サスティナブル・ツーリズムをめぐる公開講座に参加して

「これからの革新的な企業経営に求められる高度な専門的知識とグローバルな視点を備えたプロフェショナルの養成を目指す」ー関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科ビジネススクールが、こう掲げた公開講座をさる11月10日に同大学梅田キャンパスで開きました。これは、大同生命保険株式会社の協力を得て開催されたもので、「サスティナブル・ツーリズムの展開と地域創生」がテーマ。地域の活性化戦略として注目されている「観光まちづくり」にスポットをあてた、実にタイムリーな企画でした。先に講演要旨をご披露しましたように、私は講演者のひとりとして登壇し、約50分間「淡路と瀬戸内海をつなぐ全域観光戦略」とのタイトルで話す機会を得た次第です■この講座は兵庫県参与やらテレビのコメンテーターを務める一方、企業の社外取締役をしたり、各種講演を随所で展開する佐竹隆幸同大学経営戦略研究科教授の肝いりで開催されたもの。同教授は、私の講演のほかに、有馬温泉御所坊の金井啓修社長の講演のコーディネーターも務める一方、パネルディスカッションのコーディネートもされるという八面六臂の活躍ぶり。同大学の看板教授の面目躍如たるものがありました。私のような老政治家がなぜこうした陽のあたる場所に登場出来たのでしょうか。一重に佐竹教授の引きがあったからですが、実はかなり以前から私はこの人を注目していました。衆議院議員引退後に観光事業へ着手した私は、冒頭に記したような佐竹先生の狙いと期せずして合致する機会を得るとの幸運を掴んだと言えましょう。人生の出会いは、まさに異なもの味なものというほかありません。この日の講演で、つい興が乗ってしまった私が予定時間をオーバーして楽しく話せたのも、稀代のスピーチ名手のコーディネートのお陰です。私の講演に対して、「なぜ姫路の人である貴方が淡路島に関心を持ったのか」「瀬戸内海島めぐり協会が深く関わった淡路関空ラインが挫折したことになぜ触れなかったのか」など核心を衝く質問を頂いたことは有難いことでした■講座の華は、パネルディスカッション。『「地域のタカラ」を活かす!これからの観光まちづくり』をテーマに、5人のパネリストの競演となりました。兵庫県副知事の金澤和夫氏を筆頭に、たつの前市長の栗原一氏。神戸山手大学教授の西村典芳氏、株式会社ポートピアホテルの境田司副総支配人、勝瀬典雄県立広島大学客員教授らが、コーディネーター・佐竹教授と共に交わされた議論は、まことに聞き応えのあるものでした。この5人はそれぞれの分野の第一人者です。金澤、栗原両氏は、自治体行政における観光政策と具体的な地域観光事例を披瀝。西村教授は、ヘルスツーリズム研究というユニークな角度から、具体的に健康寿命を生きる方途を提示。境田副総支配人はホテルを中核としたMICE戦略の在りようを展開。勝瀬氏は、民泊、農泊を活用した地域連携という、まさに地の底から沸き立つような生きたケースを惜しげもなく語ってくれました。パネリストの発言の合間に発せられた、適宜適切な佐竹教授の助言、解説は絶妙な効果を発揮し、聞く者を和ませ、その理解を深める役割をはたしていました。参加者は大いなる刺激を受け満足したことは間違いありません■会場には関学の教授陣を始め、様々な専門家も顔を見せていました。例えば、経営戦略研究科の教授で公認会計士の石原俊彦氏(商学博士)には驚きました。私の住む姫路市内で今街角の至る所に貼られた連名ポスターの一方の主だったからです。明年の市長候補である飯島義雄氏(実はこの人、関学の客員教授)を推薦しておられるお立場の方です。また、辻調理師専門学校の指導者・久保昌弘氏(日仏経済交流会理事)とも嬉しい出会いをすることが出来ました。この人はつい先程、島根県の「和食」グループを率いて訪仏した勝瀬教授と昵懇の間柄で、その卓越したお力をかねがね耳にしていたからです。淡路島へのインバウンドで種々の連携をしたいと私から申し出ることができました。講座終了後に会場をホテル阪急インターナショナルに移しての懇親会は、まさに異業種交流会のるつぼと化しました。大阪を中心に活躍する同大学経営戦略研究科に学ぶMBAを中心にした多士済々の人材群。お一人おひとりと名刺交換し、おはなし出来ました。いちいちお名前、内容をあげませんが、大いなる収穫でした。それもこれも佐竹教授の永年に亘るご苦労の賜物と感じつつ、確かなる手応えを胸に会場を後にしました。(2018-11-18)

 

