「核兵器廃絶」への遠すぎる道➄ー注目されるSGIの地道な闘い

先日、アメリカの首都ワシントンで、米SGI(創価学会インターナショナル)が「核兵器政策の根本的な変革を目指して」と題する会合を開いたとの報道に接した。その会議では、国連で核兵器禁止条約制定に向けた交渉が進んでいることを受け、学者や専門家、市民団体の代表らが活発な意見を交換したという。四つのセッションでは、1)深まる核戦争の危機について2)核兵器の人道上の影響について3)宗教間の協力や青年の役割をめぐって4)核兵器政策の根本的変革に向けてーなどがテーマとなった。プリンストン大学・科学と地球安全保障プログラム共同ディレクター、グローバルゼロ共同創設者、軍備管理協会事務局長らの基調報告や広島の被爆者の体験談などを聴いたうえで、参加者相互の活発な議論が展開された。こうした地道な実践が持つ意味を考えるにつけても、この団体の「核廃絶」に向けての歴史的な経緯に思いを致さざるをえない▼創価学会の戸田城聖第二代会長が1957年に行った「原水爆禁止宣言」がその活動の原点をなす。「(生存の)権利をおびやかすものは、これ魔ものであり、サタンであり、怪物であります」との発言を受けて、その弟子として第三代の池田大作会長(現SGI 会長)が60年後の今日に至るまで、営々と「核廃絶」に向けての闘いを展開してきた。これは生命の尊厳を説く仏法を基調とした、草の根の平和運動として遍く知られている。核廃絶のための展示の開催から始まって、被爆者の証言を収録した反戦出版物の刊行、各種の講演会、セミナーの開催や意識調査や署名活動など、日本から世界に向けての民衆に根差した運動としてうねりを高めている。一方で、毎年1月に発表される池田会長によるSGI提言は、微に入り細にわたって、ありとあらゆる角度からの「核廃絶」に向けての具体的な提案をしてきている。一例を挙げると、2006年8月に同会長は核兵器廃絶に向けた民衆の力を結集する目的で、「核廃絶に向けての世界の民衆行動の10年」を国連で制定しようと提言をした。一般民衆や市民社会が主役になって政策責任者に核兵器廃絶を強く求める活発な世論のうねりを起こすことを狙いとしたものであった。この提言を受けて、SGIは2007年9月に「民衆行動の10年」のキャンペーンを開始。これは、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN) などの様々な国際的な運動と連携しながら、核兵器禁止条約の実現に向けて行動してきた。本年9月でちょうど10年、区切りを迎える▼先日、国連での交渉会議を前に英字紙「ジャパンタイムス」のオピニオン欄に池田SGI会長の寄稿文(本年3月1日付け)が掲載された。そこでは、唯一の核被爆国日本が国連での交渉会議で積極的なとりまとめに貢献すると共に、交渉会議を力強く支持する市民社会の声を届け、核兵器禁止条約を”民衆の主導による国際法”として確立する流れを作り出すべきだと呼びかけている。この主張に多くの点で賛同している黒澤満大阪大学名誉教授(元日本軍縮学会会長)が、核なき世界を築くための方途として、様々な国々やNGO(非政府組織)が提起している具体的な道筋を挙げており、興味深い。それは、1)核兵器国が中心になって核兵器禁止条約を締結し、段階的な廃絶と検証を目指す2)核兵器国の参加がなくても、まず核兵器の使用と保有を禁止する条約を締結する3)地球温暖化防止のための「気候変動枠組み条約」のような形で、まず条約の枠組みをつくり、詳細は議定書で規定する4)実際的な措置を積み上げていく漸進的なアプローチ5)可能なものから、一つずつ取り組みを進めるステップ・バイ・ステップ方式の五つだ▼当面は1)は到底無理で、2)がうまくいくかどうかが焦点だろう。そのためには、やはり日本の八面六臂の活躍が必要となってくる。小泉純一郎元総理や細川護煕元総理が「原発ゼロ」に向けた活動を展開し話題を呼んでいることは周知のとおりだが、核廃絶に向けても共同行動を起こしてほしい。この問題についてすべての団体が党派を超えて一致団結して立ち上がることが切に望まれる。「愚行の葬列」に切れ目を作り、大きく希望を持たせるのは唯一つ世界各地で広まる「賢者の陣列」だと思いたい。(この項終わり=2017・6・3)

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