心に残った発言を探すー新年各紙のコメントから(下)

松のうち(1日〜7日)の全国紙5紙を読んで、私の心に響く、興味深かった識者の発言を次に挙げてみます。私の独断ですが、なかなか面白いと思えるものを5つ選びました。ぜひ、それぞれの新聞を図書館ででも読んでいただければ、と思います。

●毎日新聞の連載『コロナで変わる世界』(5日付け)ー社会学者・大澤真幸さん「世界共和国の契機に」

コロナ禍は今後どう推移するか、とインタビュアーに聞かれて、大澤さんは、大要以下のように答えています。

【地球レベルで経済とコロナ対策がトレードオフ(相反関係)にあるとの3段階の認識を経て、コロナによって、社会の仕組みや生き方が問われているといえます。「人間とは何なのか」ということを含めた、政治と精神が一緒になった問題だと、そこで初めて気づくのです。21世紀を超えて、人類が繁栄出来ているとすれば、今から何世代か後には、「世界共和国」に向かう、コロナ禍がそのきっかけだったと思えるようにしなければならないでしょう。世界はひとたび、米国におけるトランプ政権を経験したことによって、米国中心に物事を考えるという習慣が消えました。トランプ政権はひどかったけど、そのおかげで世界は多元化する、それは「世界共和国」にとって、必要なプロセスだった、となるのが一番良いシナリオなのです。】

これは、いわゆる「世界連邦」の具現化とも言えます。また、創価学会の第二代会長の戸田城聖先生が掲げられた「地球民族主義」の理念とも共通するものだと言えましょう。楽観的に過ぎるとの批判は当然つきまといますが、むしろそうならない世界は滅びる、と見れば一気に現実味を帯びてきます。

●朝日新聞連載『日曜に想う』(3日付け)ー編集委員・曽我豪「60年ぶりの年 壁を突破できるか」

今年は60年ぶりの「辛丑」の年であることから、昭和36年(1961年)の出来事を、人物中心に曽我さんは振り返っています。取り上げられているのは、ケネデイ、池田勇人、ガガーリン、江田三郎、坂本九の5人(人間以外にベルリンの壁も)。このコラムで私が注目したのは、「公明政治連盟の発足」に触れていることです。「前年に社会党分裂で誕生した民社党に続き、社会的弱者層を引きつけて公明党が台頭し野党が多党化してゆく。その前身である公明政治連盟を創価学会が結成したのも同じ61年秋のことであった」と。

コラムの最後には「60年前の『主役』たちのその後を記」していますが、公明政治連盟を誕生させた創価学会の会長だった池田先生にはなぜか触れていません。これでは画竜点睛を欠くのではないでしょうか。その動きの主役だった同先生がご健在であることに触れて欲しかったと思います。

●日本経済新聞連載『核心』(4日付け)ー論説フェロー・芹川洋一「2021年から始まる日本」

芹川さんは、日本の近現代史においてある種の「循環」が存在することを取り上げています。代表的なものとして「15年周期説」や「25年単位説」に触れています。前者では、1931-45年→軍国主義 46-60年→戦後民主主義 61-75年→高度成長 76-90年→低成長 91-05年→経済停滞 06-20年→再生模索といった具合です。一方、後者については、1920-45年→経済恐慌と戦争 1945-70年→復興と成長 1970-95年→豊かさと安定 1995年-20年→衰退と不安 としています。これらを「新しい時代はやってくるか」とのタイトルで一覧表にしており、なるほどと思わせます。じっくり眺めてみてください。いかがでしょうか。

実は私はかねてから「40年周期説」を支持してきました。1865-1905→ 軍国主義の台頭 1905-1945→軍国主義崩壊 1945-1985→ 戦後民主主義と経済成長 1985-2025→経済破綻から少子高齢化社会 という仕分けです。こっちの方が明治維新から今に至るまで、スパンも長く、面白いと思うのですが、どうでしょうか?

