北海道から沖縄県まで全国の高校の先生たちの代表が徳島に集まって、観光教育を巡って学び合う機会がありました。7月25-26の二日間、四国大学交流プラザで開かれたのですが、私も「(一社)瀬戸内海島めぐり協会」の一員として初めて参加(兵庫県からは洲本実業高校の先生が初参加)してきました。今年で24回目と云います。有志の先生たちが集まって出来上がったネットワークはなかなか強固なもので、そこから育った生徒たちの観光現場での成長が大いに期待される、との実感を持ちました▼最も注目されたのは高校生たちの発表でした。徳島商業高校の女子生徒が中心になって❶カンボジアでの交流(PalmSugarStory)❷レジ袋削減作戦❸美波町の地域おこしーの3つの報告は見事なものでした。カンボジアのヤシの実からアイスクリームを作り、日本で販売する。この行程に深く高校生が関わっている実態はまさに驚異です。また美波町椿谷でのジップラインを軸にした地域おこしに取り組む姿にも強く惹きつけられました。発展途上にある国と日本の限界集落のひとつを共に蘇らせようとする若者の試みには、率直に感動しました。指導に当たった鈴鹿剛先生は「観光を通じて子供たちが自分で考え、何ものかを創造するようになる成長過程が大事なんです」と語ってくれました▼アースプロジェクトの榎田竜路氏と日大教授の宍戸学氏の講演も大いに聴かせるものでした。榎田氏は若い人たちの自己肯定力を高めるための「術」を幅広い観点から語ってくれました。この人は映像を作る行為を通して、今そこにいる場所とひとを輝かせる手立てを語り、全国各地において実績を積み上げてきています。「観光の伝道師」とでもいうべき人だけに刺激溢れる話でした。一方、宍戸氏は国際関係論における観光学の先達。同時にこのネットワークの構築に初期の頃から携わっている熟達の士でもあります。インバウンドに沸き立つ現状の光と影を過不足なく語ってくれ、大いに参考になりました。私は世界各国の相互理解に対して、観光が果たす側面に大いに関心があります。中国やイラン、北朝鮮などクセのある国々がどう自国を自由に世界に開き、見せてくれるかが「世界平和」のカギを握ってると思うのですが、果たしてどうでしょうか▼二日目のパネルディスカッションは、この分野(観光と地域おこし)の第一人者というべき勝瀬典雄氏(関学大兼任講師)の司会のもと、実に聞き応えのある討議になりました。これには観光庁から榎本通也政策調整官も参加。専門的立場から多彩な意見を開陳すると共に重要なアドバイスをしてくれました。会場参加者に意見を求められたので、私は観光人材としての高校生たちを受けいれてくれる地域の受け皿とのマッチングの難しさを語りました。日本中で今、シャッター街の存在が悩みのタネである現実。これを観光人材としての高校生たちが解決に役立つことが出来たら、どんなに素晴らしいか。まるで夢のような非現実的な〝無い物ねだり〟をしてしまいました。来年は北海道ニセコで開かれます。早くも関心が高まってきます。(2019-7-29-改訂版)
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無党派・浮動票層にどう働きかけるかー参議院選を終えて
長かった参議院の選挙戦が終わりました。いきなり解散に持ち込まれるケースの多い衆議院と違って、予め見通しが立つ分だけ、準備に相当な時間がかけられるため、長く感じられます。私の地元の兵庫県では今回も全国屈指の激戦区と云われましたが、予想通り厳しいものとなりました。結果的には、維新の候補者がトップ当選し、自民党の候補が3位で、公明党の新人は2位に食い込みました。得票こそ3年前に4万票ほど及びませんでしたが、堂々50万票を獲得できたことは、嬉しい限りです▼ここでは表層的な捉え方になりますが、3年後の次期参議院選に向けて、どうしたらいわゆる浮動層と見られる有権者の支持を得られるかについての考察をして見ます。まずその前に「維新」の躍進をどう見るかです。これは大阪での都構想を巡る一連の動きにおける同党の人気が兵庫にも押し寄せた、つまり「維新」にとって追い風が吹いたと見るものです。その側面は確かに否定できません。ですが、それだけでしょうか。私はこの党の躍進は日本におけるもう一つの保守政党への待望論と重なって見えてなりません。単に大阪や兵庫における特殊な現象と見ない方がいいように思われます。尤も「維新」の方に全国的な政党としてことを構えるゆとりがあるかどうかというと覚束ぬところはあるのですが▼ただ、今の時点で浮動票がそれなりに取れる「維新」は侮れません。