高市早苗第二次改造内閣が発足をした。その顔ぶれを見て地味で新鮮さに欠けるとか、東大出身や外国の大学出身(京大を含めて)などいわゆる最高級大卒者がほぼ半分を占めていることなどが指摘されているが、最も私が関心を持つのは林芳正氏が閣外に出たことである。石破前首相と並び「反安倍」のラベルを貼りたくなるものの、この人の場合は保守本流と位置付けられる旧宏池会の出身だけに、意味合いが少し違う。尤も、自民党政治の根本的転換を願う者からすれば、今の高市内閣の長期化を阻む勢力の台頭を望みたいだけ。対抗馬として頑張って欲しい。妙な「天下泰平的安定化」は御免被りたいのである◆宏池会といえば、吉田茂元首相のもとに集まった官僚出身者のかたまりがルーツである。その「吉田茂」を岳父とするのが麻生太郎氏であって、唯一の派閥「麻生派」を存続させている。もはや旧派閥に「昭和の面影」はないと言っていいものの、「真正保守」をめぐる議論は引きも切らない。昨今の論考で私が注目するのは、先崎彰容氏(社会構想大学院大学教授)がその著『知性の復権━「真の保守」を問う』で麻生太郎氏をこれ以上ないほど礼賛していることだ。先崎氏といえばBSフジの人気番組プライムニュースでの、伊吹文明元衆院議長や気鋭の論客との対談が注目されているが、この本での「麻生持ち上げ」には驚くばかりだ。同著後半の「『戦間期』からの教訓」の章での、麻生氏の著作『自由と繁栄の孤』(2007)からの引用を踏まえての議論は実に不思議な印象を与えてくれる◆かつて私も外務委員会で直接ご本人に対して、この構想を些かヨイショしたものだが、どちらかといえば〝粋なネーミング〟に対してだった。麻生氏はその冒頭で「今や日本人は、新たな自画像を持ちたいと切望しているのだと思います。自分とは何者か、改めて得心のいく説明をつけたがっている」と切り出したあと、外交が「日本人に新しいアイデンティティーを与える業となりつつある」とした。その上で「国民に穏やかで静かな自尊心を持たせること」を、「自覚して目指すべき時」だとしている。そのくだりを引用した先崎氏は、「麻生氏自身が、自分の人生を自問自答した結果、このような問題意識にたどり着いた」と指摘する一方、「対米従属に甘んじるのではなく、みずから働きかける側に立つことを提案」している。ここはまさに戦後日本の生き方を決めた張本人の直系後継者である麻生氏への言だけにより重く響く◆あれから20年。「百年ぶりにもう一度世界全体を俯瞰せねばならない時代」の今、「思想家的側面」を匂わせた麻生氏に思いを聞いてみたい。実は、似て非なる「自由で開かれたインド太平洋戦略構想」が故安倍晋三元首相によって2016年8月に唱えられて10年が経つ。日本外交の系譜を追うと、麻生氏の発想したものと安倍氏の提起したものは微妙な違い(前者は大陸中心で関係国が多め、後者は海洋が主で関係国はやや少なめ)があるものの、両者間で優劣が競われたとは聞かない。つい先頃高市首相が訪問先のベトナムで「進化するインド太平洋構想」との言い回しを用いていた。つまり両者を包み込んだ上で、時系列的には後発の安倍氏の戦略構想を現時点での日本外交のベースに置いているものと見られる。皇室典範問題や消費税問題など重要課題での動きが何かと注目されている麻生氏。先崎氏の〝深いたくらみからの評価〟に対して、真の意味での「知性の復権」で応えて欲しいと願う。そうでなければ存在の意味がないと思うのは私だけだろうか。(2026-9-20)
(2026-9-20)