「文際的世界」という大沼ワールドの面白さ

「文際的世界の国際法」シンポジウム実行委員会なるところから、東大名誉教授の「大沼保昭さんの出版記念シンポジウムと懇親会」のご案内を頂いたのは去年の9月。大沼さんとはかねて懇意にして頂いており、その学問上のお仕事ぶりには深い敬意を抱いています。加えて、娘さんのみずほさんが参議院議員選挙に出馬した(現在、自民党所属の一期生)際に、いささかのご支援をしたことなどもあり、単なる学者と政治家の関係を超えた親しみをも感じている次第です。ここで言われる「文際的」とはいわゆる「学際的」よりももっと幅広い概念をさすものと思われます。文明間の壁を乗り越えるという意味で、そこに共通する国際法を求める試みだと私は解釈し、ぜひとも参加したいと思っていました▼しかし、当日( 3月19日)は、同じ東京ではあるものの、大事な会合とぶつかってしまいました。私が青年期に過ごした中野区の仲間たちによる「中野兄弟会」の会です。創価学会の池田大作先生によって作られた人材育成グループの44年目の総会です。何をおいても参加せねばなりません。残念ながら大沼さんの方のシンポジウムは欠席し、終わってからのミニコンサートと懇親会にのみ参加してきました。このためシンポジウムの深いところは何も語ることはできません。ただ、案内状にあるように、大沼さんが営々として築き上げてきた学問や実践活動は、「『欧米中心主義的世界から文際的世界へ』、日本社会の文脈では『脱亜入欧信仰からの脱却』という理念に立脚している」というところにあります。したがって、私が関心を持ち続けている「西欧文明から、東洋の思想へ」という若き日からの大いなる問題意識と全く一致する方向です。今回のシンポジウムの成果に強い関心を持って、その所産に期待し、また私なりの解釈をこのブログにおいて報告するつもりです▼錚々たる実行委員会のメンバーのなかで、私の友人と言えるのは、読売新聞の特別編集委員の橋本五郎氏と論説主幹の小田尚さんの二人ぐらい。後は知ってはいても少々距離のある人たちでしたので、懇親会への出席は若干気が引けていました。ところが、さにあらず、同じテーブルには大沼さん(彼は1946年3月生まれ)と同世代の人間を中心に配席される(ただし女性は別。ご本人の好みが基準=笑)という気の配り方。お蔭で阿部信泰氏(元外務省幹部で軍縮の専門家、今は原子力委員)、コーディネーターの加藤タキさんらと楽しい会話をすることができました。登壇する方々のお話はいずれもウイットに富んだ暖かいものばかりでしたが、共通していたのは大沼さんが「いかにひとに犠牲を強いる」人であるか、という点。これは恐らく「目的追求に熱心なあまり、つい周りのひとに多くを求めてしまう」ことをさすものと思われます。たとえば、この日の会合はトータル11時間に及ぶもので、巻き込まれた参加者は大変だった、というわけです▼大沼さんは、学者でありながら単に象牙の塔に留まることをよしとせずにあらゆることに挑戦してきました。勿論政治、政治家に対しても多くの要求をされてきたのです。そんな彼のメガネにかなったのは、原文兵衛氏と五十嵐広三氏(共に故人)であることは良く知られています。これはまた、慰安婦問題や人権問題で、彼が政党、政治家に頼ろうとしたが「不愉快な思いをした」ことが多かったことと裏表の関係です。彼は著作の中でしばしばこのお二人を礼賛していますが、この日も「最後は自分が責任をとる、抜群の行動力のひとだった」と終わりの挨拶で繰り返し強調していました。列席していた人間の中で、代議士経験者はわたしだけ(ただし、大沼瑞穂参議院議員も参加)だったので、いささか恥ずかしい思いがしたことは禁じえません。つまり、他の政治家はロクなものじゃなかったと言外に匂わせておられたからです。ともあれ、近日中に読売新聞紙上で橋本五郎氏や小田尚氏がコラム『五郎ワールド』や『補助線』でこの日の模様を活字にする(橋本氏には「書いてね」=笑、と伝えておきました)はずです。それを楽しみにしています。皆さんもどうぞ。
                                             (2017・3・22)

