二度目になる大阪都構想の住民投票の投開票まであと一週間をきりました。賛否の世論はほぼ拮抗しており、行く末は全く予断を許さない状況です。前回の住民投票は5年前。この時には反対が多数を占めて、大阪市を廃止して4つの特別区を作るといった「都構想」はひとたび後衛に退きました。しかし、その後も推進に執念を燃やす「大阪維新の会」の捨て身の取り組み(府知事と市長を入れ替えての選挙戦)などが功を奏し、今回の運びになったものです。前回と大きく違うのは、公明党が賛成に回ったこと。どうして反対から賛成に回ったのでしょうか。ここでは詳しいことにはあえて触れませんが、中道主義公明党の真骨頂が垣間見えるとだけ指摘しておきたいと存じます▲その背景を探ると、公明党という政党の本質が見事にうかがえるといえましょう。ひとことで言えば、住民本位に立ち、固定観念に縛られないというものです。大阪市に住む住民の利益に繋がらないから前回は反対しました。その辺りの構想の持つマイナス面を「維新」の側に解消させ、住民サービスが後退せず、二重行政の欠陥もなくせる中身に変えさせたが故に、一転賛成することになりました。そこには、先の市長選挙や府知事選挙を通じての有権者の意向が色濃く反映されたとの認識があります▲去る23日にNHK総合テレビ『かんさい熱視線』で放映された関係政党による討論会は見応えがありました。ここで改めて興味深く思ったのは、賛成派が「維新」と公明、反対派が自民と共産という組合せ(立憲民主、国民民主は姿なし)であったことです。要するに、現状打開政党と現状維持政党の色合いが濃い二組の対決のように見えたのです。もちろん、中央政治では、自民と公明が政権を支え、「維新」と共産が野党側です。野党第一党は立憲民主です。しかし、地方自治を進めていく上での現状の弊害を変えようとする大阪が舞台となると、一転組み合わせが変わります。立憲民主や国民民主といった旧民主党グループの姿が薄いのは、いかにも関西風、大阪的といえるかもしれません。現状打開派と現状維持派の色合いのはっきりした4つの政党による「対決の構図イン大阪」はなかなか面白く写って見えます▲私のように、長く日本の政治を外から内から見つめ、かつプレイヤーとして生きてきた人間からすると、大阪の公明党のこの立ち居振る舞いの中にこそ、中道主義の本質が反映していると見えるのです。「維新」の提起してきた課題を時に打ち壊し、また巧みに修正させるー〝有権者の利益のために変幻自在〟というところに真価があるように見えるからです。「維新」は元々自民党を形成していた人たちによって作られた、ある意味内側から自民党を壊し、外側から修正を迫ってきている政党です。公明党は外側から自民党を壊す戦いを続け、今は内側から改革を迫る政党にほかなりません。このあたりの自民党をめぐる虚々実々の駆け引き、戦いが極めて示唆に富んでいるように思われます。大阪が生み出した特異な政党がこれからどう進化、成長していくのか。同じくこの地域を金城湯池としてきた公明党がどうこれから生き延びていくのか。二つの小さいが個性豊かな政党が、どうお互いの〝存在をかけた衝突〟に折り合いをつけていくのか。中央の政治の今後を占う意味でも興味津々の成り行きです。最終ゴールまで残された期間を大いに注目したいものです。(2020-10-26)