起業を目指す元気な若者たちとの出会い

いい大学を出て、潰れそうにない大きい会社に入るーひと時代前の若者の志向はこれだった。いや、ふた時代ももっと前のことかもしれない。いわゆる「親方日の丸」 的傾向に支配されていたのは。今やそうした憧れは全くといっていいほど見いだせない。かつての就職先の人気上位にあった銀行もメディアも今では斜陽産業。大きい企業だからいいということはなさそうだ。いやそれをいうなら国家官僚も弁護士業も歯科医も憧れの職業とは言い難くなってきている。そんな状況に呼応して新たな会社や業種を起こすという「起業」が若者たちの関心事であるようだ■先日、知人のNさんが主宰する、私にとってはなかなか珍しい会合(「コモンズくつろぎBAR」)に出席した。起業を目指す若い人たちが集まるので、何人か紹介したいので来ないかと誘われたのである。Nさん自身がまたユニークだ。事務所のシェア化を進めたり、モノを寄付する仕組みを作ったり、古民家活用を展開するなど旧来的な思考から逸脱した事業運営に幅広く取り組む女性だ。かねて私が親しくしているビジネスファーム研究所のKさんとはまた一味違う。今回の会合のお目当て、というか人寄せパンダ役は、渋沢健さん。「金融と社会課題の解決をつなぐ投信会社の会長」との見出しで、つい先日朝日新聞の「ひと」欄で紹介されたばかりの人である。ちょうど新聞にでた翌日にお出会いした。コモンズ投信株式会社の会長であるが、実は日本資本主義の父とうたわれる、あの渋沢栄一の高孫にあたる■社会全体にいま横たわる課題解決に向かって立ち上がる人々のために、必要な資金を循環させる流れを作ったという。毎年10月には社会起業家に事業内容と思いを語らせるフォーラムを開催している。また、成長のための資金を循環させ、利益を追求する営利活動とNPO やNGOなどが担う非営利活動をつないでいこうとする試みにも挑戦している。画期的な取り組みをされるひとにしては極めて穏やかで静かな雰囲気を湛えた好感度抜群の紳士だった。いつもながら一方的に喋ってしまう癖のある私の話を、しっかりと受け止めて頂いた。楽しい会話をすることができたが、早速数日後には渋沢さんの著名な「シブサワレター」なるものがメールで届いた。そこには、長期投資とは「未来を信じる力」です、との言葉が添えられていた■渋沢さんのお話の後で、少なからぬ若者たちと名刺交換したり、会話を交わしたが、なかでもS君という25歳の青年は実にパワフルで魅力的であった。台湾出身の整形外科医の父と歯科医の母のもとに京都で生まれた日本人。この3月に大阪医科大を卒業したばかりだが、予防医療普及協会の理事や医療ベンチャー協会の事務局の仕事もしながら、株式会社の代表取締役も務めるという。それでいて、名古屋の病院で勤務医をしているとか。まさに正体不明の”怪人”である。「これ読んでください」と『ロハス・メディカル』なる小冊子を差し出されたので、見ると、元参議院議員で医師の梅村聡さんと彼との対談「あの人に会いたい」が掲載されていた。その肩書には「チュージング・ワイズリー・ジャパン発起人」とある。いやはや驚いた。あれもこれもに首を突っ込んでいるエネルギッシュそのものの若者だ。これから長い付き合いになりそうな予感がする。(2018・4・29)

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