インドネシアで人気の女性大臣との出会い

東南アジア地域一帯で食品輸出に携わる友人と共に、インドネシア・ジャカルタに3泊4日の旅をしてきました。ジャカルタを漢字で「雅加達」と書くことも、「尼」と略称することも知りませんでした。昨夏の香港、シンガポール、今冬のタイ・バンコクに続いてこの地域への三たびの機会です。中国、インド、アメリカに続き、2億を超える人口は世界第4位。しかも人口の比率は若年が圧倒的に多くて若々しい、未来溢れ、活気漲る国家です。バンコクと同様に道路事情は悪く、留まるところを知らぬ渋滞の連続。お蔭でトヨタをはじめとする日本車のバックナンバーに取り囲まれ、この国の持つ一面が良く分かりました。加えて電車の車両仕様も日本のものがそのまま輸入されているとのこと。親近感はただならざるものがあります▼今回インドネシア行きを決めたのは、故中嶋嶺雄先生のご縁のたまものです。昨秋東京・四谷で開かれた先生の選集全8巻の出版記念の懇親会の席で、元日経ジャカルタ支局長の小牧利寿さんと隣席になったことが機縁となりました。今はジャカルタを中心に政府コンサルタントのような仕事をされており、しばしばこの地を訪れているとのこと。「是非、一度」ということになり、かねてインドネシア進出を考えていた友人を誘って実現しました。「縁は異なもの味なもの」です。共に、中嶋門下の一員であるうえ、元ジャーナリスト同士のよしみもあって、あっという間に気が合いました▼加えて、インドネシア大使の谷崎泰明氏(元欧州局長)とのご縁もあります。久しぶりに会ってインドネシアと日本をめぐる話を聴こうと思い立ちました。偶々私たちが行く数日前に、後任の大使決定(ベルギーの石井正文大使)を新聞発表で知りました。このために彼とは「ご苦労さん会」になってしまいました。オランダ統治の時代から先の大戦を経て独立、スカルノ、スハルトと、この地での傑出したリーダーたちの政治力の由来から話は始まりました。いらい今日に及ぶ「多様性の中の統一力」を誇るこの国に秘められたパワーの源泉を教えて頂いた次第です▼私たちの短い滞在中に、日本とインドネシアの漁業関係者を中心とするフォーラムが開催されることになり、そこにスシ漁業担当大臣が出席されるというので、予定を変更して急遽私も覗きに行くことにしました。JBICなど政府金融関係機関者はじめ少なからざるインドネシ人や日本人が出席し、大変な盛況ぶり。この大臣は女性ながら、刺青をしていたり、「気風の良さに加えて妖艶さも漂う」との評価で知られる猛者。それだけに出席者の本心は怖いもの見たさが本心だったのかも。想定と期待にたがわぬチャーミングな顔立ちと迫力ある声。なかなかの風貌でした。失礼ながら講演の中身はともかくとして、まずは洋の東西を問わぬ今風の女性政治家の抬頭ぶりに改めて感心を強めた次第です。(2017・3・12)

大災害時に発電設備が作動しない恐怖をどうする

あの東日本の大震災からこの11日で6年が経ちます。阪神淡路の大震災を経験した兵庫県民のひとりとして思うことの多さに比べ、被災民に寄り添う実行動の乏しさに苛立つばかりです。大災害の時代と言われる今日の状況の中で、せめて間接的にでも被災の影響を少なくする、いわゆる減災に役立つことをしてみたいとの思いが募ってきました。自分にも何かできることはないかと考え続けていたところに、私が顧問を務めるAKRの河田専務理事(ビジネスファーム研究所所長)から話があっったのは昨年の今頃のことでした。それは非常用電源設備の実態をめぐって法定点検が確かにおこなわれているかどうか疑問だということでした▼大きな非常事態が発生した際には、しばしば外部電源が遮断されてしまいます。となると、それぞれの建物が自前の設備内に保有する設備が作動して被害拡大を食い止めることが求められるわけです。スクリンクラー、非常用消火栓、非常用電源、非常灯など人命にかかわる設備に電気を供給する防災の要になるものがそれで、全国での設置数は100万台にも及ぶと見られています。しかし、阪神・淡路の大震災においては23%が始動しなかったことが確認されており、東日本大震災でも同じような数値で動かなかったと見られています。これは点検が十分に行われていなかったためにいざという時に役に立たなかったということなのです▼一般社団法人「全国非常用発電機等保安協会」の調査によると、負荷をかけずにお座なりな点検めいたものだけーたとえば、エンジン始動だけといったようにーなのが、95%にものぼっているとといいます。実は、非常用電源設備の点検については電気事業法、建築基準法、消防法などで明確に実施が定められており、違反すると罰則が適用されているのです。平成14年6月には消防庁の予防課長通知「点検要領」で、30%以上の負荷をかけて必要な時間の連続運転を行い確認することが求められているのです。しかし、現実には、いちいち負荷点検をしていると、停電が起こるため難しいとか、時間がない、費用が高い、業者がいないなどの理由で正しい点検がおこなわれていないのが実態だというのです▼こうしたことを関係者から聴き、消防庁にも足を運び、予防課長からいろいろと話を聴いたり、非常用発電機保安調査士の資格を持ってるひとや関係業者からも話を聴きました。特に驚いたのは、こうした非常時に備えての対応について、肝心の公的建築物の管理者でさえあまりわかっていないということです。およそ、そんなことはおこらないだろうとの安易な気持ちがあったら、文字通りすべては壊れてしまいます。兵庫県や神戸市など私の身近な地方自治体こそ率先してこの点検を行ってるはずだと信じているのですが……。このあたり、大いなる関心を持って今着々と調査の機を窺っているところです。せめてこうしたことで、私は大災害時代への対応に貢献したいものだと考えています。(2017・3・6)