「がん難民はどうするか」との坂口力先輩の講演を聴いて

「がん難民はどうするか」-最初、「がん難民をどうするか」の間違いではないかと思いました。坂口力元厚生労働大臣が元議員の会合で講演された際のタイトルです。冒頭、ご本人から、がん難民の取り扱いをどうするかよりも、がん難民自身としての対応をどうするかとの観点からの話をしたいとの講演趣旨が披露され、納得しました。さすが、坂口先輩らしい視点で、体験を織り交ぜての聴きごたえある中身でした。同氏は今から8年前に大腸がんを患われ、小腸と大腸をあわせて30センチ切られたとのこと。余命3年と言われたそうです。昭和9年のお生まれだから、御年83歳。年齢相応の雰囲気を漂わせられてはいるものの、演壇での講演ぶりは現役時代と全く変わりません。ご自分で作成されたと思われる映像を縦横無尽に駆使ししての展開は、お見事という他ありませんでした▼お話では直接的には触れられませんでしたが、現在は東京医大特任教授をされており、「統合医療研究」に従事されているご様子。ご自身の闘病にあっても抗がん剤を使わずに免疫療法を受けたとのこと。この日の講演でも随所に、代替医療をめぐる話題が顔をのぞかせていました。とりわけ興味深かったのは、アメリカでの代替医療の実態。年間1億ドルかけての研究が進められており、がん患者の45%が代替医療を取り入れているといいます。一人平均57000円もの出費との統計報告もあり、健康食品が主で主治医には相談しないというケースが専らのようです。しかし、日本では、➀三大標準医療(外科手術、抗がん剤、放射線)に取り組んでいる医師の多くは、代替医療を頭ごなしに否定することが多い➁三大標準医療でがんが完治しないから、代替医療へ患者は走る。しかしながら反対する医師がなぜか多い⓷代替医療について、知識のない医師も多く存在するーという状態が続いています。坂口氏は「アメリカは効果があって副作用がないものには柔軟だ」と指摘したうえで、日本も治療の幅を広げ、代替医療も含めて併用療法を認めるべきで、社会全体で相談する仕組みを作る必要を強調されたのが印象に残りました▼また、「がん難民はなくなるか」という課題については、ポイントとして「医師と患者は治療法を話し合うことになっても、医師は最後の決定権を手放せるか」と力説。坂口氏の場合、主治医が「抗がん剤をつかうかどうかは自分で決めよ」と言われた結果が、免疫療法を選んだことに結びついたことを明らかにしていました。さらに、優れた治療法を確立したひとが社会から法の名において排除されたケースが多数あるとのエピソードには、全く初耳だっただけに驚かされました。主題である「がん難民はどうするか」については➀医師はあなたの人生まで考えて治療をしてくれるわけではない➁自身や家族、社会における立場を考えて治療方法を決める必要があり、医師にいうべきことは明確に伝えるべきである⓷がん治療の選択肢は大幅に広がり、完治の希望が生まれてきたーとしたうえで、「人生は残された時間が重要である。それは諦めることではなく。残された人生に希望を見出すことである」と強調されていたのは胸にあつく響きました▼「がん難民をどうするか」をめぐっては、「患者の意見を充分に聞き、家庭環境、社会環境を考慮して、医師を含めた各分野の専門家が集まり、どのような治療が望ましいかについて協議し、決定する体制を作る」ことを提案されました。その理由として、「医療としての最善の方法が、患者の残された人生にとって、最善とは言い難い場合があるから」だ、と。なかなか現状では困難ではないかと思うものの重要な指摘だと言わざるを得ません。最後に、「がんは人間に考える時間を与えてくれる疾病である。自分の人生を生きがいのあるものにするための期間をがん患者は要求している」とする一方、「研究者に告ぐ」とことわったうえで「根治が難しくても、がんと共存の時間を延長する研究も、するべきではないか」と強調されました。まさに遺言であるかのごとく重く聴いたのは私だけだったでしょうか。政治家への信頼が薄れいくことが強調されがちな今日、まことに素晴らしい先輩を持ったと誇らしい思いに駆られたしだいです。                                      (2017・6・8)

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