選挙戦の最中に拙著『ふれあう読書━━私の縁した百人一冊』上下巻の出版を記念するイベントを『交流会』と銘打って、7月12日に西明石のホテルキャッスルプラザで行いました。炎暑の中、多くの皆さんが集ってくださり、賑やかに楽しく意義ある会合になりました。
9-11日の三日間予定原稿を上中下で掲載しましたが、中々予定した通りにはいかず、かなり端折った中身になりました。ただ、予定稿には入れていなかったことも喋りましたので、まあまあと言うべきでしょう。友人たちも、井戸敏三、宮家邦彦、岡部芳彦、新聞社社長らといった日本政治、国際政治に精通した専門家から、小説家、経済人を初め庶民大衆の代表に至るまで多彩なメンバーが120人ほど。皆さんに興味あることを話そうとすると、どうしても平易で面白いことを話さざるを得ず、自ずと雑な話にならざるをえませんでした。
皆さんの率直な感想は赤松の人脈がまことに多彩で実に多方面に及ぶこと、「交流会」と謳っていただけあって色んな人たちと名刺交換して、交歓、交流の場が持てたことを喜んでくれる中味が専らでした。一般人の皆さんは、僕の話ぶりが元気に満ち溢れ多くの刺激を得られたとか、僕が挙げていた本を職場の読書会に使いたいとの感想もありました。
尤も、専門家の感想は、僕の国際政治・外交評は国内政治に比べて物足りない(井戸)とか、もっと小説の書評を読みたい(玉岡)とか、赤松という人物は最初は甘かったが、付き合うにつれて、苦く、渋い味がする(石川誠)といった辛口評が目立った。しかし、いちばんきつかったのは、我が家人の「眠たかった」でした。全く言いたいこと言ってくれるよ、というのが僕の思いです。
⚫︎選挙戦だからこそじっくり日本、世界を考える
冒頭の挨拶で、僕は選挙の最中にこういう会合を開くことについて、福澤諭吉の有名な慶應4年5月15日におけるウエーランド経済学講義の故事を話しました。戊辰戦争の勃発で上野での砲声を遠くに聞きながら塾生に講義を諭吉がしたのは、目先のいくさにとらわれず、学問の研鑽を怠るなという目的からでした。僕は、ちょっぴり格好つけて、この故事に倣って、現代日本の行き詰まった政治の有り様を今こそ考えようと投げかけたつもりでした。
僕の常日頃の言動を知ってる人が大半ですので「今日は時節柄、選挙は比例区は公明党を、兵庫選挙区は高橋みつお候補をよろしくとは申しませんが」と笑いをとって、約40分間話しました。そこには問題山積だが、よりマシ選択は中道主義の公明党だとの思いを鎮めたものでした。
僕が衆議院議員を辞めたあとのブログ活動の所産としての『77年の興亡』正続編と『ふれあう読書』上下巻の合計4冊の出版は、20年間の政治家生活から得た独自の視点が底流に横たわっています。前者2冊は、自公政権および野党の体たらくを嘆き、政治がもっとしっかりすべきだと叱咤する内容です。後者2冊は、これまでの僕の人生で袖擦り合わせた他生のご縁ある人々との交流読書録です。上巻ではテーマ別に、下巻では職業別に、それぞれ7章50人ずつの50冊を取り上げました。ありとあらゆる興味深い中味を網羅したつもりです。
⚫︎「77年の興亡」の第三ステージへの楽観、悲観的展望
事前の講演メモに予定しなかったのに、本番で話したのは、これからの第三の「77年の興亡」がどうなるのかという未来予測でした。もちろんそんなことはわかるわけなく、単なる予測です。僕は経済的側面では今話題の投資コンサルタントの齋藤ジンさんによる『世界秩序がかわるとき』が一つの楽観的予測として注目されると言いました。この本の見立ては、米国が中国を意識して、日本を再びパートナーとして持ち上げる時が必ずやってくるというものです。
もう一つは、宮家邦彦さんが今年の産経新聞新年号での「正論大賞対談」で、「今世界は戦間期の終焉にさしかかっており、戦争前夜とみられる。これは日本がかつて第一次世界大戦で勝ち組に入っていながら第二次大戦で負け組になってしまったのを、逆転させ今再びの勝ち組に回れるチャンスを掴めることを意味する」と述べたことを紹介しました。要するに、日本外交の展開如何でどうにでもなるという見立てなのです。
宮家さんご本人の目の前でこう話したことは彼への大サービスでした。僕は中々そういう振る舞いを日本が取れることには悲観的で一つ間違うと奈落の底に落ちかねないと見ますが、厳しい国際情勢を自分の頭で考え抜いて、国民に提起しようとする彼の努力を買って、あえて紹介しました。
最後は、福澤諭吉の『学問のすすめ』を通して、人間にとって最も大事なことは「交際」であるとの記述に我が意を得た気分になったとの話をして終えるつもりでしたが、時間の不足でいささか尻切れになったかもしれないことは気がかりでした。4時過ぎに会場を出たのですが、どういうわけか今夏は蝉の声も未だ全く聞こえず、選挙スピーカーの声も全くなし。SNSの世界での空中戦が激しいのかどうか。不気味なムードが懸念される週末でした。(2025-7-13)