自民党から共産党までの老舗の政党で唯一と言っていいくらい背後に組織がないのに、票が取れる政党に見えてなりません。浮動票がなぜ取れるか。いくつかの点がありますが、最大のものはリーダーの物言いがはっきりしていることでしょうか。橋下、松井と続く首脳の言動はそれなりに明確な意思が読み取れます。彼らのいうところの、しがらみのなさとでもいうべきものでしょうか。憲法を巡る態度でもそのあたりの姿勢は明確に伺えます。保守二党を待望する世論が、安倍自民党の独走気味が目立つほど、反比例して強くなるように思われます▼そうした状況下で、公明党が自民党との距離を縮め、「公明党の自民党化」(神戸新聞)を強めているとの見方が専らです。本来、私のような古い公明党の政治を知ってるものからすると、「自民党の公明党化」を目指して、連立を組んで自民党の内側からの改革を目指したはずなのですが。自民党にもの申す場面が少なく、寄り添う場面ばかりが目立つのは不本意と云うほかありません。ミイラ取りがミイラになったというのでは困ります。参議院選挙は3年後にやってきますが、その際にどれだけ浮動票を集められるか。党としての〝らしさの発揮〟と、団体、組織票とは別に、候補者個人の魅力を高めるかだと思います。かつて公明党が野党の頃に政府を批判する力が目立ちました。先日亡くなった草川昭三さんや、市川雄一さん、そして今も健在の黒柳明さんらは個人の質問力で名を高めました。与党になってからそうした迫力を持つ公明党議員が少なくなったため、一段と人気を持つ人が少なくなったように思えます。参議院自民党の西田昌司氏のように与党でも大向こうを唸らせる質問をする人もいます。公明党もそうした力のある個人票を持つ政治家を育てていかねばと思うことしきりです。(2019-7-23)
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米中対決の狭間で日本はどう生きるかー大阪での時局講演会から(下)
一方、国際政治における最大の問題は、中国の膨張です。ある雑誌の「独裁国家中国という今そこにある脅威」という特集では、「習近平が目論む中国未来年表」なる、これから30年の中国がアメリカを越えて、世界の覇権を目指すタイムスケジュールが掲載されています。それによりますと、
2019年に科学技術の研究費が世界一位になります。
2020年には中国版GPS「北斗」が世界で運用開始となります。
2022年には有人宇宙ステーションを運用開始。
2025年には国防費が米国を抜いて世界一位となり台湾に軍事侵攻。
2029年には人口が14・5億人のピークになります。
2030年にはGDPが世界一位になり、AIで世界をリードします。
2035年には中国海軍が米海軍に並ぶ。国民一人あたりのGDPが世界一位に。
2049年には中国の夢ー中国民族の偉大なる復興ー実現する、というのです。この年は中華人民共和国が建国100周年となり、中国が経済・軍事・文化のあらゆる面で世界の支配者になるといいます。
また中国は、要衝と呼ばれる世界の港をことごとく抑えようとしており、その手法は、かつての大英帝国が香港をアヘン漬けにして、戦争に勝ち奪い取ったものですが、それを見倣い、発展途上国等を借金漬けにして、そのカタに港を奪おうとしています。因みに、中国が牛耳る世界の主な港湾は以下の通りです。
ハリファ港(アラブ首長国連邦)、ピレウス港(ギリシャ)、セーブルージュ港(ベルギー)、チャオビュー地区(ミャンマー)、ハンバントタ港(スリランカ)、ダーウイン港(オーストラリア)、グワダル港(パキスタン)、ドゥクム港(オマーン)、ジプチ港(ジプチ)、ティバサ地区(アルジェリア)
さらに、2015年には、IMFを中心にしたアメリカ中心の国際経済秩序によるアメリカの影響力を排するためにアジアインフラ投資銀行を創設するなど、60カ国に及ぶ国々を傘下に組み込んでいます。
こうした流れを見ると、かつて「米ソ対決」のもとでの「スターウオーズ」を思い出します。米ソ超大国が軍事力競争が嵩じて地球上から宇宙にまでその〝戦場〟を広げたことに似てなくもありません。これは結局、財政負担にあえいだ上での「ソ連の崩壊」を引き出して、アメリカの勝利に終わりました。ただ、ソ連と違って中国はそのやり方・手法が半端じゃないことから、そう簡単に勝敗は決しないとの見方があります。もちろん、同時に中国における共産主義中央集権に翳りが生じて、いくつかの連邦国家に分裂するとか、あるいは国家崩壊の危機に瀕するとの見方も根強いことも否定できません。
