【79】「歴史の逆転」は許されない──小説『新・人間革命』第20巻「懸け橋」の章から考える/8-3

●全ては、祈りから始めるとの行動原則

 中国からソ連(現、ロシア)へ。中ソ対立の懸案を解決すべく伸一は、1974年(昭和49年)9月8日、モスクワ大学の招待を受けて、かの国を初訪問します。10日間の滞在でした。大目的は世界の平和を確立することでありますが、その実現には教育・文化交流を通して、人間と人間を友情と信頼の絆で結ぶことしかないというのが伸一の信念でした。その旅のスタートにおける伸一と峯子の行動が読むものの心を打ちます。(172-173頁)

  【伸一と峯子は、荷物を整理すると、すぐに唱題を始めた。祈りから始める──それが彼らの信念であり、行動の原則であった。祈りは誓いであり、決意である。小声ではあるが、真剣な唱題であった。二人は、ソ連の人々の幸福と平和を、そして、いつの日か、地涌の菩薩がこの地にも誕生し、乱舞することを懸命に祈り、念じた。】

 祈りから始めるということは、これまで幾たびか先輩から聞かされてきました。あれこれと思い悩むよりも、まず仏壇の前に座り、ことの成就を祈念するとの原則です。若き日より、観念論に陥りがちであった私は、どうしても「祈り」=観念という定番のパターンを思い浮かべがちでした。それを打ち砕くには、「祈り即行動」との方式に慣れることだと、思い定めて挑んできました。それには祈りの中で、具体的な行動の順序立てを組み立てたり、成功へのイメージを思い描くなどの工夫もしてきたのです。

 また、昔と違って、集合住宅暮らしになり、どうしても小声にならざるをえぬため、元気が出ないと思うことも。それを覆すには、真剣さで熱中するしかないことに気づきました。大声であげられることに越したことはありませんが、小声もまた〝没我で代替〟出来ると、今は思うに至っています。

●「教育」こそ国家の反目を乗り越える力を持つ

 モスクワ大学を訪問した伸一一行は、大学200周年の記念に北京大学から送られたという、横幅2メートルにも及ぶ見事な織物を発見します。国家間の対立はあっても、人民同士の交流は揺るがないとの言葉を聞いて、伸一は直観します。

 【〝これだ!これなんだ!教育交流のなかで育まれた友情と信頼は、国家の対立にも揺らいではいない。この流れを開いていくのだ!彼は小躍りしたい気持ちであった。もう一度、織物を見上げた。教育の大城が、中ソ紛争という国家と国家の反目を、見下ろしているように思えた。】(184頁)

 【教育は未来を創る。伸一が教育に力を尽くしてきたのも、それこそが、新時代建設の原動力であると考えたからだ。】(199頁)

 「教育」の重要性は、様々な機会に目にし、耳に聞きます。それは人間を創ることに通じるからでしょう。 モスクワ大学と北京大学、二つの国を代表する教育の殿堂である大学相互を結ぶ文化の交流は、少々の反目にはびくともしない強固さがあるといえるのです。

 私は、国会で、「外交・安全保障」の分野に一貫して取り組んできましたが、ある時、大学時代の恩師で中国問題の権威であった中嶋嶺雄先生から「外交や防衛も大事だけど、教育はある意味でもっと大事だよ。そろそろ君も国会議員として『教育』に取り組むべきだね」と言われました。その先生はご自身、長く中国問題に通暁されていて、晩年秋田の地でユニークな大学経営に取り組まれる変身を遂げられただけに、重みのある一言でした。その思いに応えられないまま、永遠のお別れしてしまったのは極めて残念なことでした。

●「戦争を起こさないことが大前提」とのコスイギン首相発言

 モスクワ滞在の最終盤で、伸一はコスイギン首相との会談に挑みます。その中で、同首相に伸一は「あなたの根本的なイデオロギーは何か」と問われて、即座に次のように答えます。

 「それは平和主義であり、文化主義であり、教育主義です。その根底は人間主義です。」と。そう聞いた同首相は、「山本会長の思想を私は高く評価します。その思想を、私たちソ連も、実現すべきであると思います。今、会長は『平和主義』と言われましたが、私たちソ連は、平和を大切にし、戦争を起こさないことを、一切の大前提にしています。」(274-275頁)

  池田先生は中ソ対決の真っ只中で、ソ連の指導者から、平和を大事にし戦争は起こさないとの言質をとりました。こうしたやりとりが背景にあり、かつ、のちのゴルバチョフ大統領のペレストロイカという英断もあって、ソ連はロシアへと変貌を遂げました。しかし、それから約30年。プーチンのロシアは隣国・ウクライナに侵略戦争を仕掛けてしまい、もう5ヶ月も悲惨な戦争が続いています。

 歴史の逆転──様々な言い分はあれ、プーチン大統領の行動は、かのヒトラーにも匹敵する無残なものです。これを押し戻すために、私たちは「平和主義」を貫き通さねばならないと、心底から思います。(2022-8-3)

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