《33》誰がロシアのウクライナ侵略を止められるのか/3-7

 ロシアのプーチン大統領のウクライナ侵略に至る動き、その後の原発施設への攻撃、核兵器による威嚇など一連の常軌を逸した振る舞いは、彼ひとりによるものではない。彼を含む5人の元KGBらを中心とするシロビキと称されるグループ。彼を支えるオリガルヒというロシアの財閥。こうした存在が大きい。ここが翻意し、動かない限り、大きく変わる期待は持てない。あれよあれよと言う間に事態は深刻の度を増している。プーチンをヒトラーの再来と見ることも今や当然視されている。第二次世界大戦の発端となったポーランド・グダニスク(当時はダンツィッヒ自由都市)への侵攻の戦術との酷似性が取り沙汰されているが、その拡大を許し世界を第三次大戦への恐怖の道に陥らせてはならないと強く思う。だが、予断は許さない◆この場面で誰が仲介役を果たせるか。当初、私は2人いると思った。1人は、ゴルバチョフ元ソ連大統領である。朝日新聞の5日付け報道によると、気になる彼の発言が自叙伝からの引用という形で示されていた。それによると、「西側はソ連崩壊後のロシアの弱体化を利用した」と、東西間の不平等な関係に至った経緯を指摘したうえで、当初の軍事同盟から政治同盟への転換という構想に立ち返れと主張している。さらに、「現状から抜け出るためにはまず、お互いを尊重し、対話を重ねるということだ。それがなければ、何も変えることはできない」という。冷戦後30年が経ってどうしてこのようなことが起こったかを冷静に振り返るべきだというのだ。この指摘は正しい。ただ、今の時点で仲介のヒントにはなっても、事態を打開する決定打足りえない◆もう1人は、習近平・中国国家主席である。この国はウクライナとの関係も密接だし、同時に歴史的に紆余曲折はあれロシアとも関係は深い。仲介出来るうってつけの立場だと思われる。国連における対露制裁については「棄権」という曖昧な態度をとった。一般的に指摘されているように、この秋に向けて国内掌握に最大限の意を注がねばならない時だけに、それだけのゆとりはないということだろう。中国は今世界の動向をつぶさに見ていて、これからの流れしだいで劇的に変わる可能性はゼロではないかもしれない。だが、緊急の仲介役は期待できそうにない◆目を覆うような悲惨なキエフ周辺を始めとするウクライナ各地の破壊や抵抗する人々の犠牲。なんとかならないものかと誰しもが思う。昨夜放映されたNHKスペシャルの『攻撃は止められるのか〜最新報告ロシア軍事侵攻』でも、専門家3人による事態打開への打つ手は聞けなかった。ロシア国内の戦争反対の声の高まりしかないというのが結論と思われた。日本人は私も含め、ウクライナの存在を遠く離れたところだと思いがちだ。確かに遠いが、ロシアという国の東南の隣接国が日本で、西南の隣国がウクライナだという事実を思うと、対岸の火事視はとても出来ない。ロシアの西北の隣国フィンランドは、長きにわたりロシアとの軋轢に苦労してきた。中立国としての賢明な振る舞いで知られるが、ここにきてNATO入りを果たすべきだとの国民世論が急激に台頭してきているという。バルト三国にもロシア侵攻の懸念があるとの空気の中で、極めてリアルな反応なのだろう。日本も今回の事態で、北方四島返還への淡い期待も吹っ飛んだ感が強い。全てを戦時ムードで捉えるしかないと、緊張感を持って目を凝らし、声をからし、祈り続けたい。(2022-3-7)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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