淡路と瀬戸内海を繋ぐ全域観光戦略ー関学での講演要旨(下)

今、私が専務理事を務める一般社団法人「瀬戸内海島めぐり協会」は、誕生して3年ほどになります。会長には、万葉集の権威で国文学者の中西進先生、副会長にはヨットで世界一周の堀江謙一さんをお願いしました。運営を貫くコンセプトは、日本の原点・瀬戸内海を船でぐるっと旅するというものです。このおふたりの講義を聴きながら瀬戸内海の島々を船旅するといったイメージに私たちスタッフは酔いしれました。始めた年には、ちょうど瀬戸内国際芸術祭も予定され、直島や小豆島、犬島をめぐりそのお祭りとジョイントする企画を設定、観光客の皆さんには大いに喜んで頂けました。この頃はまだ国内の客が大半です。その後は、まず瀬戸内の東の入り口に位置する淡路島の三つの港をめぐる企画に重点を移しました。明石港から津名港、洲本港を経て福良港へと船を走らせる。海から島への眺望には息を呑んだといっても過言ではありません。島めぐりの船旅の魅力は沿岸に出来るだけ接近することだと思います。ただ海を走るだけではなく。それぞれの港で下船して、伊奘諾神社など地域の名所、旧跡を訪れたり、御食国・淡路のうまいものを満喫して、人形浄瑠璃を鑑賞して、世界遺産を目指す鳴門の渦潮を見たりするコースはなかなかのものです。

一方、これからの大阪、関西、中・四国を考えた場合、船は必ず必要となると見込み、大阪湾ベイエリアを東瀬戸内海の出発海域として、湾内をぐるっと周り、和歌山、徳島、姫路、岡山、香川といった瀬戸内の周辺地域を淡路島をハブにして、インバウンド客たちが瀬戸内沿岸地域を訪れるといった構想を持つに至っています。その実現に向けてこれから様々な実績作りに邁進し、画期的な日本版・淡路島DMOとして樹立、インバウンド展開に貢献していきたいと考えています。

さらに今、ここにおられる地域経済や経営のプロフェショナル・佐竹隆幸先生のアドバイスもいただきながら、二つの構想の実現に取り組むべく秘策を練っているところです。未完成ながら、ここでその全貌の一端をご披露します。一つは、内閣府や兵庫県のバックアップのもと、具体的なインバウンド客の取り込みにおける発想の転換です。従来の観光営業は、ともかく日本に来て欲しいという大雑把な網打ちで団体、グループ客を受け入れてきました。しかし、そうしたインバウンドもひと息つき、違った流れになるはずです。これからは、もっときめ細かく外国人観光客のニーズを予め察知し、向こう側の要望を主体にして、受け入れルートや様々なイベントを、相手の好みに応じて用意するという対応を考えていく必要があると考えています。これまでに築いた手持ちのありとあらゆる人脈をフル動員、駆使してインバウンド増を目指す構えです。

本取り組みでは、本年度中に初の取り組みとして、まず台湾、シンガポールのエージェントへのダイレクト企画の提案営業に参ります。この取り組みは、今後3年間、内閣府、兵庫県の支援により企画した取り組みとして進めて参ります。

もう一つは、淡路島DMO戦略の要として最も重視しているもので、新たに観光の営業に取り組む人材を育成する仕組みを作ろうということです。政府が取り組む地域起こしのための政策展開には、地域おこし協力隊、緑のふるさと協力隊、ふるさとプロデューサー派遣事業などといったものに、実に多くの若者が参画しています。今の若者は、本当に身につくことなら、その価値と社会的評価を求めて自ら投資することを厭わないのです。そうした若者を対象に、まずは受け皿組織の構築に向けて動きたいと考えています。一つは、国、県、淡路三市を始めとする参画自治体による、政策の選定や補助事業の模索です。二つは、地元地域の関連企業による就業・体験・研究・教育フィールドの提供です。三つは、アソビュー(株)や各種旅行業者からの観光事業ツールの提供です。四つは、関西学院大学、神戸山手大、産学公人材イノベーション推進協議会、県立広島大MBA、徳島商業、沖縄水産高校、岩倉高校などの大学や高校といった各種教育機関による教育システムの提供、活用です。こうしたものを使って、実践研究をテーマにビジネスモデルの構築と実際の事業活動を促進するために、アクションプランとカリキュラムをつくり、地域に点在する空き施設や船の上も使ってのサテライト教室を作っていきたいと考えています。

この取り組みに関しては、来週の月曜日に、国土交通省、観光庁へ先ほど述べた徳島、沖縄、東京の高等学校の先生方とともに、私が国の政策への提案に参る予定になっています。実は私は数年前に、徳島商業の生徒たちが懸命に淡路島の観光発展に向けて取り組んでいる姿をこの目で見ました。学校の中に擬似会社組織を作って、女子高生が社長になって、お土産ものを生み出そうと知恵をひねっているのです。感動しました。これを見てから、職業人教育の原点は、専門性を教育する大学に進学する前に、培われるべきだということを痛感しました。これからの日本の10年先を見据えて、観光人材の育成はまずは高校生からだと確信するに至っています。

一方で、現実には明2019年の世界ラクビー大会の開催、2020年のオリンピック、パラリンピック、2021年のワールドマスターズゲームズイン関西などを経て、大阪万博の誘致がもくろまれる2025年と、多数のインバウンドが来ると想定されるイベントが目白押しです。その流れに対して、一過性の対応や、また場当たり的なおもてなしではなく、観光客のニーズに応じた的確な受け入れをしていきたいと考えます。淡路をハブに、近畿、中・四国にインバウンドを展開する「FROM淡路」の観光戦略こそ、次代の流れを決定的に決めるものと確信して、これから邁進していきたいと考えています。

最後に、DMO候補一般社団法人「瀬戸内海島めぐり協会」は広く皆様方に本活動へのご賛同を呼びかけて参りたいと存じます。合わせて、広く国、各自治体、企業にもご協力をいただければと存じます。そして今日ここにお越しの皆様方にも幅広くご協力、ご参画いただければ、幸いに存じます。(一部修正2018-11-1=この項終わり)

 

 

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