【82】友好の輪は「誠実と信義」から──小説『新・人間革命』第21巻「人間外交」の章から考える/8-20

●佐藤栄作元首相との深い絆

   SGIの発足から米国での国連事務総長、国務長官との会見を終えた伸一は、一転、日本国内で政治家や大学の総長、各国の駐日大使らとの会見、交流を重ねていきます。まさに人間としての外交の真の展開をしていくのです。なかでもノーベル平和賞受賞直後の佐藤栄作元首相との会談は印象的です。実はこの二人の出会いはこの時(1975年2月)が初めてではなく、最初は1966年(昭和41年)1月の鎌倉・長谷の別邸でのことだったことが明かされます。以下、まずその時の元首相の発言から。

 「『人間革命』読みましたよ。厳しい言葉がありますね。総理よりも一庶民が偉いと書いてある」「創価学会は純粋ですね。気持ちがきれいだ。純粋に国のためを思っていることがよくわかる」──小説『人間革命』の感想から始まり、「若い世代が国の将来を思う心をなくしてしまった。本当に残念なことです」「欧米には、宗教的モラルがあるが、日本人には自らを律するものがないのが心配です。しかも、本来、モラルの模範を示すべき政治家が、決して模範になっていない、これは極めて由々しき事態です」──と、吐露しています。

 そして、吉田茂と一緒に写した写真の前で、「私の師匠です」と誇らかに。【一国の総理が自分の師匠を尊敬し、誇りをもって紹介する姿に、伸一は〝この人は心から信頼できる〟と思った】とあります。そして、「あなたの師匠は戸田さんでしたね」との元首相の問いかけから、師弟論に話は進みました。(107-113頁)

   私が初めて国会に取材記者として〝廊下トンビ〟をしたのは昭和44年。時の総理・佐藤さんの発言を予算委員会で聞いたのもその頃でした。その後約20年、歴代の首相の姿を見続け、一転、議員に選んでいただいてからの20年も。色んなことがありましたが、国会で走っていた私が、衛視に囲まれ前を歩く佐藤首相に危うくぶつかりそうになりました。そして、「言論問題」が取り沙汰され、心なき野党議員の論難に対し、とても冷静で適切だった佐藤首相の答弁ぶり。こんなことを思うにつけ、風格のある人物だったことを思い起こします。

●福田赳夫元首相とも

 続いて、福田赳夫元副首相(当時)との懇談も、1975年(昭和50年)3月に。「会長のことは、佐藤総理からも、よく伺っています」で始まりました。【一人の人と、誠実と信義で結ばれていくならば、そこから、友情の輪は幾重にも広がっていくのである。一人を誠心誠意、大事にすることだ。「一は万が母」(御書498頁)である】──ここでは、「心の財」や青年の育成についての会話が弾んだと、あります。(123-128頁)

    当時、私は入社6年目、30歳。仕事の上では「自民党批判」をあの手この手で展開していました。福田さんとの思い出は皆無ですが、後に自公政権で首相となったご子息の福田康夫さんとは、予算委員会で「大連立批判」の質疑をしたものです。個人的にも親しく付き合いました。福田さんについては、「対中国観」が安定していると感心したしだいです。突っ込んで聞く機会は逃しましたが、今も尚、強く印象に残っています。

●第三次訪中での鄧小平氏との会見

 この後4月に伸一は第三次訪中に向かいます。そこで、鄧小平副総理と2度目の出会いをします。この時、毛沢東主席、周恩来首相は健在でしたが、主席は高齢、首相は健康に問題がありました。中国を代表する鄧氏との間で、米ソ、中ソ関係など世界の情勢を巡って率直な意見交換がなされます。また、日中平和友好条約の締結についても。この時の会談で、最も注目されるのは、「覇権」に関する考え方です。鄧氏は、この当時の大国に対して、どこまでも「反覇権」を貫くことを強調したのです。

 この場面の後に、鄧小平氏は再び失脚し、その後2年ほどが経ってまた復活し、不死鳥のごとき活躍をしていきます。現代中国の礎を作ったのはまさにこの人物だといえます。今の中国を見ていて、鄧氏が伸一との会談で、中ソ関係の行く末について「問題は指導者です。今後、どんな人物が現れるかです」と述べたことが強く私の心を捉えて離しません。そっくり、そのままこれからの中国にも当てはまるからです。この時から、半世紀が経ち、中国は大きく国力を高めました。今この国の一挙手一投足が世界の関心を集めています。

 「反覇権」を中国自らが貫くのか。また、これからのこの国の指導者には誰がなっていくのか──この2点に私の興味も集中しています。私たちは現在の中国の指導者の表面上の発言や動きを見て一喜一憂しがちですが、底流に流れるものを見据えていく必要を痛切に感じます。伸一が渾身の力を込めて築いた日中関係をどう発展させていくか。後継者たちが残された遺産をどう活かしゆくか。大学時代からだと60年ほど、いつも考えるところです。(2022-8-21)

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