無表情の背後に潜むものをめぐっての不気味さ

安倍晋三首相が辞意を表明して2週間足らず。次期総理・総裁を目指す3人の候補者による選挙戦が展開されています。結果的に日本のトップを選ぶことになる選挙戦が、自民党の国会議員と地方議員の一部代表だけで行われ、一般有権者はおろか、同党の党員すら関われないという現実は、大いに問題と言わざるを得ません。米国のようにおよそ一年もかけて、国を挙げての大統領選をせよと言わないまでも、もう少し違った手立てはないものかと嘆く向きは少なくないでしょう。加えて、選挙戦開始と同時にほぼ結果は決まったと見られていることも摩訶不思議な流れと言えます■菅義偉官房長官で決まり、との自民党内力学はどこから起こるのでしょうか。老練な実力者・二階俊博幹事長がその流れを作ったと言われていますが、石破茂元幹事長の同党内国会議員における不人気や、地味な岸田文雄政調会長への信頼感のなさも大きく作用しているものとみられます。先日の選挙戦開幕に当たっての、演説会並びに合同記者会見をつぶさに見て聞いた限りでは、それほどの差が三者にあるようには見えませんでした。むしろ、演説のうまさ、政策展開の巧みさでは、石破、岸田両氏の方が菅氏を上回っていたと見る向きは少なくないのです■ただ、官房長官としての実績が安心感を与えたとは言えるでしょう。秋田県の片田舎から高卒で集団就職のような上京経験やら、幾つかの職業遍歴の末に代議士秘書、市議会議員を経て、今の地位を築いたサクセスストーリーはそれなりに耳目をそばだてるものがあります。昨今良く見聞きする二世、三世議員や、高学歴のエリート政治家にない、いわゆる叩き上げの魅力を持つ人だと言えましょう。安倍総理が一貫して、岸田氏に禅譲するかのような姿勢を見せながら、土壇場で心変わりをしたかの如き態度をとったことも、菅官房長官への流れを決定付けました。私と石破氏は、かつて新進党時代に同じ釜の飯を喰った仲間です。これまで同じ外交防衛畑に身を置いた人間としても親しみを感じ、改革力は一番だと確信しますが、惜しむらくは政治家の現場力とでもいうべきものが足りないのかも■さて菅という人は、これまで7年8ヶ月もの間、安倍首相の女房役をやってきたのですが、喜怒哀楽をあまり顔に出さず、どちらかと言えば無表情。公的発言は必要最小限だけ。その上、好きな歴史上の人物が「マキャベリ」と聴くと、さもありなんと思えます。冷酷非情な決断を持って物事を処するのではないか、との憶測を呼ぶ、一言で言えば不気味さが漂っています。安倍首相とは裏表の関係。安倍路線を踏襲するということは、いわゆる「官邸主導の政治」の裏だった部分が、するっと、表に出るということに他なりません。それで良いのかどうか。しかも、大臣になったばかりに不祥事が浮上して、世間を騒がせている、菅原一秀氏や河井克行、案里夫妻らとの関係が不鮮明です。その説明責任が未だ充分でないことは、最大のウイークポイントだと指摘せざるを得ません。出来ることなら、彼の過去の日本のリーダーにない側面が良い方向で発揮され、大化けすることを望みたいものです。(2020-9-10  一部修正=9-11/12)

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