「日常の奇跡」を自覚するー「熊森協会」顧問になった安藤誠さん

恥ずかしながら、安藤誠なる人物を全く知らなかった。米国のスミソニアン博物館2018年グランプリを受賞された動物写真家だということを、芦屋市で開かれた講演会に行って初めて知ったのです。この講演会は、彼が日本熊森協会の顧問に就任されたことを記念して、去る10月30日に開かれたもの。それに、同じく顧問をしている(もう20年近い)私も参加したのです。その場に行って、彼が写した写真や映像を見ながら話をされるのを聴いて、本当に感動しました。これは凄い、本物の人物だと強く感じいった次第です。1964年札幌市生まれと言いますから、現在54歳。釧路湿原を抱く鶴居村に移り住んで31年。広大な自然に囲まれた地に、ウイルダネスロッジ・ビッコリーウィンド(宿泊施設)を開業されています。野生動物の生態を写真にすることを主たる仕事にしながら、釧路湿原、阿寒摩周、知床の三つの国立公園やアラスカでネイチャーガイドをしたり、講演旅行をされているとのこと。今回も芦屋まで北海道からバイクで来て、18都市での講演を続けながら、北海道へ戻るということでした■講演会でまず感動したのは、本物に触れて欲しいというメッセージでした。世には様々なものが存在しているが、中々直に認識することがない、人づてや、ネットや映像を通じてということが多いが、そうした間接的認識に頼るのではなく、出来るだけ生に接触せよといわれるのです。それはそうでしょう。熊、鶴やフクロウと会話をしている様子(彼の話術のなせる技でしょうが、本当に会話していると思わせて余りあります)の映像は圧巻でした。さらに、彼のいう「日常の奇跡」という言葉にも大いに感じました。つまり、我々は日々の暮らしをごくごく当たり前のようにやり過ごしていますが、一つ一つがかけがえのない一瞬の集積であり、奇跡といっても過言ではないことを自覚すべきだと言うのです。確かに今ここでの出会いや出来事は二度と再び経験できないことがほとんどです。それを奇跡と捉えることはいかにも重要だと思えました■ところで、熊森協会については、日本最大の環境保護団体とはいえ、まだまだ認知度は低いようです。私も顧問と書いた名刺を人様に見せるたびに「なんですか、これ」っていつも訊かれます。先日その熊森協会の室谷会長はじめスタッフ3人と一緒に国会へ要望に参りました。狙いは森林環境税で放置人工林を天然林へ再生しようということを関係議員に伝えることでした。かねて、有力議員を紹介して欲しいと頼まれていましたが、ようやく11月2日に井上義久公明党副代表、石田祝稔政調会長と会えることになり、揃って出かけました。併せて自民党の中谷元代議士、また江田康幸衆議院総務委員長(公明党所属)にも会うことができました。濱村進農水政務官(公明党所属)は秘書さんの対応でしたが、皆忙しい時間をやりくりしてくれ大いに助かりました■戦後の拡大造林政策のため、天然林を伐採し、奥地深くまで植えまくったスギやヒノキの人工林。今や大部分が間伐も出来ず、伐り出しも出来ずに放置されたままで荒廃する一方です。こうした放置人工林の内部には、日光が入らないので、下草がなくなってしまい、雨で表土も流出。保水力は低下し、谷川の水量も激減。生き物の棲めない死の森となってしまうと共に、豪雨のたびに山が崩れ、大変に危険な状態です。今や昔と違って木材需要が減少の一途をたどっていることは周知の通りです。人工林の面積は三分の一程度でもよく、後の三分の二は自然林に戻しても、林業にとって全く問題ないことを林野庁もようやく認めるに至っています。ですが、油断していると、天然林の自然再生は覚束ない可能性も十分にあることから、最後まで目を光らせて欲しいと注文したしだいです。会ってくれた議員の皆さんはそれぞれ尽力を約束してくれました。ありがたいことでした。(2018-11-11)

淡路と瀬戸内海を繋ぐ全域観光戦略ー関学での講演要旨(下)

今、私が専務理事を務める一般社団法人「瀬戸内海島めぐり協会」は、誕生して3年ほどになります。会長には、万葉集の権威で国文学者の中西進先生、副会長にはヨットで世界一周の堀江謙一さんをお願いしました。運営を貫くコンセプトは、日本の原点・瀬戸内海を船でぐるっと旅するというものです。このおふたりの講義を聴きながら瀬戸内海の島々を船旅するといったイメージに私たちスタッフは酔いしれました。始めた年には、ちょうど瀬戸内国際芸術祭も予定され、直島や小豆島、犬島をめぐりそのお祭りとジョイントする企画を設定、観光客の皆さんには大いに喜んで頂けました。この頃はまだ国内の客が大半です。その後は、まず瀬戸内の東の入り口に位置する淡路島の三つの港をめぐる企画に重点を移しました。明石港から津名港、洲本港を経て福良港へと船を走らせる。海から島への眺望には息を呑んだといっても過言ではありません。島めぐりの船旅の魅力は沿岸に出来るだけ接近することだと思います。ただ海を走るだけではなく。それぞれの港で下船して、伊奘諾神社など地域の名所、旧跡を訪れたり、御食国・淡路のうまいものを満喫して、人形浄瑠璃を鑑賞して、世界遺産を目指す鳴門の渦潮を見たりするコースはなかなかのものです。

