坑道ラドン浴で過ごした真夏の三日間

暑い、あついを連発するたびに、涼しい森の木立の中で、川のせせらぎを聴きながら過ごせたら、どんなにいいかと誰しも思われるでしょう。私は姫路市北部の安富町にある日本で唯一つの坑道(元金山)でラドン浴が出来る富栖の里に行くことを思い立ちました。あそこなら単に涼むだけでなく、健康にもいい。一石二鳥にも何鳥にもなる。同じ行くなら、泊りがけで、と意を決して、近くにある宿泊施設ヴィラ富栖を四泊ほど予約(一泊5000円)したのです。選挙後しばらくしてのことでした。本を読み、書きかけて中断している回顧録の平成編を書くにもいい機会だと一人だけの夏休みと洒落込んだのです。富栖の里については幾たびか紹介してきましたが、旧友・亀井義明氏が運営(一般社団法人 全日本地域振興事業機構)に携わっています。もう10年ほどになります。設立する段階から相談に乗ってきました。大量の放射線は人を死に追いやるが、少量の放射線はむしろ健康にいい影響をもたらすーホルミシス効果です。坑道から沸き立つラドンの中で横たわったり、椅子に座って本を読んで過ごすうちに体内に取り込まれるラドンがひとの免疫を高める。ということから、様々なガンや生活習慣病などに悩まされる多くの人々がここを訪れるようになっています。私がこの度数年ぶりに再訪した時も、50人ほどの老若男女で賑わっていました▼偶々着替えのロッカールームで声をかけた人は小野市からのリピーター。既にここには55回来ているという70歳前の大腸と肝臓にガンを持つという男性は、「当初はガンを治したいとの思いが強かったのですが、ここへ来てから亀井さんの云うように、ガンも身の内、折り合いをつけながら明るく生き抜けばそれでいいと思うようになったのです」と涼やかな表情で語っていました。また、市内南部からという85歳の女性は、「これまで数回にわたってガンの切除をしました。未だいくつか小さいながらもありますが、気にしてません。ガンと共存するのが大切です」と、20歳は若くみえる元気な言いぶりで語ってくれました。亀井氏はこの10年、数百人を超える人々の相談に乗ってきて、医師、病院は万能でない、むしろここに来て、生きる希望を持つことで明るく元気になってガンと一緒に生きることにした人が多いと言い切ります▼1日目、2日目と坑道で午前、午後と合わせて3時間ほどゆっくり本を読み、夕方ヴィラに返ってブログを書くという生活をしました。3日目は、石見前姫路市長が静養と視察を兼ねてやってきたので、しばし懇談する機会にも恵まれました。また旧知の姫路に住む奥さんが乳がんだというSさん夫婦とばったり会いました。医師から余命2ヶ月と言われながらもう2年が経つのに、元気だといいます。亀井氏から「医師ががんだ、余命数ヶ月だと云ってもその通りにならない例は数多溢れています。あなたたちも〝がんもどき〟なんですよね」との言葉に大笑いしました。私は今お互いこうやって生きてるってことそれ自体が奇跡なんですよと持論を述べたしだいです▼3日目の夜は富栖の里から少し南に下ったところにある栃原に住む高校、大学とほぼ同期だった山本 祐三君の家にお呼ばれしました。東京から帰省中の娘さん夫婦との家族団欒の席に入れてもらったのです。あっという間に3時間が過ぎ、帰る時間になったのですが、楽しい語らいでした。ヴィラに戻ると、今月初めにインタビュー取材を受けていた産経新聞政治部から出稿直前のメールが届いていて、ゲラ直しに大わらわとなりました。「改憲再出発」というタイトルでの連載で、各党のOB議員から今の憲法審査会での議論をめぐる考えを聴くとの中身です。慌ただしく一方、友人知人に明日の産経新聞を見てくれるようにとメールしました。そうしないと誰も新聞記事など読んでくれません。夏休みの避暑地が一気に仕事場となってしまいました。友人宅で家族団欒の席に連なって里心がついたわけじゃあないのですが、もう一泊の予定を切り上げて、翌日昼過ぎには帰路につくことにしました。新聞掲載対応のためです。結局三泊四日の夏休みで、大した成果はなし。うだる暑さの我が家にまた帰ってきました。(2019-8-10)

 

 

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