰に改宗させた私としては、文学と政治双方を乗り越えた境地の確立を常に意識してきました。

●沖縄での反戦出版に取り組んだ仲間たち

 ついで、テーマは青年部の反戦出版委員会の取り組みに移ります。契機となった1972年(昭和47年)11月の第35回本部総会での山本会長の講演の中身とその後の経緯が詳しく述べられていきます。人類の生存の権利を守る戦いを青年部に託し、未来へと続く人間復権運動の大河を開こうとした伸一の思いが強く伝わってきます。

 戦争体験を後世に残すこの作業は、全国各地で始まっていきますが、真っ先に立ち上がったのは沖縄青年部でした。1974年(昭和49年)6月23日の出版を目指すことになった彼らの戦いについて、盛山光洋と桜原正之の正副編纂委員長二人の生い立ちや感動的な体験から、説き起こされていきます。(306-339頁)

    この当時は高等部担当だった私は、反戦出版には全く関わらずに過ごしていました。ただ、沖縄のリーダーのモデルになった二人は今もその容姿を明確に覚えています。同じ人材育成グループのメンバーとして、いくたびか〝広布の庭〟に一緒に集った思い出があります。共に琉球大学出身者として真摯な戦いを展開してきた尊敬すべき仲間でしたが、この章に接触するまで、二人の詳しいことは知らないできました。改めて彼らのことを再認識する一方、伸一の後継への強い思いがひしひしと伝わってきます。

 特に、地涌の菩薩の生命について言及されたくだり(334-336頁)は、胸を撃たずにはおきません。ここで、上行菩薩をはじめ、無辺行、浄行、安立行の四菩薩の働きについて伸一が説明しています。この働きは、勇気をもって大衆の先頭に立つ際に発揮されるものだと、理解されます。【一人ひとりが凡夫の姿のままで、自分を輝かせ、病苦や経済苦、人間関係の悩みなど、自身のかかえる一切の苦悩を克服し、正法の功力を実証していくことができるのである。その実証を示すための宿業でもあるのだ。】と。この記述通りに、自分自身も宿命転換をするぞと決意し戦ってきました。今、70歳台後半になってもなお襲いくる魔に立ち向かっています。

 反戦出版の第二巻は広島編、第三巻は長崎編です。1985年(昭和60年)までの12年間に及ぶ青年部員たちの地道な取り組みで、全80巻、3200人を超える人々の平和への叫びをつづった〝反戦万葉集〟が完結しました。【反戦出版の完結は、終わりではなく、始まりであった。それは伸一と青年たちの、新しき平和運動の旅立ちを告げる号砲となった。】(372頁)とあります。この試みこそ、世界平和への確実な一歩だと確信します。(2022-7-19)

 

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