【100】クマを寄せつけない集落をどう作るか━━「熊森協会」のイベントに参加して/7-5

 街中でクマが人を襲う━━日本最大の環境保護実践団体である一般財団法人「日本熊森協会」に関わって25年余りが経つ僕も、昨今の報道で見る異常な風景には驚くばかりです。本来は奥山に生息し主にどんぐりなど植物類を食し、人間を恐れる臆病で優しい野生動物であるとの捉え方が一般であり、僕もそう思い込んでいました。ですが、その習性が変化したと見ざるを得ないクマが東北、関東を中心に日本各地に数多く現れてきているのです。既にクマに襲われた死傷者が続出しており、どうすればこの被害にあわずともすむのかとの安全対策が様々な場所で論じられています。昨4日には兵庫県宍粟市一宮町市民協働センターで「クマを知ればクマと出会わない」とのキャッチコピーのもと、クマを寄せ付けない集落作りについての講演会(熊森協会主催)がありました◆講師は、岡居宏顕氏(写真左)豊岡市の有害鳥獣主任対策員で、通称「クマのおじさん」と呼ばれているとのこと。県下で最も出没数が多い地域で「人身事故ゼロと最小限の捕獲」の両立を果たし、高い信頼を集めるプロフェショナルです。この日は、クマに関する広範囲で有益な情報を提供して頂き、あっという間の4時間でした。実はこの日、僕は午前9時過ぎに姫路で合流した室谷悠子熊森協会会長と共に工藤研究員の運転するレンタカーで会場の一宮市民協働センターに向かいました。1時間半ほどで到着したのちに、以前にクマが出た染河内駐在所周辺に移動しました。ここで後刻に野外実践をするので事前見聞のため(写真右 現実には雨で中止)でした。ここで僕は岡居さんと初めて対面しました。初印象は「イケメンのクマ探偵さん」です。熊森協会の仲間たちが取り囲んで早速クマ対策論議が展開されました。田んぼの向こう側に川が流れていてそのあたり一帯の森林傍に草叢が鬱蒼と生い茂っています。クマが降りてきても見つからないから刈ってしまう方がいいかどうかとの質問がでたり、岡居さんから山桜の実を食べたクマが出す糞のタネが発芽するためクマの役割が重要だとの話を聞いたりの楽しいひとときでした◆木材の香り漂う「いちのぴあホール」での講演で、最も僕が関心を持ったのは、クマを集落によせつけない「共生の取り組み」での熊森協会のボランティア活動でした。岡居さんからの要請を受けて豊岡市での対策を講じ始めたのが2020年のこと。以来毎年取り組みを重ねてきました。民家近くでクマの目撃情報を受けたのちに、豊岡市と熊森協会の職員やボランティアで連携して、情報収集し、現地視察を重ねて作業を立案検討して、被害対策が講じられて行ったのです。この3年間の活動は、2023年が12集落を対象に55日間で延べ67人、2024年が3集落、12日間に延べ35人、2025年が11集落で22日間で延べ94人に及んだといいます。作業内容は、柿、栗のもぎ取りから、樹木へのトタン巻き、ネット巻き、剪定、伐採、草刈りなどの多岐にわたったようです。熊森協会としては、クマが大量に出没した2023年に、人身事故ゼロ件、9月以降の有害捕獲数ゼロという結果だったことは、安全な地域づくりに貢献出来たものとして強く自負しています。指導担当にあたった岡居さんは、行政任せではスピード感からも予算面からも、とてもうまく行かず、熊森協会の敏速果敢なボランティア活動のおかげで上手く運んだと高く評価してくれていました◆この日の会には70人ほどの参加者(写真左)がいましたが、僕も宍粟市の福元昌三市長始め、公明党の北條泰嗣元兵庫県議、井上洋文元佐用町議、榧橋美恵子元宍粟市議始め多くの仲間に参加の声をかけました。参加されたのはこの4人でしたが、皆さん「目からウロコが落ちる思いだった」「熊森協会の凄さを知った」と異口同音に吐露していました。かつて僕が熊森協会顧問になった頃に、熊が奥山から里山を経て人里に降りてくるのは、森の荒廃の予兆であると言って、「森林保護政策」と「熊を奥山に追い返すこと」の両立を叫んだものです。当時は「野生動物のせいで我々の生活圏が脅かされる。クマと人間のどっちが大事だと思うとるんや」と文句を言ってくれた仲間たちが殆どでした。僕は「両方とも大事だ」と言い返すと共に、「生きとし生けるもの生命の尊さを説いているのが日蓮仏法ではないのか」と心に刻んだものです◆以来20数年が経った今、政治の力及ばず森林の荒廃は収まるどころか乱開発が進む一方です。僕にはクマが街中に出てくる現状は、「だから言わんこっちゃない」です。しかし、熊森協会を誤解する友人や仲間には、「クマを捕殺しないからこうなった」と真逆の反応をする向きも少くなくありません。クマを知ることの大事さを地道に訴え、捕獲さえすればいいとの考えの誤りを強調し、クマを寄せつけない集落作りを推進するしかないと決意を固めたしだいです。(2026-7-5)

 

 

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