【17】僕の新刊本『ふれあう読書』(下)の読みどころ━━自然科学者編/7-4

 前回は本の中身というよりも「他生のご縁」の拡大版のようになってしまいました。上巻を出版してから1年余。それなりに人気を集めているのは、著者と僕とのエピソードのようですから、仕方ないかも。あまり気にせず、今回も続けます。

 自然科学者編は、8人が登場していますが、大雑把に分けて、前半の4人が泰然自若としたおおらかな性格の研究者タイプ。後半4人がどちらかといえば、自身の原理原則に相手を合わせようとする厳格な指揮官タイプ。勝手な僕の見立てを許していただくと、そうなります。まずは伏見康治さんから。

⚫︎泰然自若としたおおらかな研究者タイプの4人

 伏見さんについては本文にも書きましたように、日本学術会議議長をつとめられた原子核物理学者。今考えると、よくぞこういう巨大な自然科学分野の大物を公明党は政治の世界に引っ張り出したものと思います。結局一期6年(1983-89)で参議院議員を辞められ、今日後継の流れの痕跡すらないことは、学者の政治家への登用が成功しなかったケースなのかも知れません。

 伏見さんが引退された4年後に政治家になった僕としては、先輩たちの先見性を推奨するくらいがせいぜいですが、国家的見地からは惜しまれます。伏見さんと短い時間だけどお付き合いをした僕が、議員を勇退された後の伏見さんと付き合っていればなどと、後悔しても遅きに失するというものでしょう。

 帯津良一さんについては一度講演を聞いただけですっかりファンになりました。作家・五木寛之氏との一連の健康対談を始め、その著作の殆どを僕は読んでいます。生き死にのあり方から、リアルな健康指南ぶりの卓越性はつとに知られていますが、法華経へのご理解は希薄なように見受けられます。一度お会いして〝お手合わせ〟していないと、また後悔する羽目になりそうな予感がするのですが、さて。

 網本義弘、福岡秀興のお二人は、この本での登場をとっても喜んでくれました。網本さんは大病を患われ、このところ入院状態が続いています。そんな中で、先日も母校への図書贈呈の労をとってくれました。僕としては校長始めルートは幾らでもあるのですが、先輩のご好意に甘えたしだいです。福岡さんからは、胎児期の栄養と疾患の関係をめぐって国際学会の招聘に成功したとの嬉しいニュースが入ってきました。さてどうなるか。僕としては彼の研究が更に前進を示されるよう強く望んでいるものです。

⚫︎原理原則で挑む厳しい指揮官タイプの4人

 さて、ノーベル賞受賞者の大隅良典さんからの4人はいずれも厳格な雰囲気を湛えたリーダーに見えます。ただし、大隅さんは一度講演を聞いただけ。しかも小中高校生ら子どもを中心にした会合。で、なぜ泰然自若のグループに入れなかったのでしょう。その理由はただ一つ。「いま議論の虚しさを感じさせる場面は国会かもしれない。議論が破綻していることは誰の目にも明らかだ。日本の政治の劣化は著しい」というくだりを本の中に発見したからです。これ一つで僕には十分な彼の厳しさが伺えるのです。

 あとの森山まり子、荻巣樹徳、中川恵一のお三方はいずれ劣らぬ骨太な精神の持ち主。勿論お人柄は皆さん優しく、僕の〝仕分け〟に異論を唱えられるかもしれません。しかし、ご自身の信念を貫かれる姿勢において微塵も妥協しない場面を幾たびか見聞きしてきた僕の確信は、断じて揺るがないのです。

 森山さんについては先日もある著名な政治家が「森山さんは本当に妥協ということを知らない、まるで宗教団体の指導者みたいだ」と語っていました。聞いてた僕は吹き出しそうになりました。この政治家、宗教団体云々は決して僕の周辺の人を指しているのではありませんし、例え方は適切とは思えません。ですが、彼女と幾たびか熊と森の関係を語り合って、断じてブレない姿勢には、つくづく呆れてしまった経験があるのです。もう少し、引くことをしないと、合意形成は難しいのにとしばしば思います。それでいて、その頑固さにはなんとも言えぬ純粋な精神が張り付いていて清々しさをも感じるのです。

 その純朴そのものの優しさと厳しさは、荻巣樹徳さんにも共通しています。荻巣さんとは長い付き合いがあり、幾度か議論もさせていただきました。紛れもない植物学における天才であり、その存在は「日本の宝」だと思います。過去の種々の議論の中で、昨今の世間の俗物的風潮の蔓延に異議を唱えられる時の厳しさたるや、怖いほどの迫力を感じます。

 それは中川さんも同じだと思われます。ただ、世間一般が天才的感覚を持った科学者や医学者の厳格な姿勢を分からぬことが多いのかもしれません。近寄りがたい怖さを感じる旨の発言を散聞することがあります。そういう人だとわかっているつもりの僕が、今回取り上げた『がん練習帳』の面白さにはたまげるほどでした。読まれた人にはどういう意味かお分かりでしょう。実に見事な両面性ぶり発揮とは僕の誤解でしょうか。(2025-7-4)

 

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