【90】自民党がめざす「改憲」の論点━━「女性部」との憲法懇談から(下)/5-15

⚫︎自民党の改憲目標4項目について

 自民党が今目標にしている憲法改正テーマは次の4つ。一つは自衛隊の位置付けを明記すること。二つは緊急事態の際の対応について。三つは参議院の合区を解消すること。四つは教育への取り組みの強化である。一つ目については前回述べたように故安倍晋三首相と太田昭宏元公明党代表との間での合意が前提としてある。ただし、その後山口那津男代表になって公明党は9条加憲には慎重な姿勢になっている。(写真は党兵庫県本部女性部との勉強会)

 安倍氏は、そのあたりのことを先の回顧録で、「(山口さんが)私の前では自分の意見を言わず、いつも私の話を聞いた後、『うちの組織は難しいですね』みたいな話をする」とぼやき気味だ。と共に、改憲が「そんなに簡単でない」ことを吐露している。現実には自衛隊明記をめぐって、与党内では維新がそれだけでは不満で、軍隊としての役割まで書き込もうとする一方、自民党内には当初の公明党提案と同様に自衛隊の存在に触れるだけでいいとする意見も強い。

 二つ目については、衆議院憲法審査会での議論はかなり熟しているように見られるが、その実、最終合意は難しい。「大災害の時代」の到来で、衆院選の狭間などに緊急事態に追い込まれた際にどう対応するかで、議員任期の延長論などが台頭している。しかし、今の憲法の54条の参議院の緊急集会で事足りるとの主張も根強い。

 三つ目は参議院の選挙区割りの問題。公選法の改正で鳥取、島根両県と、徳島、高知の2つの県を合区にした。それを一転、「憲法」の土俵で議論するのはなぜか。一票の格差拡大をめぐる違憲訴訟の問題が絡むからだ。参院サイドでは「一県一議席」のこだわりから、合区には不満が強い。(尤も、この議論は道州制導入の観点からすると瑣末な議論に思われる)

 四つ目の「教育」については、国際的な水準における日本の地位の低下という深刻な問題が影を落とす。元々、日本には二組み二層の対立軸がある。一つは、知識詰め込み教育とゆとり教育の二項対立。もう一つは、戦前の垂直思考的教育と戦後民主主義の水平思考的教育の伝統的対立である。重要な論点だが、自民党的には曖昧な決着になると推測する。

⚫︎与野党の変化と共に揺らぐ「平和主義」

  国会における各政党の憲法についての対応姿勢は、長く自民党、維新の「改憲」、公明党の「加憲」、民主党の「論憲」、社民党、共産党の「護憲」などといった政党ごとのグループ分けがなされてきた。さらに今、多党化された状況下にあって、9条「改憲」には参政党、保守党、国民民主党が加わり、中道は「加憲」、公明党と立憲民主党が「護憲」に回るという風に入り乱れている。

 そんな状況下で、これまで自民党の改憲姿勢へのストッパー的役割を担ってきた公明党の野党への変化の持つ意味が大きい。10年余前の「安保法制」制定時には玉虫色決着とはいえ、集団的自衛権導入に歯止めをかけた。これは、憲法解釈の変更による実質的「改憲」に匹敵するとの評価もある。一方、与党入りした維新の積極的な軍備拡大の方向性はアクセル機能が目立つばかりだ。

 加えて、先の「武器輸出」を可とする国策転換により、非核三原則の危機的状況と相まって、日本の平和主義は危うい局面に立ち至っている。与党に公明党ありせば、見られなかった風景のはず。

⚫︎高市首相の「本領発揮」に、今こそ公明党の出番

 高市早苗首相は、明年には憲法改正の国民投票に向けて「発議」に持ち込めるように党内に指示をしたという。しかし、衆参両院議員の3分の2以上の賛成を得た上で、過半数の国民投票の賛成を得るという条件をクリアすることは到底難しい。

 同首相の国論を二分する議論をしようという姿勢そのものは評価に値する。これまでの自公連立時代に私は国家論や、安全保障や社会保障、消費税といった国家運営上の基本的な課題で国民的大論争を起こそうと呼びかけた。公明党は小さな声を聞くことに熱心でも、大きなテーマで議論することには躊躇してきたかに見えたからだ。与党内での亀裂を恐れたのだろうが、結局は日本の針路決定を遅らせ、足踏みするだけだったかに思われる。

 日本の選択は、これからも日米同盟を今まで以上に強固な基軸とする方針で行くのか、それとも欧州やASEAN各国などアジアとの協調に路線を変えるのかなど、重要な分岐点に直面している。その時に、状況対応でしかない軍事的拡大に専心するだけでは心もとない限りである。

 公明党はこれまで60年間、大衆重視、人間主義の旗のもと、「人間の安全保障」に力を込めた平和路線をリードしてきた。国際社会において超大国が相次ぎ国際法を無視する体たらくに陥った今こそ、大きな「物語」を掲げて、その独自性を発揮すべきである。新党「中道」を軸に、立憲民主党との間での三党の議論を重ねて、超大国に翻弄されることのない新たな方向性を打ち出す時である。(2026-5-15)

Leave a Comment

Filed under 未分類

Comments are closed.