●産経新聞連載『宮家邦彦のWorld Watch』(7日付け)ー内閣官房参与・宮家邦彦「2021年に起きないこと」

宮家さんは今年、「何が起きるか」ではなく、「何が起きないか」を予想するとして、❶中国は米国に屈しない❷露は諜報戦争をやめない❸北朝鮮は暴発しない❹東南アジアは結束しない❺印は対米同盟を組まない❻中東は安定しない❼EUは分裂しない❽トランプは引退しないを挙げています。「ないない」尽くしは面白いのですが、読みようによっては、この8つそのものが起きないこととして、あがっているように見えます。慌てて読むのは危ないです。尤も、それぞれの逆、つまり、中国は米国に屈する、露は諜報戦争をやめる、北朝鮮は暴発する‥‥といったことが起これば、耳目を集めるのですが。結局は何も変わらないということを言っているように思われます。

●読売新聞『語る』連載2(4日付け)ー元自民党総裁・谷垣禎一「党内で疑似政権交代」

自民党が野党に転落した時に、同党総裁だった谷垣さんは、10年は野党暮らしが続くと覚悟したとのこと。三年ほどで復帰するとは思わなかったと言います。で、野党がどこにいるのかわからなくなって、大平元首相の言った「楕円の理論」ー中心は一つではいけないーが大事だと思うようになったと言います。この理論でいけば、次は宏池会(岸田派)や竹下派が頑張らないといけないというわけです。

自民党風に言えばそういうことなのでしょう。ただ、この勢力に期待できるかどうか。私に言わせると、公明党こそ楕円のもう一つの中心に座れば面白いのに、と思います。昔風に言うなら、公明党は野党に戻って、他野党を束ねよということなんでしょうが、もはやそれは想定しがたい。ならば、と思うのですが、それもまた難しい。所詮叶わぬ初夢でしょうか。(2021-1-12)

 

鬱陶しい2021年の幕開けに光明を探すー各紙の報道記事から(上)

新たな年も早いもので、七草がゆも終わり、鏡開きとなります。例年なら新年互礼会などに顔を出す頃ですが、今年はそうはいきません。新型コロナ禍による緊急事態宣言が首都圏に続き、大阪、兵庫、京都の近畿圏にも及び、巣篭もりの鬱陶しい幕開けとなりました。新年の元旦号から7日付けまでの、全国紙5紙の記事を追って見ました。

元旦号のトップ記事は各紙の報道の基本的姿勢が伺えて面白いことはいうまでもありません。コロナ禍中なので、これ一色かと思いきや、コロナ禍にまつわるものを取り上げたのは、『毎日』だけでした。「中国『闇』ワクチン日本へ」との見出しで、未承認のワクチンが中国から持ち込まれ、企業経営者ら一部の富裕層の18人が接種を受けていることが分かったというものです。昨年からの連載「コロナで変わる世界」の第二部のはじまり「パンデミックと社会」です。

中国がらみは、『読売』が「中国『千人計画』に日本人」との見出しで、取り上げました。彼の国が海外から優秀な研究者を集める人材招致プロジェクト(2008年から実施)に、少なくとも44人の研究者が関与していたというのです。日本政府から多額の研究費助成を受け取った後に、中国軍に近い大学で教えていたケースもあり、日本政府は情報流出を恐れて規制強化をする方針を固めたと報じています。

一方、『産経』は、新年からの連載で『自由 強権ー21世紀の分岐点』をスタートさせ、その1回目として、「中国型の権威主義、南太平洋で猛威」と題し、「民主主義が消えていく」実態を描き出しています。「コロナ禍で加速した世界の軋みに対峙して、21世紀の形を決める分岐点」だとの現状認識のもと、露骨さを増す中国の横暴な振る舞いを追おうという企画でしょう。「米国一強」が揺らぐインド太平洋で、日本は自ら先頭にたち、自由と民主主義を守る行動と覚悟が問われていると、煽っているのです。

国内政治に目を向けたのは『朝日』だけです。自民党の衆議院議員で、農水相だった吉川貴盛氏が、既に明らかになっている計500万円を受領した疑いのほかに、1300万円を受け取っている可能性が高いことを報じています。これは、鶏卵生産・販売大手の「アキタフーズ」の前代表が東京地検特捜部の任意聴取に際して供述したもの。特捜部は合計1800万円を2015年から5年間に14回に渡って吉川氏が受け取ったと見ています。農水相就任前からというわけです。

経済がらみは例年通り『日経』だけです。「第4の革命 カーボンゼロ」と題して、世界が脱炭素の主役として競い始めたことを、連載で明らかにしようとしています。日本も2050年までに、二酸化炭素(Co2)など温暖化ガスの排出を実質ゼロにすると宣言していることは周知の通り。日米欧中で8500兆円もが動く競争を追うことになります。この中で注目されるのは、排出削減の国外出願特許で、日本は約15000件で、2位の米国の2倍近くもあること。この10年間連続の首位にあることを「日本なお先行」と誇らしげです。

こうみてきますと、各紙の特徴とともに、今の日本社会における課題が浮き彫りになってきます。キーワードは、「恥を知る」ことだと、私は見ています。このあと、正月一週間の新聞記事から、注目される内容のものを追ってみます。(2021-1-9  以下つづく)