冬の吉野で見た地域振興と高校生たちの芽生え

奈良の吉野に行ってきました。地域おこしの伝道師・榎田竜路さんが県立吉野高校の生徒たちを「鍛える」場面を見るためです。姫路から3時間もかけてわざわざ花の吉野ならぬ冬の吉野に行くのですから、我ながら酔狂だなあと呆れます。ここには過去に二度ばかり行きましたが、いずれも桜花爛漫の季節。竹林院のお風呂からの景色が絶品だったことを覚えています。今回は町が運営するバンガロー風の宿泊施設に泊まったのですが、それなりの風情はありました。3年ほど前に、淡路島で徳島商業の高校生たちを「鍛える」場面を見て以来、兵庫・市川町で、徳島・美波町で、地域おこしのための彼の仕事振りに触れてきたことが癖になってるのかもしれません。今回は吉野の高校生が「地域の良さ」を取材して映像に仕上げる前の段階で、それなりのインパクトがありました■吉野町もご他聞に漏れず、過疎化の進捗ぶりは著しく、人口減少は毎年ほぼ200人のペースで進んでいるとのこと。北岡篤町長に役場でお会いしましたが、話しの中に深刻な状況を切り抜けるための真剣な取り組みぶりが伺えました。実は町長の実兄は北岡伸一さん。政治学者であり東大の名誉教授で、国連の次席大使もされ、今はJICAの理事長です。私とは過去二度ほど憲法をめぐる読売新聞の紙上座談会でご一緒しました。その弟さんだというので、会う前から興味を持った次第です。清酒「やたがらす(八咫烏)」を製造、販売する会社の社長でもあり、酒をめぐる話題も絡んで一時間ほどの面談は大いに盛り上がりました。その町長の肝いりで、町おこしのために榎田竜路さんを活用して、「吉野杉王国」の復興や町の振興に向けての諸施策を講じているところと言います。現地でお世話いただいた産業観光振興課の椿本久志・木のまち推進室長や徳永拓主査の意気込み、真摯な姿勢にも大いに好感が持てました■吉野・大峯地域がユネスコの世界遺産に登録されて、14年余りが経ちます。高野山、熊野三山と併せた紀伊山地の霊場と参詣道がその対象です。吉野町が出しているパンフによると、この地域全体のキーワードは「文化的景観」であり、吉野・大峯地域においては「信仰や宗教、文化、芸術活動などと関連する聖山としての景観」と言い換えてもよいとしています。桜と山伏が吉野のダブルイメージですが、「山岳修行」という歴史と文化と伝統に厳かなる関心を持つにやぶさかではありません。私は、大衆の中に、地域の中に、生きて死んでいくと誓った法華信者ではありますが。そこは幅広い宗教的興味の惹きつける所以でもありましょう。次の機会には三たびの山歩きに挑みたいと決意したものです■さて、現地でひとたびは別れたつもりだった高校生たち6人とばったり宿舎のそばで会いました。学校から家路につくところだったのです。偶然とはいえ、わたしには嬉しいチャンスでした。彼らの年代は私にとって55年前に当たります。「君たちの年代にとって一番大事なことは本物に触れることだよ。榎田竜路さんという本物から話を聞くだけでなく、直にあれこれ指導してもらえるのは凄い財産になるよ」と激励しておきました。遥か昔の我が高校時代に、学校が招いてくれた猪木正道(京大教授を経て防衛大校長)と大森実(毎日新聞記者)両氏の講演を聴いて、学問としての国際政治に興味を持ち、ジャーナリストに憧れを持ったことを思い起こします。同時に五十嵐喜芳(テノール歌手)と平岡養一(木琴奏者)両氏の演奏も聞いて、音楽に強い関心を持ったことも。いずれも故人ですが、人生の勃興期に、青春の只中に自分が触れた本物の威力を半世紀以上経っても与えてくれ続けています。彼ら高校生がどうこれから成長するか。吉野町のためには直接繋がらずとも、こういうことをする町には必ずいいお返しが来るものと私は思っています。(2018-12-22)

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*