はったりから妥協へー”トランプ手品”にどう対応するか

米大統領選挙結果に世界中が驚き、ショックを受けています。トランプ氏の「まさかの大勝利」の選挙の結果が出た翌日に、たまたまヨーロッパ議会の女性議員(コリン・ランゲン元ドイツ・ビンゲン市長)を姫路にお迎えしたので、個人的に様々な意見交換をしました。彼女も世界の前途に暗雲が垂れ込めたと、大いに深刻な表情をされていたのが印象に残っています。殆どのメディアが報じているように、確かにトランプ氏が選挙戦中に発言したことをそのまま実行に移すなら、たちどころに世界は大混乱に陥るものと思われます。不透明な国際政治・経済の先行きを予測することは困難ですが、トランプ氏は”大化け”ならずとも変質するとの期待感を持ちたい思いに駆られます。ゲームとしてのトランプに「神経衰弱」なる遊びがありますが、個人も国家社会も本当に衰弱せぬうちに、「トランプ手品」の如く、問題解決といきたいものです。選挙最終盤にあたかも冗談のように喧伝されていたのにまともに降りかかってきた「トランプ・リスク」を、三つの視点から考えたいと思います▼一つは、ここでいう”大化け”とは、彼が急に掌を返して、今まで言ってきたことは撤回するなどということでは勿論ありません。そんなことをすると支持者たちが彼を許さず、さらにいっそう滅茶苦茶な政治状況になってしまいます。ここは、本人に過去二回会ったという寺島実郎日本総合研究所会長の「(トランプ氏の)人生を貫く価値はディール(取引)だけでしょう。思想も哲学もなく、いくらでも妥協する。はったりから落としどころに持ち込む手法です」(朝日新聞11・12付け)との言葉が気になります。寺島氏は、就任後にトランプ氏の内外における”大いなる妥協”が始まるとの見立てを持っているのではないかと思われます。トランプ氏のはったりに期待をした支持者たちが「落としどころに持ち込む妥協の手法」に満足してくれることに期待するしかないといえましょう▼次に、アメリカという国の政治にあえて内政干渉してしまえば、「二大政党制」と「大統領選挙の在り方」という問題、つまりはアメリカ民主主義が孕む課題です。共和党と民主党という巨大政党が、政権交代を賭けて4年に一度大勝負をするということは、その都度本来は今までも国家を二分する政争が行われてきたわけです。中国やロシアのような共産主義、もしくは疑似資本主義国家と違って、国家社会が常に分断されかねない危険性を持ってるのです。今までは民主主義国家における自由な競争、同じ価値観を持ったもの同士の内輪もめ程度で済んでいたのですが、トランプ氏はそれを根底からひっくりかえすかのごとき発言を一貫して繰り返してきました。民主主義のモデル国家であるかの如く見られてきたアメリカがこれから大統領自らがしでかす「民主主義への挑戦」ともいうべき難題解決に、どう取り組むか。固唾を吞んで見守る絶好の機会です▼随分と脳天気な、対岸の火事みたいなことを言ってきましたが、異常事態ゆえご容赦を。次に、日本はどう対応すべきか、という課題が三つ目です。安全保障の分野でトランプ氏は日本が応分の負担をしないなら、米軍は撤退するとか、北朝鮮が核を持つのなら日本も持つべきだといったような、事実誤認や国際政治の常識を弁えない論法を弄んでいます。これに対応する答えはただ一つ。日本が自立する気構えを持つことだといえます。今まで自らを「半独立国家」だとか、「対米従属国家」だとかいう風に規定してきていながら、日米同盟関係に漫然と安住してきた感がなしとしない日本が本気で米国と対峙する時だといえましょう。勿論、それは直ちに「安保条約破棄」だとか「核保持」などということではありません。自らは自らで守るという気概を持たぬ限り、二国間関係は本当の関係ではないのです。トランプ氏の「対日はったり」に、どう日本が真面目に”かます”か、大いに腕と知恵の発揮しどころだといえましょう。(2016・11・13)

しかし、天邪鬼な私は正直に言ってあまりショックを受けていません。むしろこれを契機に新たな世界が開けていくことへの期待感があります。もはや現役ではないので、直接様々な課題に直面することからくる責任がありませんから、脳天気に構えているのかもしれませんが……。ここでは彼が最悪の行動に出ることは思いとどまる(つまり、勝利後の演説に見るような融和路線を歩むとして)という前提の下で、楽観的でかつ異質の受け止め方を示してみたいと思います▼そもそも米国のような二大政党制のもとでは、政権交代が前提とされていますので、大なり小なり国論世論が二分されがちです。中国やロシアのように強権的な共産主義国家、疑似資本主義国家ではないところでは、民主主義のもと自由な政治言論が保障されていますから、ある意味当然でしょう。しかし、事態はかなり変化の様相を示してきました。これまでは資本主義がまっとうに発動し、民主主義が伸長する基盤が強固だと見られていたのに、米国ではかの2008年のリーマンショック以来急速な形で貧富の差が拡大してきました。貧困層と富裕層の二分化こそ今回のトランプ大統領誕生の根本的原因だと見られています。

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