こうした状況下に、今トランプ米国大統領が、就任以来事あるごとに持ち出すのが日米安保破棄という問題です。米国がいざという時に、日本が守らない同盟は不平等だというわけです。米国大統領は1973年に制定された「戦争権限法」によって議会の許可を得ないと戦争は大統領といえども勝手にやるわけには行かなくなっています。ただし、条約は締結時には議会の了承が必要ですが、破棄については、大統領の権限で出来るので、注目を浴びています。
これに関して、日本が米軍基地を提供していることや〝思いやり予算〟などの経済負担を口にするだけでは持たない時が来るとの見方もあり、トランプ大統領の提案を真剣に考えるべしとの主張もあります。これは巨大な財政負担を伴うだけに、根底的に日本の在りようが問われる選択です。もちろんこれは日本の真の独立とは何かという問題と絡み、簡単には答えが出せない課題です。
やがて米国と中国とどっちを同盟国として選ぶのか、日本が迫られる時が来るとの見方もあり、他人事ではありません。しかも、米国は民主主義国家ですから、曲がりなりにも自主性を重んじた同盟関係で収まってきましたが、共産中国の場合は、周辺国を属国化してくる手法が露骨なだけに、事は極めて重大です。今は21世紀に入って20年。やがて日本が戦争に負けて100年が経ちますが、その頃には真の意味での独立を勝ち取るものと、私などは堅い決意と共に未来予測をしてきました。そのためには、地球民族主義の旗印のもとに、国連中心の国際政治を培うというのが公明党の考え方ですが、それと真っ向から対立する動きが起きてきているのが今の世界です。
こうしたことを真剣に考えていく時があっていいのではないか、との金光さんの講演での問いかけが深い意味を持って響いてきます。(2019-7-16)
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自公連立政権は何をもたらしたかー大阪での時局講演会から(上)
参議院選挙の最中に、企業関係者が多数集ってくださった大阪での時局講演会(7-11)に私も、伊藤孝江参議院議員と共に出席、高橋光男支援を訴えてきました。主催者は、宮沢喜一元総理の後援会副会長を務めた 金光亮典氏(R.D.M.サポート21代表)。この日の同氏の講演は自民党と公明党の連立政権の歴史と背景を整理した上で、現時点における政治経済の状況を適確にまとめ、今後の国際政治の展望を述べる画期的な内容でした。加えて質疑応答の中で、膨張する中国の存在を前に、日米関係をどう捉えるのがいいかとの観点での重要な問題提起もなされるなど、大いに刺激的な内容で、出席者からは大変に勉強になったとの賞賛の声が聞かれました。
このうち、私が強い関心を持って聞いたのは、自公連立政権の役割と、米中対決の狭間で日本はこれからどう生きるか、との二つの点でした。ここでは金光氏の講演をベースに、私の考え方も織り込んで上下二回に分けて整理・再現してみます。(これは金光氏にも確認していただきましたが、文責は全て私にあります)
まず、自公連立政権の評価については、ズバリ「政治の安定」をもたらしたことに尽きます。昭和期最後の宮沢政権で、自民党単独政権は終焉し、細川政権から10代続いた自民党主軸の連立政権は、ひとたび麻生政権で潰えます。その後3代続いた民主党政権は、見るも無惨、聞くも呆れる体たらくで、「悪夢のような」政権と言わざるを得ませんでした。それが、安倍晋三第2期政権の誕生で、日本は立ち直り、今日までの約6年間は様々の問題ははらみながらも、政治経済は落ち着いてきたと云えます。
もちろん、平成の30年全体としては、「失われた時代」との指摘もなされており、それは経済だけでなく、政治にあっても同じと云えましょう。ただ、自民党政治の足らざるを補い、矯正する役割を担ってきているのが連立政権のパートナーとしての公明党だとは衆目の一致するところです。政治家の失言やら不始末が後を断たない事態が続きますが、それに苦言を呈し、あるべき方向を示唆してくれているのが山口公明党だと云えます。
日本の前途は楽観は許されず、問題山積です。自民党政治の中核で長く携わってきた金光氏と、公明党の私とは立場こそ微妙に違えど、宮沢喜一氏、市川雄一氏という類まれな政治家にそれぞれ秘書として支えてきた共通点があります。その二人が強く実感するのは、困難な中でも日本の地平を切り開いてきた自民党と公明党がこれからも手を携えて課題に立ち向かうしかないということです。
自公連立は20年を経て、益々確たるものになってきました。政権の構成に関して云えば、公明党はこれまで国土交通、厚生労働、経済産業行政などの分野で力を発揮してきました。あの東北大震災に関連して起きた福島の原発事故の処理にあっても、公明党所属の副大臣や政務官らの目覚ましい働きは特筆に値するものです。