一方、これからの大阪、関西、中・四国を考えた場合、船は必ず必要となると見込み、大阪湾ベイエリアを東瀬戸内海の出発海域として、湾内をぐるっと周り、和歌山、徳島、姫路、岡山、香川といった瀬戸内の周辺地域を淡路島をハブにして、インバウンド客たちが瀬戸内沿岸地域を訪れるといった構想を持つに至っています。その実現に向けてこれから様々な実績作りに邁進し、画期的な日本版・淡路島DMOとして樹立、インバウンド展開に貢献していきたいと考えています。

さらに今、ここにおられる地域経済や経営のプロフェショナル・佐竹隆幸先生のアドバイスもいただきながら、二つの構想の実現に取り組むべく秘策を練っているところです。未完成ながら、ここでその全貌の一端をご披露します。一つは、内閣府や兵庫県のバックアップのもと、具体的なインバウンド客の取り込みにおける発想の転換です。従来の観光営業は、ともかく日本に来て欲しいという大雑把な網打ちで団体、グループ客を受け入れてきました。しかし、そうしたインバウンドもひと息つき、違った流れになるはずです。これからは、もっときめ細かく外国人観光客のニーズを予め察知し、向こう側の要望を主体にして、受け入れルートや様々なイベントを、相手の好みに応じて用意するという対応を考えていく必要があると考えています。これまでに築いた手持ちのありとあらゆる人脈をフル動員、駆使してインバウンド増を目指す構えです。

本取り組みでは、本年度中に初の取り組みとして、まず台湾、シンガポールのエージェントへのダイレクト企画の提案営業に参ります。この取り組みは、今後3年間、内閣府、兵庫県の支援により企画した取り組みとして進めて参ります。

もう一つは、淡路島DMO戦略の要として最も重視しているもので、新たに観光の営業に取り組む人材を育成する仕組みを作ろうということです。政府が取り組む地域起こしのための政策展開には、地域おこし協力隊、緑のふるさと協力隊、ふるさとプロデューサー派遣事業などといったものに、実に多くの若者が参画しています。今の若者は、本当に身につくことなら、その価値と社会的評価を求めて自ら投資することを厭わないのです。そうした若者を対象に、まずは受け皿組織の構築に向けて動きたいと考えています。一つは、国、県、淡路三市を始めとする参画自治体による、政策の選定や補助事業の模索です。二つは、地元地域の関連企業による就業・体験・研究・教育フィールドの提供です。三つは、アソビュー(株)や各種旅行業者からの観光事業ツールの提供です。四つは、関西学院大学、神戸山手大、産学公人材イノベーション推進協議会、県立広島大MBA、徳島商業、沖縄水産高校、岩倉高校などの大学や高校といった各種教育機関による教育システムの提供、活用です。こうしたものを使って、実践研究をテーマにビジネスモデルの構築と実際の事業活動を促進するために、アクションプランとカリキュラムをつくり、地域に点在する空き施設や船の上も使ってのサテライト教室を作っていきたいと考えています。

この取り組みに関しては、来週の月曜日に、国土交通省、観光庁へ先ほど述べた徳島、沖縄、東京の高等学校の先生方とともに、私が国の政策への提案に参る予定になっています。実は私は数年前に、徳島商業の生徒たちが懸命に淡路島の観光発展に向けて取り組んでいる姿をこの目で見ました。学校の中に擬似会社組織を作って、女子高生が社長になって、お土産ものを生み出そうと知恵をひねっているのです。感動しました。これを見てから、職業人教育の原点は、専門性を教育する大学に進学する前に、培われるべきだということを痛感しました。これからの日本の10年先を見据えて、観光人材の育成はまずは高校生からだと確信するに至っています。

一方で、現実には明2019年の世界ラクビー大会の開催、2020年のオリンピック、パラリンピック、2021年のワールドマスターズゲームズイン関西などを経て、大阪万博の誘致がもくろまれる2025年と、多数のインバウンドが来ると想定されるイベントが目白押しです。その流れに対して、一過性の対応や、また場当たり的なおもてなしではなく、観光客のニーズに応じた的確な受け入れをしていきたいと考えます。淡路をハブに、近畿、中・四国にインバウンドを展開する「FROM淡路」の観光戦略こそ、次代の流れを決定的に決めるものと確信して、これから邁進していきたいと考えています。

最後に、DMO候補一般社団法人「瀬戸内海島めぐり協会」は広く皆様方に本活動へのご賛同を呼びかけて参りたいと存じます。合わせて、広く国、各自治体、企業にもご協力をいただければと存じます。そして今日ここにお越しの皆様方にも幅広くご協力、ご参画いただければ、幸いに存じます。(一部修正2018-11-1=この項終わり)