コロナ禍吹き荒れるこの半年の間にあっても、身近なところでは感染者はおろか、友達の周辺でも陽性の人はゼロだという人は少なくないと思われます。誰もが知ってる有名人が感染して、どうにか危機の実感を味わうというのが関の山かもしれません。つまり、コロナ禍といっても、私も多くの人々も、その影に怯えているというのが実際のところです。今の状況は感染の二波か、それとも一波の続きかなどといった詮索も、もどかしいけれど今ひとつピンと来ないというのが現実でしょう。ところが遂にというべきか。関西圏に住む私の親友が、コロナのクラスター状況の只中に巻き込まれてしまったのです。▲彼は、先年愛妻に先立たれ、一念発起して全てをたたんで、高級老人ホームに入居しました。私も二度ほど訪問しましたが、コンシェルジュ付きの瀟酒なホテル風の素敵なところです。居住空間こそ少々狭いのですが、食堂やらお風呂場、娯楽室やトレーニングルームなども整っています。気分は上々だと満足していました。ところが、です。つい2週間ほど前に遂に居住者から感染者が出てしまい、あっというまに、入居者のうち、半数近くが感染し、職員と合わせてかなりの人が陽性という、クラスター状況が起こってしまったのです▲私の友人は、感染第一号のかなり高齢のご老人と濃厚接触者でありながらも、PCR検査で異常なしの陰性。それはそれでいいのですが、このホームでは当然ながら、全員に検査を施し、その結果、陰性の入居者は全て封鎖状態。当面9月中旬まで、ホーム外はおろか、部屋の外にさえ出られなくなってしまいました。三度の食事(宅配業者によるもの)は各自の部屋に運ばれ、シャワーの代用となる生活必需品めいたものなども配布されるようですが、色々不都合なことばかりです。常日頃は、ウオーキングやサイクリングを楽しんでいたのに、外に出られなくなり、狭い部屋でテレビを観ることや読書するぐらいしかすることがありません。それでも彼はパソコンでユーチューブを活用して、かねて関心を持っていた「気功」などに取り組んでいるとのことです▲こんな状況を私にメールで知らせてくれましたが、想像するだけで、胸塞がれる思いです。友人はこんな状況でも、他の高齢同居者を気遣いながら自分は大丈夫だと言っています。数日ならともかく、1週間、2週間いや一カ月と続くと、気が滅入ってしまい、精神のバランスに異常をきたすのではと、不安になります。全て保健所の差配でしょうが、いささか過剰防衛だと思うのは暢気な部外者の浅はかさでしょうか。これまで何らかの事情で獄に繋がれた人たち(政治家や企業人ら)の中には、収監中に本を読み、勉強を続けて、出獄後に本を出版したという豪の者も結構います。君も頑張れと激励してあげるくらいしか思いつきません。恐らく、彼は「余計な心配するな、自分はこの事態を自分なりに楽しんでいくから」というでしょうが。(2020-8-20 一部修正=8-21)