自公連立政権で安定した政治をさらに充実したものへと改革することが今求められています。それには「小さな声を聞く政治」を続けている公明党の役割が重要です。「大衆福祉の実現」を掲げて55年前に誕生したのが公明党です。福祉が求められる領域が、学校教育の現場や家庭のただなかでのいじめや引きこもりなど、こころの病へと広がってきています。これに立ち向かって、課題解決への道筋を立てることこそ今公明党に求められている大きな問題だと思われます。(2019-7-16)
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参院選の焦点の一つとしての「憲法9条」
参議院選挙が4日に公示となりました。この日はアメリカの独立記念日です。日本がアメリカを主たる相手として戦った戦争に負けてから70有余年。未だにその支配から完全に抜けきっていない被占領国であるとの自覚を、私はいつもこの7-4が来るたびに持ちます。特に理由はありませんが、1945年の8-15(終戦記念日)や、9-2(降伏文書調印式)や1951年の9-8(サンフランシスコ講和条約調印式)などの記念日よりも、こっちの日に感慨を抱くのです。若干の皮肉を込めてはいるのですが、やがていつの日か日本も本当の独立をせねば、と思うのが7-4なのです▼さて、平和な時代の「陣地取り合戦」たる国政選挙が始まります。様々な争点がありますが、一つは「憲法」をどうするか、です。安倍自民党は結党以来、憲法改正を真正面に掲げ続けてきた政党です。今回の選挙では、9条に自衛隊の存在を明記する項目を加えるとしています。それに対して、公明党は「多くの国民は自衛隊の活動を理解し、支持しており、違憲の存在とは考えていない」としており、わざわざ改めて明記せずとも、事足りるとの立場を鮮明にしています。つまり、9条改正に慎重で、出来るだけ多くの政党の合意形成が図られるように努めることが先決だとしているのです。主要野党は「維新」を除き、「安倍政権下での改憲」に反対する姿勢(国民民主は弱いですが)です。政党のこうした立ち位置は、私が現役だった頃と大筋は変わっていません。残念なことに憲法審査会での議論が遅々として進まないのです。日常的な予算にまつわる国会審議や法律制定の議論とは別に、憲法は国の根幹に関することですから、時々の政局に流されずに議論すべきなのに、頑なな与野党対決の姿勢が災いしているのです▼安倍自民党は全面改正を選挙公約には打ち出さずに、随分と殊勝な態度に見えます。本音をさらけ出して公明党との関係などが壊れては元も子もなくなるからなのでしょう。言うまでもなく憲法9条については、実に様々な議論や立場があります。冒頭に述べたように、日本は未だアメリカの実質的には支配下(独立国とは疑わしいような状態)にあり、首根っこを押さえられています。それが証拠に、「沖縄」を持ち出さずとも「横田空域」に見るように、首都の空さえ自由に飛べないままなのです。アメリカの大統領から、日米安保条約体制の不平等性をちらつかされ、「対等な関係」になろうと理不尽な脅かされ方をして、尻込みする国柄なのです。ここらを整理・整頓して、自前の憲法を持つことがない限り、いくら付け焼き刃的にいじくりまわしても、ダメだというのが恐らく公明党の本音であり、ここはじっくり議論をしようという立場です(いつまで経っても進まないのにさすがの私も苛々感が募りますが)▼ところで、話題の映画『空母 いぶき』を封切りと同時に観てきました。漫画家のかわぐちかいじ氏の原作をもとに作家の福井晴敏氏らの企画立案で出来た映画ですが、自衛隊という存在を的確に描いて見応えがありました。日本の領土・領海・領空の領域を保全するために、侵略してきた外部勢力を水際で防御するために現行憲法下で許される渾身の力と知恵を振り絞る場面。総理はじめ政府が憲法9条のもとに最小必要限の力を行使するべく、国連との連携をもとに腐心する姿。これらは、日本防衛のシュミレーションとして、大いに参考になります。国会議員も、普通の市民のみなさんも、自衛隊がいざという時にどう振る舞うかを事前に検証する役割を果たします。現実に、戦闘で人命を失ったことがない自衛隊ーこの映画では、自らも犠牲者をださず、敵にも出させないという、涙ぐましいまでの努力と思いが伝わってきます。たかが漫画、たかが映画という勿れ、ここには憲法9条議論のイロハが詰まっているように私には思われます。(2019-7-5)
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