【6】先住民族への差別と思い当たるフシ━━『燃える平原児』を観て/8-18

 ロック歌手として20世紀後半に世界に名を馳せたエルビス・プレスリーが俳優に徹した映画。彼の出演した映画は30本を超えるものの、歌手の力量とは別に駄作ばかりとの評価が専らのようだ。だが、私としてはこの映画を高く評価したい。それは人種差別の原型としての先住民アメリカ・インディアンの問題をわかりやすく描いている活劇映画だからで、今なお新鮮な輝きを持つ◆筋立ては単純明快。アメリカにおける西部開発途上に起きた、白人と原住民とのあつれきを克明に描き、飽きさせない。どころか手に汗握る面白さだ。プレスリーはインディアンの母と白人の父の間に生まれた次男(長男は父の連れ子で白人)の役どころ。この映画を観ていて、その昔西部劇に入れ込んだ我が若き日を思い起こした。あの頃は騎兵隊が善と思い込んだ、単純そのものの〝勧善懲悪好き〟の鑑賞者だった◆アメリカという国は、ずっと昔から住み続けてきた先住民を蹴散らし、アフリカから基本的には奴隷としての黒人を連れきたって、人権を好き放題に蹂躙してきた歴史を持つ。もちろん善意の人も数多いたし、現に今もいるのだが、人種差別のはなはだしさにおいて世界でも今なおトップに位置するお国柄である。見方によるとはいえ、現代世界の善きも悪しきもこの国発のことが多すぎると私は憂うひとりである◆もちろん、日本人の民族差別も並みではない。最たるものはアイヌ民族への仕打ちであろう。先日NHKのラジオ深夜便を聴いていて、スペイン在住の音楽家の川上ミネさんの言葉と音楽紹介に心底撃たれた。この人は、世界中を歩いてありとあらゆる音楽を聴いてきたが、自分の求めていたものはアイヌの人々のそれであったというのだ。評価は分かれるだろうが、アイヌを無視し続けてきた日本人の耳にはこたえるものといえよう。そんなことをも、この映画を観て、ラジオを聴いて感じさせられた。(2023-8-18)

 

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